そんなピロウズの代表曲のひとつ、“ハイブリッドレインボウ”はこんなふうに歌う。
≪ほとんどしぼんでる僕らの飛行船/地面をスレスレに浮かんでる≫
≪昨日は近くまで 希望の船が来たけど/僕らを迎えに来たんじゃない≫
わかりやすい売れ筋に乗れない苦悩や、同期や後輩が売れていくことへの嫉妬。いつまでも「自分たちの番」がこない焦り。ピロウズの歴史を踏まえると、これらの歌詞はより一層突き刺さる。
けれど、だからこそ思う。ピロウズがこの曲を作ってくれてよかったと。
オリコン1位や紅白出場やフェスのトリを任されるようなアーティストがいる。別に音楽に限らなくたっていい。どのジャンルでも必ず、一番大きなステージに華々しく立つスターがいる。そういう存在を、私たちは眩しく見上げる。決して敵わない、遠い憧れとして。
the pillowsはそういうバンドではない。彼らは、「選ばれないこと」も、「ずっと選ばれないこと」も、「いつか選ばれるとは限らない」ことも知っている。そんな彼らが歌うのだ。≪昨日まで選ばれなかった僕らでも/明日を待ってる≫と。
昨年、デビュー30周年を迎えたピロウズは、初の横浜アリーナでのライブを行った。キャリアの中でも最大規模の会場だ。そのステージで、ボーカルの山中さわおは「横浜アリーナでやるようなバンドじゃねえんだよ」と言って笑ったのだという。ピロウズらしくて、胸がいっぱいになる。
一番大きなステージじゃなくたっていい。わかりやすく売れていなくたっていい。ミスチルにもスピッツにも歌えない曲を歌ってほしい。彼らの曲はもっと近く、まるで伴走してくれているみたいに響くから。
≪ここは途中なんだって信じたい≫という詞に私自身の祈りも乗せて、ピロウズと一緒に明日を待つ。
++++
(c) King Records, (c) 1996-2019 the pillows official web site All rights reserved.