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【ぼくが映画に潜るとき】第4回:『トムボーイ』〜「男の子」のふりをして過ごした、あのころのこと〜
(by チカゼ) 小学4年生のとき、ぼくは通っていた体操教室で約半年間、「男の子」のふりをしていた。運動音痴の双子の弟が教室への出席を拒否し始めたことが、そのきっ... -
【映画エッセイ】『パワー・オブ・ザ・ドッグ』〜男らしさの犠牲者〜
(by こばやしななこ) なぜ、彼はああなってしまったのだろう。なぜ周りから愛されないふるまいばかりするのだろう。ドスドスと床を踏み鳴らす祖父の気配を感じながら... -
【碧い海に浮かぶ月⑥】365分の5日
(by 碧月はる)大事すぎる思い出ほど、誰にも見せずに自分のなかだけに留めておきたいと思う。生まれたての赤ん坊を抱きかかえるように、そっと静かに、ゆらゆらと揺れ... -
【武道家シネマ塾】第5回:『キッズ・リターン』~始まるんだよ、何度でも~
(by ハシマトシヒロ) 「俺たち、もう終わっちゃったのかな」「バカヤロー、まだ始まっちゃいねーよ」 あまりにも有名なエンディング。挫折し、傷つき、敗れ去った2人... -
【映画エッセイ】『猿楽町で会いましょう』〜若さの本当の価値と取り戻したいもの〜
「若さ」を恥ずかしいと思うたちだった。なぜか。この国は、若いこと、幼いことに価値があるとされているからだ。とりわけ女性は。 若い女性の肌や髪が画一的な「美しさ... -
【エッセイ】脚本コンクールの最終選考で落ちた話
(by こばやしななこ) 2021年、10月某日。パソコンの前に座った私は、1分ごとにクロームの更新ボタンをクリックしていた。開いているのは「創作テレビドラマ大賞」とい... -
【ぼくが映画に潜るとき】第3回:『リリーのすべて』〜“女の子”でなくなっていくぼくを、夫はどんな気持ちで見つめていたのだろう〜
(by チカゼ)姿見の前で背広を脱ぎ捨てネクタイを外したアイナーは、内腿にペニスを挟み込んで「女性」に擬態する。「リリー」としての自身の裸体を指でなぞり、ひたす... -
【映画レビュー】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』がよすぎた件〜予習範囲にご注意!〜
(by 蛙田アメコ)(注:本稿には段階的なネタバレが含まれます!) あーーー、よかった。めっちゃよかった、本当によかった。 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム... -
【碧い海に浮かぶ月⑤】愛おしい旅路の欠片と、共通言語を持たない家族
(by 碧月はる) 家族が増えた。小指の先ほどの、小さな小さな家族。全部で4匹、いや、4人。“匹”という単位は、昔から字面がすきじゃない。先日、離れて暮らす息子たち... -
【エッセイ】スネが折れただけやん。
(by ハシマトシヒロ) 人間のスネの骨は、意外と簡単に折れる。よくあるパターンは、フルスイングしたローキックが相手の硬い部分(膝だったり、スネ同士だったり)に... -
【推しの一作】『キャロル』と洗練された退屈な街
(by 隷蔵庫)(注:本稿では一部、物語の核心に触れています) 2015年の冬、映画『キャロル』が公開された。ポスターに印刷されたケイト・ブランシェットとルーニー・... -
【エッセイ】家族という呪いと、クリスマスの夜~家族愛を描いた映画に感動できなくていい~
(by 安藤エヌ)クリスマスが近づくにつれ、街は華やぎ、色づいていく。ディスプレイに飾られたサンタクロースの人形を見て思い出されるのは、幼い頃の記憶だ。 小学生... -
【エッセイ】絶望名人カフカの人生論〜ネガティブだけどチャーミングな人〜
(by こばやしななこ)ときどき読み返す本の中に『絶望名人カフカの人生論』がある。 20世紀を代表する作家・カフカが残したネガティブな名言を集め、編訳の頭木弘樹さ... -
【シリーズエッセイ/碧い海に浮かぶ月④】途方もなくきれいで幸福な日々の足音
(by 碧月はる) ──疲れた。そう思った瞬間、表面張力のようにぎりぎりまで小さく保とうとしていたものが、一気にあふれた。幼子のように途方もなく泣き続け、寝間着に... -
【映画エッセイ】“ボクたちはみんな大人になれなかった”のだろうか?本当に?
