【ノベルゲーム講座③】第3回:私がピクセルでイラストを描くわけ〜特に懐古趣味ってことはなく〜

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(by 隷蔵庫

私はノベルゲームを作り始めた当初から、ほとんどのゲームのイラストを「PC-98ライク」な二値絵で描いてきた。これは、自分がレトロゲームに親しんでいたからだとか、ファンだからというわけではない。

とはいえ、もちろん私は小学生のころ、MOTHERシリーズやスーパーマリオシリーズなど、任天堂の移植作品をゲームボーイアドバンスでプレイしていた。液晶に滲んだドット絵はいま思うとかわいらしく、魅力的だったが、グラフィック目当てにプレイしているわけではなかった。ただバトルしたり、次のステージに進んだりするのが楽しかっただけだ。

そもそも、私はドット絵にさほど懐古やノスタルジーを抱いていない。小学生の時点ですでにWiiやPS3で遊べる高解像度なゲームが存在していた。私にとってドット絵は数多あるゲームの表現方法のひとつに過ぎなかった。MOTHERやマリオも、もともとは昔のゲームということは知っていたが、特に新しいゲームと比べて古さを感じるようなことはなかった。

しばしば、ピクセルでイラストが描かれたゲーム──ドット絵ほど小さくない、いわゆる二値絵──は先述したように「PC-98ライク」と呼ばれ、系統づけられる。さらに色彩を限定していると、なおのことレトロ感が増すらしい。しかし、私はPC-98のゲームをプレイしたことがないため、そのように紹介する/されると、たまに申し訳なく感じるときがある。「PC-98」と言ったほうが伝わりやすいということはあるにせよ、当時のようにハードの制約に準じているわけでもない自分の絵は、中途半端だし、なんなら偽物なのではないだろうかと。私の絵は決して厳密な色彩制限を設けてはいないからだ。

そのうえで、なぜピクセルでイラストを描くのか。それは単に視覚的に美しいからという理由でそうしてきた。その美しさというのはシンプルさのことだ。

ピクセルでイラストを描こうとしたきっかけは、アニメーション・ゲーム監督である David O’Reilly 氏の「アニメーション基礎美学」を読んだことだった。そして自分もこれを実践したいと思った。

David O’Reilly 氏は「美学の鍵は一貫性にある」と言う。彼は自らの作品に「節約」という法則を設けた。たとえばアンチエイリアスは使わない、フェードやブラーは使わない、などだ。これは視覚的に特徴が生まれるだけでなく、制作のスピードが早くなるというメリットもあった。

私はこれを真似してゲームをピクセルで構成することにした。イラストやUIをシンプルに描くよう心がけるようにしたのだった。ゲームが映されるディスプレイはピクセルという箱の集合体であるから、それを隠さずに一貫してアートワークを用意しようと思った。

ということで、現状の二値絵になった。ただしイラストの描き方は昔の制約をかい潜るようにして成立した方法とはかなり違う。

基本的にはドットで描くが、このイラストのようにたまにエアブラシを使うことがある。その際は減色処理をしてドットに直す。UIはできるかぎりドットで作り、フォントもビットマップにする。

現状はできる範囲でピクセルで画面を作るようにしているが、今後の課題もある。一番は画面遷移の挙動である。フェードイン/アウトのように、よく使用される切り替え方式には、箱の集合体であることを忘れさせるような「滑らかさ」が存在している。なので、自分の作品では極力フェードは使わずにすぐ暗転させるようにしているが、完全に排除できているわけではない。それどころか、たまに長いフェードを使うときさえある。ここには改善の余地がある。

ピクセルで描くもうひとつの理由は、視覚的な情報量の制限である。自分のゲームはシナリオが長く、複雑になりやすい傾向がある。そのためシンプルなイラストやUIにすることでプレイヤーを疲れにくくさせようとしている。重めのシナリオでイラストも重厚だとすぐお腹がいっぱいになってしまいそうだし、そもそも労力的にシンプルなイラストの方が素早く描けてイラストを増やせるという利点がある。

MINDCIRCUS』を作ったときの反省から、できるかぎり情報量を落とすよう心掛けている。ひとつひとつは些細ではあるが、たとえば一度に表示する行数は基本的に3行に留めるとか、ウェイトを短くするとか、UIの無駄なクリック数を省くとか、そういった工夫がそれにあたる。とはいえ『真昼の暗黒』のUIの演出のように、あえて当時のPCのロード時間を彷彿とさせるような意図がある場合は、このかぎりではない。

ドット絵、二値絵は飾らない美術であり、生のデジタルの表現が評価された新しい美術のジャンルだと思う。現にエフェクトや現代の技術を取り入れた新しいドット絵が盛んに生み出されている。ドット絵以外のイラストが色彩制限をしてもレトロと言われることは少ないのに、ドット絵が色彩制限をするとレトロだとみなされるのは奇妙である。

もはや懐古趣味ではなく、ましてや過去のゲームの模倣でもなく、アンチエイリアスを排除したピクセルアートはひとつのジャンルとして確立している。私はピクセルアートの明瞭さを好むため、これからもゲームに取り入れていくと思う。

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(文:隷蔵庫 校正:ばじるちゃん)
© 2020 Summertime

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この記事を書いた人

小説描きたかったのに、いつの間にかゲーム作者になった人間。代表作『真昼の暗黒』『ベオグラードメトロの子供たち』など。ノベルゲーム制作サークルsummertimeを運営。