今年2020年はビデオゲームでさまざまな話題作がリリースされる年だ。しかし、どこか気配の違うビジュアルノベル『ベオグラードメトロの子供たち』がリリースされたことを忘れてはならない。
本作は近未来の旧ユーゴスラビア圏・セルビアを舞台に、超能力を持った少年少女の冒険を描いた物語だ。しかし典型的な能力バトルとも、わくわくする冒険とも違う。登場人物への共感は否定され、次の瞬間にこちらが刺されるかのような、ぞっとする緊張感に満ちている。
そんなビジュアルノベルを作り上げたのは、気鋭のクリエイターである隷蔵庫氏だ。これまでの代表作として、日本を舞台にした失踪事件を描いた『真昼の暗黒』を制作。すでにこの時点で『ベオグラードメトロの子供たち』に繋がる冷ややかさは完成されており、ノベルゲームの祭典・ティラノフェス2018にてグランプリを受賞した。弊誌でも編集長のとら猫がレビューを執筆している。
今回は隷蔵庫氏に、この作風はどこで作り上げられたものなのかを語ってもらった。
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「4日しかベオグラードには滞在していません」

――『ベオグラードメトロの子供たち』は能力者と子供たち、と比較的、漫画からライトノベルで見かける設定ながら、セルビアという土地が異様な空気を放っています。なぜあの国を舞台にしたのでしょうか。
隷蔵庫(以下、敬称略):たまたまベオグラードに友人が住んでいて、旅行へ行ったらいい雰囲気だったので舞台にしました。4日しかベオグラードには滞在していません。
――そうなんですね。実際に住んでおられるのかと思っていました。
隷蔵庫:1年間ドイツに留学して、去年の9月に日本へ戻ってきました。セルビアに行ったのは、留学が終わる直後の去年の8月ごろです。
セルビアを選んだのは、若者がどうこう言っていますが……それもありますが、まずはそういうアングラな雰囲気がよかったのが第一でした。友人が廃墟好きで、犬の散歩に付き合ったこともあり、割とベオグラードのディープな場所に連れて行ってくれたのでアングラな雰囲気が堪能できたことでしょうか。
――なるほど、確かに『ベオグラードメトロの子供たち』でも、セルビアの陽の部分と、隠の部分が対照的に描かれていますね。ゲームの主な舞台である地下鉄は、実際にあるのでしょうか?家出少年たちが暮らしているリアリティも感じたのですが。
隷蔵庫:ベオグラードに地下鉄はないらしいです!2020年の冬に着工される予定でしたが、まだないみたいです。(家出少年についても)作品内の嘘です。中央駅は作りかけのものが一応あるらしいですが、入れないようですね。
――セルビア現地で廃墟を見て、そこからインスピレーションを得て、ああいったスラムを思いついたのでしょうか?鶴見にある「国道」っていう駅を彷彿とさせられて。
隷蔵庫:その駅は知らなかったです! よくわからないアーケード的なものが地下に存在していたので、そこにたまに浮浪者のおっさんが寝転がっていたりしていました。そのような空間がもっと拡張されたものがあってもいいかなと思って書きました。
葛西:能力者バトルもの、というのはいつから考えていましたか。
隷蔵庫:定番なので受けそうかなと思い取り入れました!一般受けを目指したというか。あと『SPEC』にハマってました。
――能力を考える上で、何か参考にされた本や映画はありますでしょうか?
隷蔵庫:なんでしょうね、色々と観た気がしますが、結局能力者を取り扱った作品は『SPEC』以外だと、『ドラえもん』しか観てないかもしれません。特殊能力、だいたい『ドラえもん』にありますからね。
――意外とライトな感じで取り入れたんですね。『真昼の暗黒』が凄まじくヘビーだったので、今回は方向を変えて……という意図もありますか?
隷蔵庫:『真昼の暗黒』はあまりヘビーと言う認識がなかったので、どうなんでしょうね。「たまたま思いついたから書いた」という感じです。気をつけないと『真昼の暗黒』みたいな話ばかり書いてしまうので。違うテイストも取り入れたかったのもあります。
――なんだか天才的ですね。『ベオグラードメトロの子供たち』も、ときどき『真昼の暗黒』のような気配を見せるように感じました。
隷蔵庫:いやあ、毎回ゴミみたいな初稿を出して、そこからすごい頑張って読めるような話にしています。毎回最初に書く話は本当に面白くないので、どうやって面白くしようか頑張って考えています。

――シナリオは毎回物凄い文章量なので圧倒されます。どのくらいの期間で執筆されたんですか?
