【武道家シネマ塾⑤】『キッズ・リターン』~始まるんだよ、何度でも~

(by ハシマトシヒロ) 「俺たち、もう終わっちゃったのかな」「バカヤロー、まだ始まっちゃいねーよ」 あまりにも有名なエンディング。挫折し、傷つき、敗れ去った2人は、本当にもう終わってしまったのか。あるいは、まだ始まってすらおらず、これから始まるのか。これからどちらに転ぶのかは、観た人の想像にゆだね […]

【映画エッセイ】『猿楽町で会いましょう』〜若さの本当の価値と取り戻したいもの〜

(by みくりや佐代子) 「若さ」を恥ずかしいと思うたちだった。なぜか。この国は、若いこと、幼いことに価値があるとされているからだ。とりわけ女性は。 若い女性の肌や髪が画一的な「美しさ」とされ、販売促進に当然に使われることを気味が悪いと思った。まるで年を重ねるのは悪そのもののようであった。 以前、男 […]

【エッセイ】脚本コンクールの最終選考で落ちた話

(by こばやしななこ) 2021年、10月某日。パソコンの前に座った私は、1分ごとにクロームの更新ボタンをクリックしていた。開いているのは「創作テレビドラマ大賞」という脚本コンクールの選考ページだ。最終選考には、私の名前が残っている。 この後は、最終選考に残った10本から大賞1本と佳作2本が選ばれ […]

【ぼくが映画に潜るとき③】『リリーのすべて』〜“女の子”でなくなっていくぼくを、夫はどんな気持ちで見つめていたのだろう〜

(by チカゼ) 姿見の前で背広を脱ぎ捨てネクタイを外したアイナーは、内腿にペニスを挟み込んで「女性」に擬態する。「リリー」としての自身の裸体を指でなぞり、ひたすらに、食い入るように見つめる。その恍惚を、ぼくはたしかに知っている。己のものとして。 1930年、世界で初めて性別適合手術を受けたトランス […]

【映画レビュー】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』がよすぎた件〜予習範囲にご注意!〜

(by 蛙田アメコ)(注:本稿には段階的なネタバレが含まれます!) あーーー、よかった。めっちゃよかった、本当によかった。 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』めっちゃよかった!! この記事は多大なるネタバレを含んでおります。ただし!!今作はマーベル映画としては、少々特殊事情であります。そのため […]

【碧い海に浮かぶ月⑤】愛おしい旅路の欠片と、共通言語を持たない家族

(by 碧月はる) 家族が増えた。小指の先ほどの、小さな小さな家族。全部で4匹、いや、4人。“匹”という単位は、昔から字面がすきじゃない。 先日、離れて暮らす息子たちが遊びにきたとき、川べりでメダカを捕まえた。「逃がそう」と何度か提案したが、まだ幼い次男坊はがんとして首を縦に振らなかった。 「おうち […]

【エッセイ】スネが折れただけやん。

(by ハシマトシヒロ) 人間のスネの骨は、意外と簡単に折れる。 よくあるパターンは、フルスイングしたローキックが相手の硬い部分(膝だったり、スネ同士だったり)に当たってテコの原理が働き、スネが真ん中で折れてしまうケースだ。初めて見た時は衝撃だった。スネが真ん中で90度に曲がって、膝の下にもう一個、 […]

【推しの一作】『キャロル』と洗練された退屈な街

(by 隷蔵庫)(注:本稿では一部、物語の核心に触れています) 2015年の冬、映画『キャロル』が公開された。ポスターに印刷されたケイト・ブランシェットとルーニー・マーラと、美しいキャッチコピーが目を引く。 映画はとてもよくできている。原作の空気感やメッセージを十分伝えきれていると思う。フィルムのよ […]

【エッセイ】家族という呪いと、クリスマスの夜~家族愛を描いた映画に感動できなくていい~

(by 安藤エヌ) クリスマスが近づくにつれ、街は華やぎ、色づいていく。ディスプレイに飾られたサンタクロースの人形を見て思い出されるのは、幼い頃の記憶だ。 小学生の頃、冬休みになるといつも母方の祖父母の家に遊びに行っていた。家庭の事情など何ひとつ知ることのなかった私は、父親のもとから離れた場所で優し […]

【エッセイ】絶望名人カフカの人生論〜ネガティブだけどチャーミングな人〜

(by こばやしななこ) ときどき読み返す本の中に『絶望名人カフカの人生論』がある。 20世紀を代表する作家・カフカが残したネガティブな名言を集め、編訳の頭木弘樹さんが解説を加えた本だ。冒頭でまず、カフカのこんな言葉が取り上げられている。 「将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。将来にむかっ […]

【シリーズエッセイ/碧い海に浮かぶ月④】途方もなくきれいで幸福な日々の足音

(by 碧月はる) ──疲れた。 そう思った瞬間、表面張力のようにぎりぎりまで小さく保とうとしていたものが、一気にあふれた。幼子のように途方もなく泣き続け、寝間着にはみすぼらしいシミができ、滴のついた髪の毛が頬にぺたりと張りついた。 「もういやだ」 思わず漏れ出た声は、誰にも拾われることなく夜のなか […]

【映画エッセイ】“ボクたちはみんな大人になれなかった”のだろうか?本当に?

