(聞き手:とら猫

当BadCats Weeklyでも、高い創作スキルに裏打ちされた、多彩な味わいのレビューやエッセイを寄稿されている、ラノベ作家の蛙田アメコさん。2019年2月に待望のプロデビューを果たしてから、わずか一年の間に長編3作がリリースされ、海外でも2作が翻訳されるという、素晴らしい活躍を見せている。そこで今回のインタビューでは蛙田アメコさん本人にこの一年を振り返ってもらい、同時にラノベ作家としての生き残り戦略など、ふだんTwitterなどではあまり語られない、よりシビアな側面についても話をお伺いした。

“楽しく”は自分の中でも芯の部分で、いつも立ち返るところなんです。

編集長とら猫(以下、猫):まずは新刊『異世界に咲くは百合の花』の発売、おめでとうございます!

蛙田アメコ(以下、蛙):ありがとうございます!

(c) 愛中出版株式会社, GL文庫編集部

猫:プロの作家としてデビューされて約1年が過ぎたところですが、けっこう波瀾万丈だったのではないでしょうか。

当BadCats Weekly(以下、BCW)に初めて連絡をいただいたのが、2018年の8月でしたっけ?

蛙:そうですね。メールの履歴を見返してみたら、ちょうど8月でした。

猫:ちなみに、なぜ当サイトだったのでしょう?

蛙:実はですね、信頼しているTwitterの友人がBCWのことをリツイートしていて。それで本当に”ビビッと”きたので、ご連絡をした感じでした。

どの辺が“ビビッと”来たかというと、「文芸サイトらしい」「映画や本などのレビューができるかも」「新規立ち上げなので実績なしの自分でもチャンスがありそう!」といったところです。最後はちょっと、大人の汚い打算も入って(笑)。

そういった感じで…本当に”運命的な出会い”だったと思います。初めて文章でお金をいただいたのがBCWさんでしたので、今でも当時の原稿料はとってあります。

猫:本当ですか、嬉しいなあ。将来メルカリで取引されますよ。

けどまあ、3番目が大きそうですね(笑)。

蛙:3番目は大きかったかもしれません(笑)。

ちょうど『女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました』(注:蛙田アメコ氏が当時小説投稿サイトで連載していた、のちのデビュー作)が軌道に乗っていた頃で、書籍化打診が来るか来ないかのタイミングでしたね。

猫:実をいうと、蛙田さんから応募があった時にはもう、予定数のライターさんが集まっていたので、心の中では募集を打ち切っていたんですよ。

蛙:そうだったのですか!!

猫:そうなんです(笑)。

それでも、とりあえずメールに貼ってあった「小説家になろう」 (注:日本最大級の小説投稿サイト。今やラノベ作家の登竜門。デビュー作『女だから』もここでの連載から始まった) へのリンクから、いくつか作品を拝読してみたのですね。

蛙:なろうの!

猫:そしたらもう直感しまして。「この方は外せない」と。

蛙:なんと…嬉しい限りです。ちなみに逆質問になりますが、どういったところで「これは」と思っていただけたのでしょう?

猫:やっぱり文章を楽しく書いているな、というのが伝わってきて。BCWは「言葉の楽しさ」を伝えるサイトにしたかったので、自分の求めているものとぴったり合ったんですね。

もちろん文学の素地もしっかりあって、ちゃんと笑いを取るべきところで取り、しっかり書くべきところは書いている。これは”書ける方”だな、と思ったわけです。

蛙:楽しく! そこは自分の中でも芯の部分で、いつも立ち返るところなので嬉しいです。実は”コトバと戯れる”っていうBCWのキャッチコピーも大好きなんですよ。

猫:”コトバと戯れる”は10年以上も前に、ブログをやっていた頃から使っているキャッチコピーなんです(笑)。

やっぱり文芸の土壌がしっかりありそう、というのは大きかったですね。そういう方は執筆体力ありますから。

蛙:ああ、そうですね。そういう書き手ではあるので。

猫:それで、いざ連絡を取ってみたら…返事がない(笑)。

蛙:あああああ(恥)。

猫:後から聞いたら、メールをロストされたとかで。

で、ライターさんの数は足りているし、真剣にどうしたものかと思ったのですが、やっぱり拝読した作品がめちゃくちゃ自分好みだったので、辛抱強く待ってみることにして。

我ながら”明断”だったと思っています(笑)。

蛙:ありがとうございました…あの一件が最初にあったことで、仕事用のGmailの設定などなどを真剣に見直しました…

猫:連絡だいじですからね、フリーになると…

蛙:本当に…

猫:”ほうれんそう”はなんだかんだ基本なんですけど、これが苦手なフリーの方って、意外と多いみたいなんですよ…

蛙:現在は6社くらいとお取引があるのですが、おかげさまで、”ほうれんそう”は信頼いただいております!

猫:すばらしい! 基本のキですので、続けてください!