隷蔵庫:『ベオグラードメトロの子供たち』は、話自体を執筆したのは半年です。でも、いろいろ改良したのも含めると9か月ぐらいかかっちゃいましたね……多分TIPSなど含めると30万文字は行っていると思います……。まあ短く語るのにも技術が要りますし、今後は短編とか出せたらいいなって思ってます!
葛西:本作は「能力者バトルもの」と思いきや、章の終わりごとに作家と編集者によるメールのやり取りという演出が入ります。一瞬、本作自体が作中劇みたいに思わされるのですが、この仕掛けの意図はありますか。
隷蔵庫:当初は普通に本編を書く感じでした。今回メタ的な要素を入れるのはやめようって思っていたんですけど……やっぱり主人公が実際にいたと思って欲しいので、結局入れてしまいました!
5月ごろにほぼ作品が完成していたものの、色々素材が揃ってなくて暇な時期があったので、何かもっと作品をよくしなきゃと思い考えた結果、こうした演出になりました。作品として一番やりたかったのは『ラ・ラ・ランド』だったので、そこを参考にしました。
葛西:『ラ・ラ・ランド』!?(笑)マジですか! 印象が真逆すぎるといいますか……
隷蔵庫:そうでしょうか(笑)。ラストシーンですね。ラストがあんな感じになってます。割と純愛って感じですし、いいかなーと。精神的な、無常な恋愛?的な。
――『ラ・ラ・ランド』のラストというと、クラブでの白昼夢みたいなシーンですかね? あそこいいですよね(しみじみと)
隷蔵庫:そうです! 最高ですよね!(力強く)
――人生ってこうだよな、と思います。あそこだけ見たりしますもん、たまに。
隷蔵庫:曲もいいですしね!なんかなっちゃったものはしょうがないし、前向きに生きていこう!と言う感じが好きです。前向きではないかもしれませんが(笑)。『恋愛小説家』とかその辺りの映画も参考にしていた気がします。
――わかります、終わったことは変えられないんですよ! では隷蔵庫さんとしては、『ベオグラードメトロの子供たち』は純愛ものという解釈でよろしいのでしょうか?
隷蔵庫:(精神的に純)愛って感じですね!なので色々やったけど前向きに生きていこう!と言うメッセージを込めてます! これは本当です。
――『真昼の暗黒』のイメージが強いので、ちょっと意外でした(笑)。人生応援ゲームなんですね。
隷蔵庫:『真昼の暗黒』も自分的には前向きと言うか、まあやっちゃったけど幸せに生きるために頑張ろう!と言うオチのつもりでした。
――そうなんですね、自分はめちゃくちゃ沈みましたが……
隷蔵庫:まあ道のりがちょっと暗すぎますね(笑)。でもまあ、世の中にはもっと酷い目にあった人もいますし……自分はごく普通の家庭です(笑)。『真昼の暗黒』は想像や本で読んだことと、自分が実際に体験したことを混ぜこぜにして書いてました。殺人の部分は完全に想像です。
――体験していたら怖いですね。
隷蔵庫:いやー無理ですね、自分は血を見るだけで卒倒しそうな人間なので。注射も気が遠くなるほど嫌ですし(笑)。
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映像から小説、漫画を通過して、ビデオゲームへたどり着いた

――隷蔵庫さんはけっこう多様な活動をされており、これまでにもアニメや映像なども制作されています。クリエイターの遍歴をうかがえますか。
隷蔵庫:高校生までは映像作家になりたかったのですが、大学生あたりであんまりそっちの才能がないことに気づき、かつ文章を書く方が面白かったので(インターネット上で)小説を書き始めました。
でも小説の閲覧数が1日3とか4で心が折れそうになったので、漫画を新都社に投稿し始めました。そこではコメントをもらえてモチベーションが上がり、半年ぐらい書いていました。
それから高校時代に作ったフリゲにコメントがついてることに気がつき、こっちも面白いんじゃないかと思いゲームを作り始めました。
――高校時代に作ったフリーゲームというのはどんなものでしょうか。
隷蔵庫:高校時代のはあまり……出来が良くないので教えたくないですが、一応フリーゲームサイトにあります。ちなみに現在のSummertime名義で最初に作ったものは『MINDCIRCUS』です。
——Vimeoにいくつか作品を載せられています。これも高校時代に作られたものですか?
