小説

【推しの一作】愛しきものの不在とともに生きる~坂元裕二作品における「叶わなかった恋」への慈しみについて~

(by 遠山エイコ) 映画『花束みたいな恋をした』の大ヒットも記憶に新しい脚本家・坂元裕二。4月には東京、5月には札幌で朗読劇の公演があり(大阪公演は緊急事態宣言の影響により中止)、現在はドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』が放送中だ。 一世を風靡したトレンディドラマ『東京ラブストーリー』をはじめ、オ […]

【推しの一作】『太陽がいっぱい』〜みんなから見下され、道化師のふりをしなければ、相手にされない人間』の逆襲〜

(by 隷蔵庫) 1. はじめに 「誰かになりたいと願うことは、自分自身を浪費することだ」というカート・コバーンの言葉がある。これ以上ニルヴァーナには詳しくないが、それを突き詰めた小説は知っている。 『太陽がいっぱい』というサスペンス小説だ。 おそらく、映画の方が有名だろう。レンタルビデオ店に行けば […]

【インタビュー】「使命感が無くなったらその時点で終了じゃないかとは思います」――『ベオグラードメトロの子供たち』クリエイター・隷蔵庫

(インタビュー文・構成:葛西祝、聞き手:とら猫) 今年2020年はビデオゲームでさまざまな話題作がリリースされる年だ。しかし、どこか気配の違うビジュアルノベル『ベオグラードメトロの子供たち』がリリースされたことを忘れてはならない。 本作は近未来の旧ユーゴスラビア圏・セルビアを舞台に、超能力を持った少 […]

【エッセイ】私は祈りを書いている

(by 蛙田アメコ) 小説を書いていて、時折「どうして書いているの」とか「何を書きたいの」と聞かれることがある。どう答えていいのかわからなくて、あいまいな返答をしてしまうことが多い。けれど、夏になると思い出すことができる。私は「祈り」を書いているのだと思う、たぶん。 死ぬには夏がいい。何故なら、夏の […]

【エッセイ】泥魚~なぜ苦しいのに「書き続ける」のか、その問いと叫び〜

(by 安藤エヌ) なぜ「書いている」んだろう。 そう、自問自答することがある。いつから「書く」ことを始めたかといえば、おそらく高校時代からで、「書く」ことが楽しいと知り、大学は専門的に学べる学科を目指し、入った。その時、私は人生最大(であろう)の病を患っていたので(心の病気だった)、決して満足に学 […]

【連載/LIFE−】第7回:テキストにおける “若さ”から手を切るということ

(by 葛西祝) 若さを良いものと評することは多い。選手が全盛期を迎える期間が限られたスポーツはまさにそうだし、流行りのファッションや音楽からは誰でも良い意味で若さを捉えているだろう。 だけど多くの人が見て、若さがすぐに気づかれない分野がある。それがテキストにおける若さである。 毎日誰もが目にする文 […]

【フリーに生きる】第2回:小説家・岸馬きらくの場合〜「生きている時間」を増やすということ〜

(by 岸馬きらく) 「やりたいことをやっている時間は生きている。やりたくないことをやっている時間は死んでいる。なるべく長く生きたいと思う」 これが作家・マンガ原作者そして創作サロン『岸馬きらく創作研究所』の運営をしている私、岸馬きらくの座右の銘です。この座右の銘について今から話をしようと思います。 […]

【フリーに生きる】第1回:ラノベ作家・蛙田アメコの場合〜宙ぶらりんな私たちへ〜

(by 蛙田アメコ) 2020年2月4日をもって会社への出勤をやめた。 なぜ『出勤をやめた』なんて煮え切らない書き方をするのかといえば、いわゆる『休職期間』をいただいている。会社員でもなく、フリーランスでもない宙ぶらりんの私は、眼前に広がる『フリーに生きる』という選択肢をぼんやり眺めている。私にとっ […]

【推しの一作】『ハリー・ポッター』と裕美の部屋

(by 須藤裕美) ハリー・ポッターシリーズ(以下:ハリポタ)を読むためには、二週間は外界から完全にシャットアウトして家に引きこもる必要がある。なぜならあのすばらしい世界に浸るためには、それぐらいの準備と覚悟がいるからだ。本書を読んでいる間、わずらわしい仕事や交友関係などに邪魔されたくないわけだ。ス […]

