【名画再訪】『プロミシング・ヤング・ウーマン』〜性暴力がある世界に生きている〜

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(※この記事には性暴力に関する記述が含まれます。)

最近、立て続けに周囲で起きた性被害の話を聞いた。テレビやネットで次々と性被害の告発がある中、告発できない被害の存在を知ってしまい悔しくてたまらない。世の中には無数にこうゆう話があるのだろう。

これまで、性暴力や性差別に強い怒りを示すことを避けてきた気がする。「理知的に振る舞わなければ」と思っていたから。でも今、わたしは激しい怒りを抱いている。

イライラした感情をどうにかしたい。これは、今こそ『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観る時かなと思った。主人公が性暴力事件の加害者に復讐する映画だと知っていて、「映画の中で男に復讐することで女性の溜飲を下げさせるものだったらイヤだな」と観ずにいたのだ。でもその日は、一時的にでも溜飲を下げたかった。

観た結果、映画は全くもって、女性の溜飲を下げさせるものではなかった。描かれていたのは女性を取り巻く現実─―女性が性被害にあうという現実だけではなく、被害を訴えても加害者が擁護され、女性すら被害者の味方にならないという現実だ。主人公のカサンドラは、大学時代に性被害にあった友人を助けられなかった過去を持つ女性だった。

わたしも友人の性被害に対し、無力さを感じた経験がある。

中学3年の、あれは初夏だったろうか。体育館の片隅で聞いた言葉が今も耳に残っている。性的暴行を受けたと、彼女はわたしにはっきりそう言った。

被害にあった友人は、思いを寄せる同級生の男子から加害されたという。わたしは14歳で、他人と体の関係を持ったこともなければ性に関する知識もなく、目の前にいる彼女の言葉に実感が湧かなかった。心の奥底では「本当かなぁ」なんてことすら頭をよぎった。なんと反応するか迷った挙句「ひどいね。そんな奴とはもう会わないほうがいいよ」といったようなことを伝えただけで会話を終えた。

その後、友人は“同級生の男子”の子を妊娠した。お腹の大きくなった彼女を見て、あの後にも色々とあったのだな、わたしの対応は間違いだったのだなと感じたのを覚えている。

友人が打ち明けてくれたとき彼女を助けなかった後ろめたさは、ずっと後を引いている。大人になるにつれて知識を得るたび「なぜあの時のわたしはこれを知らなかったの?」と自分への腹立たしさは増した。

『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、社会が悪意なく性暴力を容認している様子をポップな音楽や美術でコーティングした、辛く悲しい話だった。性被害の実情を伝える力強い作品だと思う。ただ、性被害に対処する具体的な方法について映画の中に答えはない。カサンドラが行った復讐も、推奨される正しい行動ではないだろう。

性暴力は至る所にあるのに、被害にあった時の対処法はテレビや学校で広く周知されていない。14歳の時にアフターピルの存在を知っていたら、警察に連絡するようなことだと認識できていたら……こう思っても、過去は変えられない。

過去を変える代わりに、わたしが10代の頃に知っておきたかったことを書こうと思う。いざ被害にあった時にここに書く対処方法を実践できなくても、自分を責める必要も他人から責められる筋合いもない。わたしは1人でも多くの人に知っておいてほしいだけ。被害にあう前や周囲で起きた被害を知る前に、知識を持っていることが重要だと思うから。

THYME」という性暴力被害からの回復に寄り添うサイトには、性被害にあった時に取ると良い行動がわかりやすく整理されていた。こちらのサイトや警察署からの呼びかけなどを参照して、性被害にあった直後に取ると良い行動を紹介したい。

① 安全を確保して専門機関に電話する
性被害にあったら、まずは心身の安全を確保します。そしてできるだけ早く、ワンストップ支援センター(電話番号#8891)または警察の性被害専門相談窓口(電場番号#8103)に電話すると良いです。身近な人が性被害にあった場合も、ぜひワンストップ支援センターへ相談してみてください。

② 証拠を残す
少しでも証拠を残すために、なるべく病院に行くまではシャワーを浴びない方が良いです。被害にあった時に身につけていた衣服は、証拠としてビニール袋に入れて取っておきます。被害にあった時のことを、覚えている限り書き残すことも証拠となります。書いたものはメールやLINEで自分宛に送ると、時間が記録され証拠としての信用性が高まります。この時点で被害を届けるつもりはなくても、できるだけ証拠は残しておくことをおすすめします。

③ 警察へ届け出る
警察に連絡できるなら、連絡しましょう。その場合、警察が連絡をした病院へ行き、DNAの採取をしてもらいます。1人で行くのが不安なら、①で紹介したワンストップ支援センターに相談すると担当者に付き添ってもらえる場合もあります。すぐ被害を届ける気になれない時は、無理をしないでください。時間が経ってから警察に届け出ることも可能ですので、証拠は残せるだけ残しておきましょう。警察に行けなくても、病院にはできるだけすぐ行くことをおすすめします。

④ 病院へ行く
病院は、救急外来や婦人科を受診してください。アフターピル(緊急避妊薬)が必要なら、そこで処方してもらいます。アフターピルは72時間以内に服用する必要があり、服用が早いほど避妊効果は高まります。そのほか、病院にて怪我がないかの確認や性感染症の検査、犯人のDNA採取などをします。被害の記憶が曖昧な時は薬物を飲まされた可能性があるので、血液検査を行うこともあります。あなたが警察に届けたくない場合、病院が勝手に届け出ることはありません。

14歳の頃にこれらの情報を知っていたら、少しは友人の助けになれただろう。少なくとも「とにかくまず一緒に病院に行こう」とは言えていた。彼女は妊娠しなかったかもしれない。

でも、その世界線には、友人が産んだ女の子は存在しない。
彼女は妊娠した子を出産した。生まれたのは女の子だった。

今はほとんど連絡を取ってないけれど、Instagramに投稿された写真で友人と娘さんの姿をたまに目にすることがある。幸せそうに過ごす友人の様子を見ると、心底ほっとする。そして、子どもを産むことなく30代になったわたしは、こんなかわいい娘がいる友人の人生を「羨ましい」なんて思ったりもする。

かつて性被害を打ち明けられた時、正しい情報を持たず、正しい行動ができなかった。だから今、あの子がいる。その事実に過去の自分が少し赦された気がして、無責任にも救われている。

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(c)2020 Focus Features
『プロミシング・ヤング・ウーマン』allcinemaページ

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この記事を書いた人

サブカル好きのミーハーなライター。恥の多い人生を送っている。個人リンク: note/Twitter