隷蔵庫:そうですね、大学時代に授業か趣味で作ったものもあります。現在は映像系で仕事をしています。アート系ではなく、よく見る広告系ですが……。
――では『真昼の暗黒』が2作目ということになるんですね。キャラクターやグラフィックは、ご自分で描かれているんですか?
隷蔵庫:そうです!一応ゲームを作る上での基準があるので、それに則っています。ゲームではないですが、3Dアニメーション作家のデヴィット・オライリー(※)の考えにある、「画面の全てのグラフィックは全て箱で構成されている」という法則に則ってビットで表現しています。
高校時代、映像作家になりたかった頃、かなりオライリーに影響されていて、それが今でも残っている感じです。
(※デヴィット・オライリー:現代を代表する3Ⅾアニメーション作家。代表作は短編作品『おねがい なにかいって』や『The External World』。長編映画『her 世界でひとつの彼女』の作中アニメーションや、人気アニメーション『アドベンチャー・タイム』にゲストクリエイターとして関わる。近年では『Mountain』や『Everything』など、3Dアニメーションの美学を生かしたビデオゲーム開発に取り組んでいる。)
葛西:デヴィット・オライリー! ちょっと作風への納得感がすごいですね。
隷蔵庫:オライリーは、確か『Mountain』を出す直前ぐらいにVimeoで映像を見つけて一気にハマった覚えがあります。19歳から映像制作会社でCGアニメーションを作ってるんでしたよね。めちゃめちゃ言ってること面白いです。
彼が好きすぎて、とあるボランティアに参加してツーショット撮ってもらったくらいには好きでしたね。彼の根本にあるものはストーリーテリングだと思いますし、そこに憧れていました。
――隷蔵庫さんはゲームを通してデヴィット・オライリーの世界に到達してみたいかたちですか。
隷蔵庫:正直わかってません。ゲームもあんまり詳しくないです。ただ、デジタルのなにがしかを使えばもっと面白いストーリーが作れるんじゃないか、と思いました。そこは模索中です。
葛西:隷蔵庫さんの作品は、往年のPC-98の『Desire』とか『YU-NO』みたいに感じますけど、それらも触れてはいないですか。
隷蔵庫:んー、正直プレイしたことがなくて…面白そうとは思います。なので前の人がやった道を歩み直してるだけなのかもしれないとは思ってます。
――あまりゲーム的な面では特に影響を受けたもの、というのはないんですね。興味深いですね。
隷蔵庫:そうですね…でも『MOTHER』はどハマりしてたので、ゲームに全く触れなかったというわけではなかったです。
その他にも、FUZEでまとめられている「レプリゼンテーション」(※)は意識していました。自分の場合人種ではないですが、ちょっと救われない人たちのレプリゼンテーションをしていたかもしれません。
(※レプリゼンテーション:直訳すれば「代表する/典型となる」という意味になるが、本稿では「物語の中で、ある人々の存在が、物語のなかで代わりに体現されること」を指している。)
葛西:あまり表向きのエンターテインメントからも、社会からも弾かれてしまう人たちを描こうとしていた、ということでしょうか。
隷蔵庫:そうかもしれません。別に卑屈な人間が悪者扱いされなくてもいいですよね(笑)。こういう人がいてもいいんじゃない、という感じで書いてました。
――今後も基本的には、ストーリーを語りたいかたちでしょうか。
隷蔵庫:そうですね。昔から「物理や科学には限界があるが人間の心には限界がない」と考えていたので、そこを書き表すことに意義を感じるとは思ってます。
――その発言はもともと小説や漫画制作を経験して、ここまでにうかがったビジュアルノベルの作り方の話とつながり、なるほどと思えました。
隷蔵庫:そうかもですね、あまり意識してなかったですがそうだと思います。
――いまはノベルゲーム作家と、映像系の仕事と掛けもちで活動しているのですか?
