(by 蛙田アメコ

京都アニメーション『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』。このレビューは京都アニメーションという日本屈指の、すばらしいアニメーション作成会社と、その最新作であるアニメーション映画についてのレビューである。

◇延長上映決定◇

当初、3週間限定上映だった本作は好調により延長上映が決定した。
上映から1週間後に観に行った映画館では、上映後に拍手が起きていた。上映初日でもないのに、拍手が起きていたのだ。

あまりにも悲しい出来事を超えて上映されたこの美しいアニメーションは、アニメファンだけではなく、現代日本を生きるすべての人に届いてほしい物語だった。
上映中に、ぜひ劇場に足を運んでほしいと思う。

◇あらすじ◇

自動手記人形オート・メモリーズ・ドール――その名が騒がれたのはもう随分前のこと。オーランド博士が肉声の言葉を書き記す機会を作った。当初は愛する妻のためだけに作られた機会だったが、いつしか世界に普及し、それを貸し出し提供する機関も出来た。

お客様がお望みならどこでも駆けつけます。
自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです。

物語から飛び出してきたような格好の金髪碧眼の女は、無機質な美しさのまま玲瓏な声でそう言った。

(『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式サイトより)

……ファンタジー作品である。手紙に託した伝えたい想い、伝えられない想いを、自動手記人形サービスのヴァイオレットが「代筆」していく。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』では、心のない人形のようだと称されていたヴァイオレットが、テレビシリーズを経て「愛してる」という心を少しだけ分かるようになったその後を描いている。

◇手紙とファンタジーが好きだった◇

かつて夢中になったライトノベルに『ポストガール』という作品がある。

電撃文庫から出版されていた全4巻のシリーズである。ポストアポカリプス×郵便配達×ヒューマノイドロボット、という筆者の大好きなものが全部つまったライトノベルだった。系譜として言えば、ライトノベルの金字塔である『キノの旅』シリーズのフォロワーとしてリリースされた作品であると言える。モトラド (注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)のかわりにカブ的な乗り物で手紙を運ぶ少女型のヒューマノイドの物語だ。決して大ヒットしたりアニメ化したりしたシリーズではなかったが、ずっと忘れられない作品だ。その後、コミックでは『テガミバチ』という郵便配達ファンタジーがヒットを飛ばした。電子メールやSNSのメッセージ機能で日々様々な情報をやり取りするわたしたちは、紙とインクと蝋でつづられた、ヒトが届けるヒトの想いにどうしようもなく心惹かれてしまうのだ。

その系譜の先端にいる『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』。アニメシリーズを見ていなくても、しっかりと楽しめる秀逸な構成となっていた(もちろん、アニメシリーズを視聴済みであれば感動は乗算される)。

◇エンドクレジットについて◇

京都アニメーションの事件について、ここでは多くは語るまい。それは、作品そのものを語るうえでの本質ではないから。起こされるべきではなかった悲劇を塩コショー的に作品に振りかけて味わうのは、好きじゃない。通常のアニメ映画については、実際に作業にあたった人員のなかでキャリアや作業量によってエンドクレジットに名前が載るかどうかが決まるそうだ。今回の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』では、京都アニメーションの放火事件で犠牲になった方のお名前を、可能な限りクレジットに遺すことにしたのだそうだ。

実際のエンドクレジットは、ただ淡々と作業セクションごとにお名前が流れていった。生きている方も、犠牲となられた方も隔てなく。

◇劇場でご覧になっていただきたい◇

もしも、京都アニメーションという名前を件の凄惨な事件の被害を受けた組織としてのみ認識されている方は、劇場でこのアニメを観てはくれないだろうか……と切に思う。美しくて、みずみずしくて、最高に力強いメッセージを綴った手紙が、どうかあなたのもとに届きますように。

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(c)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』公式サイト

 

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