【碧い海に浮かぶ月②】大人である私たちは、置き忘れたことにさえ気づかないままで

(by 碧月はる) 『ちいさなちいさな王様』という物語がある。ドイツの作家、アクセル・ハッケのベストセラー小説だ。ミヒャエル・ゾーヴァの挿絵が美しい本書は、一見御伽噺のような風貌を醸しつつも、哲学的な要素を持ちあわせている。 王様の世界は、年齢を重ねるごとに身体が縮んでいく。その代わり、想像の世界は […]

【おなかの中のくらげ②】あつかましい“生”のこと

(by みくりや佐代子) 生活の中に「キリトリ線」がある。それをプチ、プチと少しずつ千切っていくような2週間だった。産休前の引き継ぎを通して「わたししかできない仕事」は「他人にもできる仕事」へと移行した。キリトリ線を千切り終えた時、「働く自分」が社会から完全に剥がれてしまった。 最終出社日に貰った花 […]

【映画レビュー】『空白』〜運命の行き着く果てにある光〜

(by とら猫) 命は重い。 なぜかというと、命は取り替えがきかないからだ。盗まれたものは買い直せばいいし、壊されたものは修理すればいい。けれど命だけは何をもってしても代替できない。命が失われるとはすなわち、存在の消滅である。誰かの存在を決する権限が、人間にあるとは思えない。それは神の領域だ。ゆえに […]

【武道家シネマ塾②】どんなに大人になっても僕等はサニー千葉の子供さ(後編)

(by ハシマトシヒロ) さて。 前回の記事を通じて、入門編としての“ヒーロー・千葉真一”を堪能してもらえたと思う。主演映画の面白さをわかってもらえたと思う。 本番はここからだ。今までの二作品は前座にすぎない。勝手に料金に加算されている、突き出しにすぎない。 この映画を見せるために、あえて“ヒーロー […]

【武道家シネマ塾①】どんなに大人になっても僕等はサニー千葉の子供さ(前編)

(by ハシマトシヒロ) いやいや、千葉真一が死ぬわけないやん、だって千葉真一やで! ……と思っていたが、どうやら事実らしい。 『仁義なき戦い』シリーズで一緒に暴れまわっていた方たちが、どれだけお亡くなりになっても、千葉真一は死なないと思っていた。だって、たまにテレビで見かける姿は常に元気で黒光りし […]

【乙女ゲームレビュー】『灰鷹のサイケデリカ』〜魔女に向けられた篝火が照らす数奇な運命〜

(by すなくじら) 女性向け恋愛シミュレーションゲーム、通称「乙女ゲーム」におけるの最大の魅力は、わたしたちプレイヤーが“神の視点”から登場人物の生き様を追いかけることができる点にあると考えている。 現実世界においてわたしたちは、自分の物語を紡ぐことを宿命としてこの世に生を受ける。自分は誰の生まれ […]

【名画再訪】『スタンド・バイ・ミー』~生と死のコントラストに、眩く光る友情〜

(by 安藤エヌ) 先日、スティーブン・キング原作の映画『スタンド・バイ・ミー』を観た。  映画好きならば必ず観ないといけない作品と思いながら、なかなか機会がなく、観れずにいた。名作を見届けたあとにある、偉大な感動へのほんのわずかな畏(おそ)れがあったのかもしれない。しかし先日、ちょうど金 […]

【物語るモノ②】言葉に疲れたラノベ作家、不自由なコミュニケーションにハマる

(by 蛙田アメコ) 物語るモノは、いたるところに溢れている。テキスト、音声、あるいは言葉もなく語るもの。ライトノベル作家がハマっている物語コンテンツについて綴ります。 *** メールが開けない日、というのがある。あらゆるチャットもSNSも開く気になれない。現代のコミュニケーションでは、ほとんどが文 […]

【映画レビュー】『シンデレラ』〜魔法使いがビリー・ポーターでなければならない理由〜

(by こばやしななこ) 「たとえ辛い時も信じていれば夢は叶うもの」 ディズニーアニメ版『シンデレラ』が伝えるメッセージはこれに尽きる。描かれているのはどんな境遇にあっても卑屈になることなく、夢を諦めず優しく誠実でいる人の魅力だ。私は何度も何度も「たとえ辛い時も信じていれば夢は叶うもの」とシンデレラ […]

【碧い海に浮かぶ月①】私の生の隣には、いつだって海と言葉があった

(by 碧月はる) はじめてこの海を訪れた朝、私は厚手のロングコートとふかふかのストールを身に着け、それでも凌ぎきれぬ寒さにカチカチと歯を鳴らしていた。 新天地での生活は、希望より不安のほうが大きかった。岩肌に勢いよく押し寄せる水面が砕け散る様を眺めながら、祈るような気持ちで目を閉じた。望まぬ形で置 […]

【ノベルゲーム講座②】文章重視なノベルゲームの文章の書き方2〜サスペンス編〜

(by 隷蔵庫) 前回、私はノベルゲームの文章の書き方・演出面についてコラムを書いた。 しかし、実のところ、私は企業から発売されたノベルゲームをプレイした経験がほぼ無く、ノベルゲームのプレイヤーとして素人であることは素直に申し上げなければならない。そんな奴がノベルゲームの演出に関して講釈を垂れるべき […]