隷蔵庫:今はそんな感じですね、1か月前(※本インタビュー日は10月28日)から働き始めたのでなんともですが。
――ここまでお話をうかがっていて、色々イメージと違って驚いています。私のイメージはすべて『真昼の暗黒』から始まっていますので……。
隷蔵庫:結局人間は信用できないというか、そういった漠然と感じている部分は反映されているかもしれないですね(笑)。無常ですね。
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ライターがビデオゲームを作り始めた時、何を見たのか。
一方、BadCats Weeklyに寄稿しており、今回インタビュアーを務める葛西祝も、今年はジャンル複合ライティングとは別の活動をスタートした。 “ジャンル複合 ”を記事執筆に留まらず、クリエイションにも広げたプロジェクト「ポストコマーシャルズ:アライアンス」を立ち上げた。

プロジェクトの本格的な作品として、ホラードキュメンタリーノベル『第12動画欠番』をリリース。葛西が友人のゲームライターであるSHINJI-coo-K氏、G.Suzuki氏とともに行っているYoutube番組「令和ビデオゲームグラウンドゼロ」が題材となった、現実を元にしたノベルだ。
『第12動画欠番』では、タイトル通りYoutube番組にてお蔵入りとなった収録がメインストーリーに据えられている。お蔵入りになったのは、「ビデオゲームの未来」をテーマに、 “未来予測の声”が聞こえるゲストとセンシティブな問題を語りあうものだった。
プレイヤーはゲストの立場となり、 “未来予測の声”を参考にしながら、やっかいなトークテーマに挑むのが主なゲームプレイとなる。現実か、そうではないかが曖昧なままゲームを進めていくことをコンセプトにしている。
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葛西:自分は普段、ライターとしてテキストを書くかたちでやってきたんですけど、初めてまともにビデオゲームを作ってみて大変だったのが、「受け手(プレイヤー)の制御が全然効かないこと」だったんです。
この前、仲間うちで『第12動画欠番』をやってもらったんですけど、いきなりチュートリアルを無視して「まず一回ゲームオーバーになりたいんで」といってまっさきに全滅にむかうという(笑)。
チュートリアルでまず先にルール読まないといけないのに!って意図から外れてしまうのは、逆にすごくビデオゲーム作りの面白さを感じてしまって。その辺りはどうでしょうか。
隷蔵庫:んー、ある程度わかってる部分とわからない部分がありました。例えば『真昼の暗黒』なら掴みとして「殺人鬼と幼女」を出したら、わりと受け入れられたり。それから先のストーリーについては、読者がどう思うだろうかということは、あまり考えてなかったです。
ゲームプレイは特に想定していませんでしたね。というか、一本道で読むだけなのでプレイも何も……という感じではありましたが(笑)。そうじゃないとしてもストーリーとゲームは相反するんじゃないかという意見はすごいわかります。「誘導できないから一本道」というのはありますね。
葛西:隷蔵庫さんはテストプレイってどれだけやってました?友達に作品を下読みしてもらうとか、演出にヒントもらうとか。『第12動画欠番』のときは、ちょっとメタな仕掛けや、ティラノフェス参加などに間に合わせるためにそれができなくて……。
隷蔵庫:テストプレイは、『真昼の暗黒』ではゼロでした。『ベオグラードメトロの子供たち』は、ばじるちゃんという方に何十回もやってもらいました。
自分も『第12動画欠番』をやりましたよ!エンドをひとつ見ました。確かに意見をもらうのは難しいかもですね。「(作者が)何を大事にしているか?」がわかれば、意見もしやすいんですけどね。
葛西:うわーっ、大変恐縮です……。
――隷蔵庫さんのゲームの場合は小説的なので、確かにゲーム的な面での「テストプレイ」は、あまり本質的に要らないような気もします。一方、葛西さんの『第12動画欠番』は私もプレイしてみて、「葛西さんはインタビュー中、こんなこと考えてるのか」と思いました。なので素の葛西のインタビューをみたいと思いましたね。
葛西:素のインタビューは多分今やっているこのインタビューかと……(笑)。
――もっとあるはずです! ぼくはそれが見たい!ゲーム的には、単純にすごいな、と思いました。ジャンル複合ライティング業者の名に恥じず、いろんな要素が混じっていて、とても葛西さんらしい、と。隷蔵庫さんはいかがでしたか。
隷蔵庫:難しかったですがクリアしました!
葛西:難しすぎたらすいません……あれは友人の伊藤ガブリエルさんにもゲーム実況でプレイしてもらったんですが、すさまじいことになってました。
隷蔵庫:いえ、自分が単に選択式ノベルゲームに慣れていないだけです(笑)。おもしろかったです!
「これがメタ作品かー」と面白くプレイしていました。音を使った仕掛けも臨場感があってよかったですね。興味深かったですね。なんかその選択式ということを人生にしている男というのがキャッチーでよかったです。
――音声演出のタイミングもばっちり嵌っていましたよね。
隷蔵庫:難しいからこそ、成功できた時の喜びはありました!