(by みくりや佐代子) 友人と会うたび、私達はどうしてこうも昔話でいつまでも語り合えるのかと笑ってしまう。 変わった口調のあの先生、エキサイティングな喧嘩を繰り広げる派手なカップル、地元から輩出されたアスリート……。話題が尽きないのではない、限られた同じ話題を繰り返すことに飽きないだけだった。 学 […]

【武道家シネマ塾④】『キス・オブ・ザ・ドラゴン』~あの頃ジェット・リーは、もう少しでひとりのダメ人間を立ち直らせそうになった~

(by ハシマトシヒロ) 2001年。 大学まで出してもらったにもかかわらず、父親に怒鳴られ、母親に泣かれ、弟たちには白い目で見られ、「長男は元々いませんでした」という扱いを受けながらも、なんとか踏ん張っていた演劇活動も、すでにほぼ詰んでいた。 風呂無しトイレ共同で家賃一万七千円の木造アパートから、 […]

【おなかの中のくらげ④】朝は二度来る

(by みくりや佐代子) 「くらげ」と呼んでいたおなかの中の赤ちゃんが、第三子として誕生して約2か月。黄疸の検査で通院は続いていたものの空腹や眠気を訴える泣き声は力強さがあって、生命力のあらわれのようだった。 「新たな一員」を迎え入れたことは長男と長女の生活にも変化をもたらした。当然だが「はい!今日 […]

【すなくじらの魔女修行】一限目:タロット占いの時間

(by すなくじら) 魔女になりたい。ずっとそう思っていた。 一人前の魔女たるもの、占いの一つも知っておかねばならないだろう。占いとは不思議なもので、我々に救済のヒントを与えると思えば、ある時は人間の心を巧みに操り、惑わし、時に邪な行為へと及ばせる。 魔女にとって、未来を予知できる占いは欠かせないス […]

【ぼくが映画に潜るとき②】『ブロークバック・マウンテン』〜男女がいちゃつく改札前で、ぼくと彼女は手さえ繋げなかった〜

(by チカゼ) 大学生のとき年上の社会人の女性と、少しだけ付き合っていたことがある。いわゆるTwitterの裏アカがきっかけで、初めて会ったその日にホテルに行った。告白は、していない。ぼくも彼女も「付き合おう」「好きだよ」などという明確な約束は、最後まで口にしなかった。違う、できなかったのだ。 彼 […]

【碧い海に浮かぶ月③】「しあわせのスープ」が染み込んだ夜、かっこわるい大人は、ゆるやかに立ち上がった

(by 碧月はる) 晩秋の夕暮れどき、ふと思い立ち、てくてくと散歩をした。民家の柿の実が鈴なりになっている。枝先には、もうほとんど葉が残っていない。その光景を目にして、祖父母の庭に毎年たわわに実る柿の実と、庭の後ろにそびえ立つ山々の連なりを思った。杉の木が凛と立ち並ぶ山間のなかに、ぽつんと佇む一軒の […]

【映画エッセイ】『燃えよ剣』にハマって京都に行ったら新撰組のヤバさに気づいた話

(by こばやしななこ) うら若き16歳の春、私は新撰組に熱狂していた。 司馬遼太郎の歴史小説『燃えよ剣』のせいだった。 『燃えよ剣』は土方歳三がまだ何者でもない道場に通う若者だった頃から、新撰組の副隊長となって五稜郭の戦いで最期を迎えるまでを描いた作品だ。 かなりのエンタメ小説で、私はすっかり土方 […]

【武道家シネマ塾③】『燃えよ剣』~そもそも美しさとは作れるものなのか~

(by ハシマトシヒロ) 『燃えよ剣』を観た。 原作、司馬遼太郎。監督、原田眞人。主演、岡田准一。 司馬遼太郎。言わずと知れた、歴史小説の大家である。『竜馬が行く』、『国盗り物語』、『関ヶ原』、『功名が辻』など、そのおもしろ過ぎる歴史小説の中でも、この『燃えよ剣』は国宝級のおもしろさである。全・日本 […]

【おなかの中のくらげ③】今はまだ黄色の子

(by みくりや佐代子) くらげが産まれ落ちた。それは順を追って丁寧に私に知らされた。眼鏡もコンタクトも外し、身体に麻酔が回っていた私には、ぼんやりと滲む世界の中でただ天井を見てハイ、ハイと答えるほかに出来ることはなかった。 「姿が見えたよ、もうすぐよ」くらげは間抜けなことにまだ眠っていた。 「お母 […]

【エッセイ】バイクに乗るってことは人生に“責任”とるってことなのかもしれない

(by 蛙田アメコ) オートバイのいいところは、一人乗りだってところだ。 サイドカーやタンデムシートをつけなければ、オートバイはひとりしかその背中に乗せてはくれない。それって、かなり痛快だ。 ◆ 本当は私たちは毎日、自分の(あるいは他人の)生き死にに「責任」を負って生きていることになっている。そうい […]

【ぼくが映画に潜るとき①】『君の名前で僕を呼んで』〜どうしようもなく魅力的な「大人」について〜

(by チカゼ) 舞台は80年代の北イタリア、夏。17歳のエリオは両親と滞在している別荘で、美術史の大学教授である父に招かれた24歳の大学院生・オリヴァーと出会う。繊細で線の細いエリオをティモシー・シャラメ、陽気で自信家で筋肉質なオリヴァーをアーミー・ハマーが演じている。華奢で儚げなシャラメに対して […]

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