シリーズ&連載

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【武道家シネマ塾⑧】『ロッキー3』~時代おくれの友情~

(by ハシマトシヒロ) 2022年3月。アカデミー賞授賞式において、ウィル・スミスは、司会者を平手で張り飛ばした。 同じく2022年3月。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』において、北条時政は、主君である源頼朝を罵倒し、袂を別った。 どちらのケースも、自分の大事なもの=家族を侮辱されたことに端を発 […]

【連載/LIFE-】第10回:「が」のお話

(by 葛西祝) 「が」について、ささやかなお話をしよう。まず、自己紹介のテキストを書くとする。 「ぼくは中学3年生ですが、来年4月から高校生になります」 このテキストはすぐ修正をかけることになる。手を加えたあとはこうだ。 「ぼくは中学3年生で、来年4月から高校生になります」 ダムのひび割れみたいに […]

【武道家シネマ塾⑦】あなたが映画を勉強したいなら、『ロッキー2』だけ観ればいい

(by ハシマトシヒロ) 「ハシマさんがいちばん好きな映画はなんですか?」 自称映画通の同僚に尋ねられた。「年間200本観てる」と豪語しているヤツだ。なんか「通っぽい」タイトルを出さないとバカにされるかと思い、とっさに出たのが「『存在の耐えられない軽さ』かなぁ……」だった。 ウソです。いちばん好きな […]

【ぼくが映画に潜るとき⑤】『パッチギ!』〜イムジン河を渡り切る意味について〜

(by チカゼ) ぼくは「祖国」がわからない。 昨年、帰化申請をして日本国籍を取得したぼくは、「日本人」になった。それまでぼくは韓国籍で、書類上では「在日韓国人4世」だったのだ。でもこの表現は、ぼくにふさわしくない。なぜならぼくのルーツは、もう少々込み入っているから。 朝鮮戦争、南北分断。イムジン河 […]

【ノベルゲーム講座③】私がピクセルでイラストを描くわけ〜特に懐古趣味ってことはなく〜

(by 隷蔵庫) 私はノベルゲームを作り始めた当初から、ほとんどのゲームのイラストを「PC-98ライク」な二値絵で描いてきた。これは、自分がレトロゲームに親しんでいたからだとか、ファンだからというわけではない。 とはいえ、もちろん私は小学生のころ、MOTHERシリーズやスーパーマリオシリーズなど、任 […]

【碧い海に浮かぶ月⑦】「大丈夫じゃない」を言えるようになったから

(by 碧月はる) 梅の芳醇な香りに誘われて見上げた空は、白と青の絵の具を混ぜ合わせたような、薄い水色だった。ねじれた枝の先端でほころぶ蕾たちが、その淡い空色に小さな手を伸ばしている。風は穏やかで、空気はほのかにゆるみ、木々の新芽が膨らんでいる。季節が、一周した。この地にまた、春が巡る。 離婚に伴う […]

【物語るモノ③】私の見る世界と、君の聴く世界〜日本語吹き替えの世界〜

(by 蛙田アメコ) モノは、いたるところに溢れている。テキスト、音声、あるいは言葉もなく語るもの。ライトノベル作家がハマっている物語コンテンツについて綴ります。 **** 最近、翻訳がアツい。 物語をくるむヴェールである、翻訳されたテキストやセリフや音声に目を向けることが多くなった。あれって、すご […]

【武道家シネマ塾⑥】『ロッキー』~すべてのダメ人間に捧ぐ~

(by ハシマトシヒロ) 「格闘技しか取り柄がないのに二流の選手」昔、そんな陰口を叩かれたことがある。 うん、その通り。よく知ってるじゃないか。腹を立てても仕方がない。事実だから。悔しかったら強くなれって、じーちゃんが言ってた。 ロッキーもおんなじだ。 「ボクシングしか取り柄がないのに二流の選手」い […]

【推しの一作】『30までにとうるさくて』は決して“女性のためのドラマ”ではない

(by みくりや佐代子) 冬模様に変化した街で、ショートブーツのファスナーを上げ切っていない人を二度見た。一度はバスの車内、一度はデパートの地下の総菜売り場だった。かかとから上へ伸びるファスナーは半端な位置で留まり、足首の部分の黒い皮が外側に開いていた。 それを見つけた時、「あ、私だ」と思った。私と […]

【マイ・ラヴ・パレード②】なんにでもなれる、チャーミングな俳優に恋して

(by 安藤エヌ) エディ・レッドメインという俳優を心底愛している。彼ほど俳優として味のある人はいない。『ファンタスティック・ビースト』のレビューを書いたときから、いつか彼のことについて思いのたけをぶつけたものが書きたいと思っていた。今年は待ちに待ったファンタビの最新作が公開されるというタイミングも […]

【ぼくが映画に潜るとき④】『トムボーイ』〜「男の子」のふりをして過ごした、あのころのこと〜

(by チカゼ) 小学4年生のとき、ぼくは通っていた体操教室で約半年間、「男の子」のふりをしていた。運動音痴の双子の弟が教室への出席を拒否し始めたことが、そのきっかけだった。 ぼくはそのころ、しょっちゅう男の子に間違われていた。短い髪と、Tシャツに短パン。そういう服装を好むだけの「ただのボーイッシュ […]