葛西:あれは3/4ぐらい実話が入っています。「フリーランス40代の壁」とか……お仕事の暗い話あたりは……。
――実話の割合多いな!
葛西:とら猫さんは40代の壁ってどうですか……?
――「肩が上がらなくなります」、「朝が早くなります」、けど仕事的には40代になってからのほうが充実しているので……特に感じたことないですね(笑)
葛西:とりあえず肉体には来てる!話を戻して、隷蔵庫さんはここまでに、芯の通ったゲームを連続で作られていますけど、これまでに「ゲームが完成できない」ということはなかったですか。けっこうなインディークリエイターにあることらしいんですが。
隷蔵庫:(あっさりと)わかんないですね、いつの間にか完成しています!でも、使命感が無くなったらその時点で終了じゃないかとは思います。
葛西:使命感というのは目標とか、シンプルにゲームの完成イメージとかそういう意味でいいでしょうか。
隷蔵庫:そうですね。例えば自分が『真昼の暗黒』のミサみたいな人間を描かなかったら、他には誰も描かないだろうと思ったので完成させました。『ベオグラードメトロの子供たち』に関しても、自分がベオグラード(という場所を)書かなかったら誰も書かないだろ〜なと思ったので。
葛西:明確に「他の人が描かないものを自分が描くしかない」と思った、ということでしょうか。
隷蔵庫:そうですね。ただ毎回これ誰も書かないだろうなという物を見つけるのも大変なので、新しい道も探そうと思ってます。
葛西:もし小説や漫画をやっていたとしたら、その使命感というのは持てましたか。
隷蔵庫:一応持ってましたし、完成させたものもありますが、今ではそれを達成するのに一番ゲームが適しているという認識なので、今では無理だと思います。
――もっとはっきりとしたルールやメカニクスの搭載されたゲームを作っていこう、という考えもあるのでしょうか?
隷蔵庫:一応今考えてます……がうまくいくかはわからないですね。何事も挑戦だと思うのでチャレンジしてみよう!と思っています!
――今のところはまだ、ノベルゲームという形で、自分が書くべきことがあるという感じでしょうか。
隷蔵庫:そうですね、ゲーム的な物を作るにしてもノベル的な要素は入ってくるんじゃないかな、と思います。結局文章が好きなのかもしれないですね。
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「せっかくだからこの3人で一本ゲームを作ってみませんか?」

葛西:そろそろ時間的にまとめということで、ひとつ今日集まったメンバーで提案があるんですが……とら猫さん、前々から「ゲーム作ってみたい」ということをおっしゃっていたじゃないですか。
――……言ってますね。
葛西:で、3日くらいで一本ゲームを作る「ゲームジャム」というイベントがあるわけですよ。そこで隷蔵庫さん、とら猫さん、わたくしで一本コラボレーションするのはどうでしょう。
――ぼくは勘弁してください……
隷蔵庫:即すぎる(笑)。
葛西:まあまあ難しく考えず。セルビアに向かったゲーム翻訳者が超能力に覚醒し未来予測の声に目覚め、100歳の壁を越えて次元を破壊するオープンワールドゲーム作りましょう。
こんなゲームほかにない!!!使命感に燃えてきました。待ってろ! 最近延期を発表した『Cyberpunk 2077』!我々のゲーム『ベオグラードバッドキャッツ動画欠番の子供たちウィークリー』が迎撃にいく!
隷蔵庫:ちょっと面白そうですね。
――ほんとかよ!ともあれ、おふたりが何かやるのは見てみたいな、とは思います。ふたりともクリエイターとしてカラーが違うので、面白そうです。
隷蔵庫:自分は今とある締め切りがあって、そっちに全てのリソースを割かれているのでお力になれないと思います…
――けどまあゲームジャムだけがコラボレーションではないですし。創作を続けている限り、いろんな形で道がクロスしていくはずですよ……と、これできれいにまとまった!
葛西:しょうがない。じゃあおふたりは名義貸しで……
――ええ! どうやってまとめ直そう!
(了)
【ゲストプロフィール】
隷蔵庫:ノベルゲーム作家。代表作は『真昼の暗黒』『ベオグラードメトロの子供たち」など。小説、漫画、アニメなど幅広いジャンルに精通する。ノベルゲーム制作サークルSummertimeを運営。Summertime公式グッズをBOOTHでも販売中。Summertime公式Twitter/隷蔵庫公式Twitter