【推しの一作】『キャロル』と洗練された退屈な街

(by 隷蔵庫)(注:本稿では一部、物語の核心に触れています) 2015年の冬、映画『キャロル』が公開された。ポスターに印刷されたケイト・ブランシェットとルーニー・マーラと、美しいキャッチコピーが目を引く。 映画はとてもよくできている。原作の空気感やメッセージを十分伝えきれていると思う。フィルムのよ […]

【エッセイ】絶望名人カフカの人生論〜ネガティブだけどチャーミングな人〜

(by こばやしななこ) ときどき読み返す本の中に『絶望名人カフカの人生論』がある。 20世紀を代表する作家・カフカが残したネガティブな名言を集め、編訳の頭木弘樹さんが解説を加えた本だ。冒頭でまず、カフカのこんな言葉が取り上げられている。 「将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。将来にむかっ […]

【エッセイ】勝手に輪になる~生き延びよ、エンタメに生かさるる者たち~

(by みくりや佐代子) 日頃から文章を書いている人間だけど「物書き以外の何らかに成りたい」と思ったのは一度や二度じゃない。それは、世に溢れる文章の中で「この人、好きやなあ」「この人、天才やんけ」と思うものを見つけた時、その文末にある「肩書き」に頬をビターンと叩かれるからである。 好きな書き手がいる […]

【エッセイ】12月16日。ほくろを取った。

(by みくりや佐代子) 2020年12月16日。天気、曇りのち雪。仕事、休み。こんな繁忙期に一律の平日休みである。 休みは多いにこしたことはないが、いったい誰の都合でこの日に定まっているのだろうと考えると、働き方改革という耳障りのいい言葉に、名前も知らない大きな者の怪しい目論見が隠されているような […]

【インタビュー】「使命感が無くなったらその時点で終了じゃないかとは思います」――『ベオグラードメトロの子供たち』クリエイター・隷蔵庫

(インタビュー文・構成:葛西祝、聞き手:とら猫) 今年2020年はビデオゲームでさまざまな話題作がリリースされる年だ。しかし、どこか気配の違うビジュアルノベル『ベオグラードメトロの子供たち』がリリースされたことを忘れてはならない。 本作は近未来の旧ユーゴスラビア圏・セルビアを舞台に、超能力を持った少 […]

【エッセイ】同人誌即売会でオリジナル小説を出したら1冊も売れなかった話

(by 安藤エヌ) 昔、コミティアという同人誌即売会に行った事がある。毎年夏・冬に開催されるコミックマーケットと違って、1次創作(オリジナル)の同人誌だけを頒布することができるイベントだ。私はそこに、オリジナル小説を刷って持って行った。 そしてものの見事に、1冊も売れなかった。その時のことはよく覚え […]

【推しの一作】私を“大丈夫”にさせる小説~吉本ばなな『キッチン』&『満月 キッチン2』~

(by こばやしななこ) 生きていると、どうしようもなく辛い時期がある。 大切な存在の死、いじめ、過労、病気、プレッシャー、人間関係、罪悪感、孤独、貧乏。いろんな理由で人は辛くなる。辛い時は、やり過ごす以外、方法がない。全てを辞めてじっとやり過ごすのだ。そして「努力しなくてもそのうち回復する」と思い […]

【インタビュー】ラノベ作家・蛙田アメコ~プロデビューから続編や翻訳版の出版、Web連載と続いた怒涛の一年を振り返って~

(聞き手:とら猫) 当BadCats Weeklyでも、高い創作スキルに裏打ちされた、多彩な味わいのレビューやエッセイを寄稿されている、ラノベ作家の蛙田アメコさん。2019年2月に待望のプロデビューを果たしてから、わずか一年の間に長編3作がリリースされ、海外でも2作が翻訳されるという、素晴らしい活躍 […]

【推しの一作】『ハリー・ポッター』と裕美の部屋

(by 須藤裕美) ハリー・ポッターシリーズ(以下:ハリポタ)を読むためには、二週間は外界から完全にシャットアウトして家に引きこもる必要がある。なぜならあのすばらしい世界に浸るためには、それぐらいの準備と覚悟がいるからだ。本書を読んでいる間、わずらわしい仕事や交友関係などに邪魔されたくないわけだ。ス […]

【連載/LIFE-】第5回: POPEYEの村上春樹

(by 葛西祝) 雑誌でよくPOPEYEを読む。去年からおや、と感じたのは、村上春樹のエッセイが始まったことだ。はじめはすこし驚いたが、毎回読むうちに昔から書かれていたみたいに思えていった。毎回持っているTシャツについて書いていて、そのスムーズなテキストが、POPEYEのコンセプトへきれいに収まって […]

【ラノベレビュー】並木飛暁『いざ、しゃべります。』で語られる、リアルな落研の青春譚

(by 蛙田アメコ) ◇部活=青春とは言うけれど 人間の数だけ人生があり、人生の数だけ青春がある。 青春グラフィティにおいて必ず取り上げられる物語上のファクターといえば、部活である。 野球部。吹奏楽部。バスケ部。剣道部。バドミントン部。カバディ部。エトセトラ、エトセトラ。 多くの部活の青春が、コミッ […]

【ラノベレビュー】~これは、もっとも優しい復讐劇~『女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました』

(by 矢御あやせ) 「~だから」と我慢を強いられたことはあるだろうか。 題名の「女だから」のみならず、男だから、陰キャだから、パリピだから、おじさんだから、姉だから、弟だから…………。枚挙にいとまがない。 本書はそういう「冷たい雨」に打たれている人に、「もう大丈夫だよ」と肩を置いてくれる。そして、 […]

【小説レビュー】北アイルランドが舞台のテンポの良いクライムノベル『アイル・ビー・ゴーン』

(by とら猫) カーテンを閉め切ってハシシを吸いながら、“気分を盛り上げるために”爆音でアタリのゲーム『ギャラクシアン』に興じている、降格を食らった元刑事。おかげで携帯無線が鳴っているのにも気づかない…… 主人公のショーン・ダフィが人間臭い拗ね者で、体制とは反りが合わないアウトローであることが端的 […]