「作家になるぞ!」と行動に移したのは、知り合いがデビューしたのが大きかったです。

猫:では本題へ入りましょう。まずは、作家になろうと思ったきっかけをお聞かせください。

蛙:はい。そのあたりの話はnoteで書いた「ほぼ日手帳で小説家になった話」に詳しいのですが、なんというか本当に小さいころから「いずれ作家にはなるとして~」という謎の確信を持っていまして…(笑)。

猫:ははは。本は好きでした?

蛙:本は好きでしたね。中学時代は月に60冊くらい読んでいました。中学が私立だったので、行きに1冊、帰りに1冊のペースで通学のおともに文庫を読んでいました(笑)。

「作家になるぞ!」と具体的な行動に移したのは、知り合いがデビューしたのが大きかったです。

猫:知り合いの方が先にデビューされたんですか?

蛙:そうなんです。スターダムを駆け上がっていて忸怩たる思いでおります。直接お会いしたことはないのですが、同人活動のジャンルがかぶっていた時期があり、Twitterで。

当時からめちゃくちゃに小説のうまい人で、カリスマ性もあったうえにコツコツと公募に挑める人だったので納得ではあるのですけどね。

それで「あ、作家っていうのはどうやら、ちゃんと目指していないとなれないぞ!」と気づきまして(笑)。

猫:ちゃんと目指す(笑)。

蛙:2017年末からはラノベ作家の鷹山誠一先生(大変お世話になっております!)に師事しているんですが…やっぱり、ぼんやり生きていたらいかんと(笑)。

そこから「最短で書籍を出版するには」というのを調べまくった結果、どうやら新人賞経由でデビューすると、応募から一年半かかる(一般文芸だともっと!)ことがわかりました。

猫:けっこうかかりますね…

蛙:そうなんです。それで最短ルートは何だろうって調べたら、「小説家になろう」だったんですね。ここだと、投稿開始から半年でデビューできる可能性があるらしいと。

猫:ほうほう。こういった話は、作家デビューを考えている方には参考になりそうです。

蛙:で、2017年の夏から本格的に「ちゃんと作家目指そう」ってなったのですが、2018年夏までの1年は実際に「なろう」の上位作品を読んでみたり、ランキングを観察して流行を知ったり、なろうで勝ち抜くための冒頭作りを考えたりと…トライ&エラーの1年でした。

そこで、例の東京医大の問題(注:医学科の入試で、女子の得点を一律に減点していたことが発覚した事件)がありまして。

猫:デビュー作『女だから』の着想元になった事件ですね。

蛙:はい。正直、あの作品は「なーんちゃって!」というか、肩の力の抜けた感じで書き始めたんです。それまで「これはウケるぞ!」と狙って書いた力作は鳴かず飛ばずで…。そんななか、2018年8月1日に東京医大の件の第一報を聞いて、そのまま勢いで投稿をはじめた『女だから、と…』には、8月20日前後には1社目の打診がきました。

猫:え、めっちゃはやくないですか。

蛙:そうなんです、めっちゃはやいんですよ! 最終的には3件の書籍化打診があったのですが、だいたい1か月の間に話が進みました。

あれは怒涛の1か月でしたね…!

猫:書き始めてから半年どころか、20日で打診が来たということ?

蛙:そうですね。だいたい7万文字を書いたところ、物語の途中の段階で。書籍版でいうと1巻のクライマックスあたりでしたかね。

猫:かなりのドラマですね。

蛙:はい、ドラマ性のある8月でした。

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後ろ向きな前向きさは、私の持ち味なので(笑)。

猫:その3社の中に最終的な1社があったのですか?

蛙:そうですね。2017年に初めて長編小説を書きおえて、その年の新人賞に応募していたのですが、その送り先こそが、デビュー作を出していただいたオーバーラップノベルスでした。

実は2017年の時も、一次選考は25点満点中24点で通過していたんですけど、2次選考で落選しまして。「あんだよーーーーーーーーーーーーーーー!」と思いました(笑)。ただ、そのときにオーバーラップさんからいただいた評価シート(選考者からのコメントシート)が、本当に丁寧で、作品をよくするための方策等のアドバイスも書かれていまして。感動しました。それで、その後たまたま「小説家になろう」でも、オーバーラップさんがWEB小説大賞を開催していたため、リベンジしたわけです。

猫:リベンジ!

蛙:あんな評価シートを出してくれる出版社さんと仕事がしたい! と思いまして。そういうわけで、オーバーラップさんを選んだ決め手は、「評価シートに感動したこと」「参加していたなろうの賞レースからの打診だったこと」、そして「リベンジ」の3点です!

猫:後ろ向きな前向きさを感じますね。

蛙:後ろ向きな前向きさは、私の持ち味なので(笑)。

猫:ではBCWに加わった2018年の8月末にはもう、デビューまで決まっていたんですね。

蛙:そうなんです。10月までは公表できなかったので、うずうずしていました…

猫:そこから本格的に、デビューへ向けて書き始めたわけですね。

蛙:はい。11月末までには、加筆修正を加えた初稿が仕上がっていたと思います。

猫:3か月で、どのくらい書いたんですか?