【おなかの中のくらげ①】「正解は、命です」

(by みくりや佐代子) 「くらげみたい!」と笑ったのは私じゃなくて君の姉だから、どうか私を恨むのはやめてほしい。 エコー写真を覗きこんですぐ、6歳の娘は驚いて顔をあげた。「くらげ」と呼ばれたその命はまだ小さくて、大きさでいうと30ミリ、モノクロの感熱紙の右上に「10w」と“生”の記録がなされていた […]

【エッセイ】とある芝居の話〜嫌いな女性を嫁にしてみる〜

(by ハシマトシヒロ) 「あなたたち、全然夫婦に見えない!」作・演出の美奈さん(仮名・年下)が、怒って芝居を止めた。 二十数年前の僕は、あるお芝居の公演に参加していた。大きな芝居ではない。仲間内の芝居だ。その「仲間」というのも、所属劇団が解散した者、所属劇団をクビになった者、入りたい劇団に入れない […]

【映画レビュー】『ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている』単なる成功譚ではなく、10代の痛みと喜びに満ちたドキュメンタリー映画

(by こばやしななこ) 時代のアイコンになったビリー・アイリッシュ 洋楽をあまり聞かない人でも、ビリー・アイリッシュの名は知っているのではないだろうか。2019年に発売されたデビュー・アルバムは18カ国で1位になり、翌年のグラミー賞を取りまくった。2001年生まれの少女は、世界に注目され時代のアイ […]

【映画レビュー】『キネマの神様』~創り手たちの想いをのせて、スクリーンから飛び出すように神様が手を伸ばす

(by 碧月はる) 2020年、日本映画史を彩る松竹映画は100周年を迎えた。 大きな節目を記念して制作された作品『キネマの神様』。こちらの作品は、コロナウイルスによるパンデミックの影響を受け、幾度となく困難に見舞われた。まず、撮影の半分を終えた3月末に、ダブル主演を務めていた志村けんさんがご逝去。 […]

【映画レビュー】“今”を特別にしてくれる傑作『イン・ザ・ハイツ』 ~ミュージカル映画って、いいなぁ〜

(by 安藤エヌ) 8月某日、私は非常にくさくさしていた。 仕事の悩みが堂々巡りになりつつあったのと、コロナ禍で友達と会う機会も少なくなってストレスを発散することができなくなってしまっていたのが重なり、精神衛生は最悪だった。私の場合、こうなると大好きなエンタメにもなかなか手を伸ばせなくなるので厄介だ […]

【連載/LIFE-】第9回:“文化的荒涼”のなかで鳴る東京五輪開会式の『ドラゴンクエスト』序曲

(by 葛西祝) その音楽は “文化的荒涼”のただ中にて、Twitterのタイムラインで称賛された。 オリエンタリズムのクリシェに塗れた演目が終わり、選手入場のイベントが始まる。噂された『ドラゴンクエスト』序曲が鳴り響き、各国から選手が競技場へ歩み始めた。オーケストラはやがて『ファイナルファンタジー […]

【名画再訪】「愛がなんだ」と吐き捨てるように言ったあの子へ

(by みくりや佐代子) 愛がなんだ。愛がどうした。 そう言えるだけの威勢があるならばいい。他人がどう言おうと自分の差し出すこれこそが愛なのだと、言い切れるほどの意地があるならばいい。たとえそれがどんなに非常識で、理解されにくいものだとしても。 映画「愛がなんだ」の最も不思議なのは、盲目的な恋に溺れ […]

【ゲームレビュー】「声の力」を宿した、Nintendo Switch版『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女』

(by シェループ) 使い方次第で場の空気を変え、受け手の感情を揺れ動かす。『ファミコン探偵倶楽部』というテキストアドベンチャーゲームは、そんな音の持つ力を思い知らされる名作だった。 ただ、その力は色数の少ない映像に象徴される、当時の技術の恩恵があって光っていた所もある。それは一連の表現が強化された […]

【映画レビュー】『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』~マシーンから「プロの普通」へ~

(by ハシマトシヒロ) ある日、このサイト『BadCats Weekly』の編集長であるとら猫さんよりメールが届いた。 「ハシマさん、映画評も書きたいって言ってましたよね?『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』で一本書きませんか?」 「一般的には昆虫学者としての面が有名な彼だが、実は彼は詩人でもあり、ま […]

【名画再訪】『アヒルと鴨のコインロッカー』~答えは風に吹かれている〜

(by 碧月はる) 世界的に著名なミュージシャンである、ボブ・ディラン。彼は「音楽の神さま」と言われている。彼の存在を知ったのは、20代後半の頃。とある映画のなかで、私は“神さま”と出会った。 『アヒルと鴨のコインロッカー』。伊坂幸太郎原作の小説を、中村義洋監督が映画化した。濱田岳と瑛太がダブル主演 […]

【物語るモノ①】ツイキャス・禍話〜ホラー嫌いのラノベ作家、怖い話を聴く〜

(by 蛙田アメコ) 物語るモノは、いたるところに溢れている。テキスト、音声、あるいは言葉もなく語るもの。ライトノベル作家がハマっている物語コンテンツについて綴ります。 ——— 禍話とは 〜失われた部室《らくえん》を求めて〜 夏、到来!!!!怪談シーズン、到来!!!!というわけで皆さん、怖い話は好き […]

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