【連載/LIFE-】第5回: POPEYEの村上春樹

(by 葛西祝) 雑誌でよくPOPEYEを読む。去年からおや、と感じたのは、村上春樹のエッセイが始まったことだ。はじめはすこし驚いたが、毎回読むうちに昔から書かれていたみたいに思えていった。毎回持っているTシャツについて書いていて、そのスムーズなテキストが、POPEYEのコンセプトへきれいに収まって […]

【映画エッセイ】永遠に間宮千昭に恋する夏にいたかった『時をかける少女』

(by 満島エリオ) 間宮千昭という男は、「完璧な初恋」そのものだと思う。説明など不要かと思いますが、映画『時をかける少女』の、「未来で待ってる」でおなじみの間宮千昭の話をしています。 多くの思春期女子の心を華麗に奪い去っていった初恋泥棒こと間宮千昭に、ご多分に漏れず私もハートを持っていかれた。つま […]

【映画レビュー】『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』は現代を生きるすべての人に届いてほしい物語だ

(by 蛙田アメコ) 京都アニメーション『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』。このレビューは京都アニメーションという日本屈指の、すばらしいアニメーション作成会社と、その最新作であるアニメーション映画についてのレビューである。 ◇延長上映決定◇ 当初、3週間限定上映だった […]

【ラノベレビュー】~これは、もっとも優しい復讐劇~『女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました』

(by 矢御あやせ) 「~だから」と我慢を強いられたことはあるだろうか。 題名の「女だから」のみならず、男だから、陰キャだから、パリピだから、おじさんだから、姉だから、弟だから…………。枚挙にいとまがない。 本書はそういう「冷たい雨」に打たれている人に、「もう大丈夫だよ」と肩を置いてくれる。そして、 […]

【ノベルゲームレビュー】『真昼の暗黒』が暴きだす、様々な狂気への旅路

(by とら猫) 狂っていくというプロセス。 なぜだか自分は幼い頃からそうしたことに関心があって、狂った人々が暴れまわる映画や漫画を好んで見ていた。 猟奇的な事件が起きると槍玉に挙げられるたぐいの作品ばかりだったが、それらを見ていて学んだのは、人が狂うことと凶暴性にはあまり関係がなく、狂った人が全員 […]

【小説レビュー】北アイルランドが舞台のテンポの良いクライムノベル『アイル・ビー・ゴーン』

(by とら猫) カーテンを閉め切ってハシシを吸いながら、“気分を盛り上げるために”爆音でアタリのゲーム『ギャラクシアン』に興じている、降格を食らった元刑事。おかげで携帯無線が鳴っているのにも気づかない…… 主人公のショーン・ダフィが人間臭い拗ね者で、体制とは反りが合わないアウトローであることが端的 […]

【連載ノベル/庵財クロエの百科事典】第2話: 割りの良いバイト②

(by 蛙田アメコ) 《前回までのあらすじ》『効率厨』で一流大学入学まで駆け上がってきた小松崎つむぎ。しかし、バイトに精を出しすぎた結果の寝坊により留年&奨学金の支払い停止が確定してしまった。フランス語講師の朝比奈から紹介された法外に割りのいいバイトの面接に行く途中、チンピラに全力で上段回し […]

【連載ノベル/庵財クロエの百科事典】第1話: 割りの良いバイト①

(by 蛙田アメコ) 《第0話からの続き》 高校時代までは冗談のひとつも通じない真面目キャラだった。というか、今でもそうだ。冗談とか、うわっつらの友人同士の付き合いとか。そんな非効率的なことは性に合わない。私が、経済学部に進学した理由も『経済』というからには文学や法学よりも実生活に役立つのだろうと予 […]

【連載ノベル/庵財クロエの百科事典】第0話: プロローグ

(by 蛙田アメコ) 美しい言葉なんて、麗しき物語なんて。どうせ虚ろで無力なものだと思っていた。――庵財あんざいクロエに出会う、その日までは。 東京都心、田町駅。レトロ系高級マンション、パレスロゴス最上階。13階1301号室。そこが庵財クロエの仕事場であり、私のバイト先だ。「おはようございます、クロ […]

【猫エッセイ】猫の国へようこそ

(by とら猫) 俺は猫の国にいる。 もちろん当初は人の国にいて、今だって住まい自体は以前と何ら変わりないが、気がつくと奇怪にも、自宅が猫の国に“切り替わって”いた。と言っても、別にすべての語尾に「ニャン」をつけてしゃべるとか、一日三食カリカリを供されるとか、「ニャンとも清潔トイレ」で用を足さなけれ […]