友人と会うたび、私達はどうしてこうも昔話でいつまでも語り合えるのかと笑ってしまう。変わった口調のあの先生、エキサイティングな喧嘩を繰り広げる派手なカップル、... -
【武道家シネマ塾】第4回:『キス・オブ・ザ・ドラゴン』~あの頃ジェット・リーは、もう少しでひとりのダメ人間を立ち直らせそうになった~
(by ハシマトシヒロ) 2001年。大学まで出してもらったにもかかわらず、父親に怒鳴られ、母親に泣かれ、弟たちには白い目で見られ、「長男は元々いませんでした」とい... -
【おなかの中のくらげ④】朝は二度来る
「くらげ」と呼んでいたおなかの中の赤ちゃんが、第三子として誕生して約2か月。黄疸の検査で通院は続いていたものの空腹や眠気を訴える泣き声は力強さがあって、生命力... -
【すなくじらの魔女修行】一限目:タロット占いの時間
(by すなくじら) 魔女になりたい。ずっとそう思っていた。 一人前の魔女たるもの、占いの一つも知っておかねばならないだろう。占いとは不思議なもので、我々に救済の... -
【ぼくが映画に潜るとき】第2回:『ブロークバック・マウンテン』〜男女がいちゃつく改札前で、ぼくと彼女は手さえ繋げなかった〜
(by チカゼ)大学生のとき年上の社会人の女性と、少しだけ付き合っていたことがある。いわゆるTwitterの裏アカがきっかけで、初めて会ったその日にホテルに行った。告... -
【碧い海に浮かぶ月③】「しあわせのスープ」が染み込んだ夜、かっこわるい大人は、ゆるやかに立ち上がった
(by 碧月はる) 晩秋の夕暮れどき、ふと思い立ち、てくてくと散歩をした。民家の柿の実が鈴なりになっている。枝先には、もうほとんど葉が残っていない。その光景を目... -
【映画エッセイ】『燃えよ剣』にハマって京都に行ったら新撰組のヤバさに気づいた話
(by こばやしななこ) うら若き16歳の春、私は新撰組に熱狂していた。 司馬遼太郎の歴史小説『燃えよ剣』のせいだった。 『燃えよ剣』は土方歳三がまだ何者でもない道... -
【武道家シネマ塾】第3回:『燃えよ剣』~そもそも美しさとは作れるものなのか~
(by ハシマトシヒロ) 『燃えよ剣』を観た。 原作、司馬遼太郎。監督、原田眞人。主演、岡田准一。 司馬遼太郎。言わずと知れた、歴史小説の大家である。『竜馬が行く... -
【おなかの中のくらげ③】今はまだ黄色の子
くらげが産まれ落ちた。それは順を追って丁寧に私に知らされた。眼鏡もコンタクトも外し、身体に麻酔が回っていた私には、ぼんやりと滲む世界の中でただ天井を見てハイ... -
【エッセイ】バイクに乗るってことは人生に“責任”とるってことなのかもしれない
(by 蛙田アメコ)オートバイのいいところは、一人乗りだってところだ。サイドカーやタンデムシートをつけなければ、オートバイはひとりしかその背中に乗せてはくれない... -
【ぼくが映画に潜るとき】第1回:『君の名前で僕を呼んで』〜どうしようもなく魅力的な「大人」について〜
(by チカゼ)舞台は80年代の北イタリア、夏。17歳のエリオは両親と滞在している別荘で、美術史の大学教授である父に招かれた24歳の大学院生・オリヴァーと出会う。繊細... -
【マイ・ラヴ・パレード①】『ツイステッド・ワンダーランド』に登場するジャミル・バイパーの話をさせてくれ
(by 安藤エヌ) オタクにはみんな、推しがいる。推しがいるから生きていける。推しの幸せが私の幸せ──。カルチャーライターであり生粋のオタクである私が「愛してやま... -
【エッセイ】妄想ライフのススメ
(by こばやしななこ) 生きるって大変。エコバッグ持ってても買い物に忘れず持っていけたことはないし、ぼーっとしてるとレジ袋も貰い忘れて袋だけ買いにレジに並び直... -
【碧い海に浮かぶ月②】大人である私たちは、置き忘れたことにさえ気づかないままで
(by 碧月はる) 『ちいさなちいさな王様』という物語がある。ドイツの作家、アクセル・ハッケのベストセラー小説だ。ミヒャエル・ゾーヴァの挿絵が美しい本書は、一見... -
【おなかの中のくらげ②】あつかましい“生”のこと
生活の中に「キリトリ線」がある。それをプチ、プチと少しずつ千切っていくような2週間だった。産休前の引き継ぎを通して「わたししかできない仕事」は「他人にもできる... -
【映画レビュー】『空白』〜運命の行き着く果てにある光〜
(by とら猫) 命は重い。 なぜかというと、命は取り替えがきかないからだ。盗まれたものは買い直せばいいし、壊されたものは修理すればいい。けれど命だけは何をもって...