【碧い海に浮かぶ月⑥】365分の5日

(by 碧月はる) 大事すぎる思い出ほど、誰にも見せずに自分のなかだけに留めておきたいと思う。生まれたての赤ん坊を抱きかかえるように、そっと静かに、ゆらゆらと揺れながらその記憶に浸りたい、と。 誰かに読まれる場所に、鮮烈な記憶を置く。その行為の先で、己の人生の一端が奇異の目で消費されるたび、ゆるやか […]

【武道家シネマ塾⑤】『キッズ・リターン』~始まるんだよ、何度でも~

(by ハシマトシヒロ) 「俺たち、もう終わっちゃったのかな」「バカヤロー、まだ始まっちゃいねーよ」 あまりにも有名なエンディング。挫折し、傷つき、敗れ去った2人は、本当にもう終わってしまったのか。あるいは、まだ始まってすらおらず、これから始まるのか。これからどちらに転ぶのかは、観た人の想像にゆだね […]

【ぼくが映画に潜るとき③】『リリーのすべて』〜“女の子”でなくなっていくぼくを、夫はどんな気持ちで見つめていたのだろう〜

(by チカゼ) 姿見の前で背広を脱ぎ捨てネクタイを外したアイナーは、内腿にペニスを挟み込んで「女性」に擬態する。「リリー」としての自身の裸体を指でなぞり、ひたすらに、食い入るように見つめる。その恍惚を、ぼくはたしかに知っている。己のものとして。 1930年、世界で初めて性別適合手術を受けたトランス […]

【碧い海に浮かぶ月⑤】愛おしい旅路の欠片と、共通言語を持たない家族

(by 碧月はる) 家族が増えた。小指の先ほどの、小さな小さな家族。全部で4匹、いや、4人。“匹”という単位は、昔から字面がすきじゃない。 先日、離れて暮らす息子たちが遊びにきたとき、川べりでメダカを捕まえた。「逃がそう」と何度か提案したが、まだ幼い次男坊はがんとして首を縦に振らなかった。 「おうち […]

【推しの一作】『キャロル』と洗練された退屈な街

(by 隷蔵庫)(注:本稿では一部、物語の核心に触れています) 2015年の冬、映画『キャロル』が公開された。ポスターに印刷されたケイト・ブランシェットとルーニー・マーラと、美しいキャッチコピーが目を引く。 映画はとてもよくできている。原作の空気感やメッセージを十分伝えきれていると思う。フィルムのよ […]

【シリーズエッセイ/碧い海に浮かぶ月④】途方もなくきれいで幸福な日々の足音

(by 碧月はる) ──疲れた。 そう思った瞬間、表面張力のようにぎりぎりまで小さく保とうとしていたものが、一気にあふれた。幼子のように途方もなく泣き続け、寝間着にはみすぼらしいシミができ、滴のついた髪の毛が頬にぺたりと張りついた。 「もういやだ」 思わず漏れ出た声は、誰にも拾われることなく夜のなか […]

【武道家シネマ塾④】『キス・オブ・ザ・ドラゴン』~あの頃ジェット・リーは、もう少しでひとりのダメ人間を立ち直らせそうになった~

(by ハシマトシヒロ) 2001年。 大学まで出してもらったにもかかわらず、父親に怒鳴られ、母親に泣かれ、弟たちには白い目で見られ、「長男は元々いませんでした」という扱いを受けながらも、なんとか踏ん張っていた演劇活動も、すでにほぼ詰んでいた。 風呂無しトイレ共同で家賃一万七千円の木造アパートから、 […]

【おなかの中のくらげ④】朝は二度来る

(by みくりや佐代子) 「くらげ」と呼んでいたおなかの中の赤ちゃんが、第三子として誕生して約2か月。黄疸の検査で通院は続いていたものの空腹や眠気を訴える泣き声は力強さがあって、生命力のあらわれのようだった。 「新たな一員」を迎え入れたことは長男と長女の生活にも変化をもたらした。当然だが「はい!今日 […]

【すなくじらの魔女修行】一限目:タロット占いの時間

(by すなくじら) 魔女になりたい。ずっとそう思っていた。 一人前の魔女たるもの、占いの一つも知っておかねばならないだろう。占いとは不思議なもので、我々に救済のヒントを与えると思えば、ある時は人間の心を巧みに操り、惑わし、時に邪な行為へと及ばせる。 魔女にとって、未来を予知できる占いは欠かせないス […]

【ぼくが映画に潜るとき②】『ブロークバック・マウンテン』〜男女がいちゃつく改札前で、ぼくと彼女は手さえ繋げなかった〜

(by チカゼ) 大学生のとき年上の社会人の女性と、少しだけ付き合っていたことがある。いわゆるTwitterの裏アカがきっかけで、初めて会ったその日にホテルに行った。告白は、していない。ぼくも彼女も「付き合おう」「好きだよ」などという明確な約束は、最後まで口にしなかった。違う、できなかったのだ。 彼 […]

【碧い海に浮かぶ月③】「しあわせのスープ」が染み込んだ夜、かっこわるい大人は、ゆるやかに立ち上がった

(by 碧月はる) 晩秋の夕暮れどき、ふと思い立ち、てくてくと散歩をした。民家の柿の実が鈴なりになっている。枝先には、もうほとんど葉が残っていない。その光景を目にして、祖父母の庭に毎年たわわに実る柿の実と、庭の後ろにそびえ立つ山々の連なりを思った。杉の木が凛と立ち並ぶ山間のなかに、ぽつんと佇む一軒の […]

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