蛙:8月に7万字(ネット部分)、9月に3万字(書下ろし含む)、10月に3万字(同じく)って感じだったかと。プロ作家の仕事量の目安がだいたい、月に10万字ほど(文庫一冊分くらい)と言われているので、少ないほうですね。

猫:とはいえ、当時はフリーではなく在職中ですよね? きつかったのでは?

蛙:とても大変でしたね…8月はお布団で眠っていなかったです。ストイックな生活をしていたなと思いますね(笑)。

猫:当時はどういった生活サイクルでしたか?

蛙:6時半に起きて、7時に家を出て、8時~16時30分まで会社で勤務して、19時~20時に帰宅。それからジムに行ったり、家事もして、22時〜2時頃まで執筆して就寝する、という感じです。

猫:1日4時間半しか寝ていない…

蛙:1日に3000~6000文字くらいの生産でした。ぶっちゃけ、寝るのが3時になることもあったので…

猫:それを一か月続けるのは、きつそうです。

蛙:書籍化の打診が来たあとは、ネットで毎日更新するのをやめたので、8月後半からはお布団で眠れる日も増えましたね(笑)。もともと、体力はあるんですよ。

猫:体調は壊さなかった?

蛙:その段階では崩しませんでしたね。会社の昼休憩に、スマホで執筆したりもしていました。(注:実はその後、蛙田さんは体調を崩されている。そのあたりの顛末はnoteの「休職日記」に詳しい。)

猫:強い。

蛙:結果が伴っている状態で、アドレナリンがどばどば出ていたので!

猫:そういった執筆体力的なものもやはり、大切な資質ではありそうです。

蛙:体力は大事だな、と活躍されている同業者の方を見ていると本当に思います。

猫:そうですね、フリーは本当に体が資本なので。何か健康に気を使っていたりしますか?

蛙:健康保険のいいやつに入っていますね(笑)。あとサウナは意識的に行くようにしています。それからよく寝たりとか。

猫:特に運動とかはしてないのですね。

蛙:日々の歩行くらいですね、運動は。(注:インタビュー後に計測したところ、日々の歩行がだいたい1万3000歩でした)

「生存戦略~~!!」「売れてくれ!!!!」「炎上しないでくれ!!!」の三つで、頭がいっぱいでしたね。

猫:そんな状況で執筆されていた『女だから』。リリースはいつでしたっけ?

蛙:2019年の2月25日ですね。2巻が同年の8月25日で、英語版が10月と12月にリリースされました。

猫:ついに念願のデビューを果たしたわけですが、どんな気分でした?

蛙:「生存戦略~~!!」「売れてくれ!!!!」そして「炎上しないでくれ!!!」の三つで、頭がいっぱいでしたね(笑)。もうほんとそれだけでした。

猫:それはちょっとわかります…私も自分の名前を出している翻訳モノがリリースされる前日とかは、ずっと唸ってますよ。

蛙:出版前ブルーですね…書籍化作業という”妊娠期間”を経ているので、だいぶ覚悟はできているわけなんですが。

猫:聞いているだけで胃が痛くなります…「うわ、こいつめっちゃ誤訳してる」とかTwitterでばら撒かれたらと思うと…

蛙:うっわ、嫌すぎますね…私もTSUTAYAやAmazonのレビューとか、自分では見られないです…

ちなみに、デビュー作が発売するころには、先日(2020年2月24日)電子書籍で発売された『異世界に咲くは百合の花』をネットで書き始めていました。市場にリリースされたらもう何もできることはないので、どんな結果になっても、胃を痛めながら前を向こうと決めていました。とにかく次の弾を撃って、生存率を上げたかったというか。

猫:そう、創作の方はやっぱり「売らないといけない」というプレッシャーがきついのではないかと思うのですよ…売れないと2巻もないわけで、仕事もない…

蛙:はい、出版社にも在庫があふれてしまいますし…

猫:ですよねえ、想像しただけで恐ろしい…何かプレッシャー対策はされていますか?

蛙:そうですね、Twitterで「重版」や「続刊」といった単語をミュートしているのと、作家として以外の私用アカウントでは新進気鋭マンたちは軒並みブロックしています(闇)。

猫:精神衛生上よろしくないワードはなるべく目に入れないよう、気を使っていると。

蛙:そうですね、入念に気をつけています(笑)。

猫:けどやっぱり、最後は胃を痛めながら前へ進んでいくしかない!

蛙:ですね、打席に立ち続ける限りはバットを振らねばいかんのですよ!

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「金額は大きいけど支払いが遅い」という小説だけだと、リスクヘッジが難しいと感じたんです。

猫:実際にプロとして書いてみて、何か思っていたのと違ったことはありますか?

蛙:印税の振り込みが発刊後だったことくらいで…思っていたのと違ったことは、実はそんなになかったです。

とにかく”仕事”として文章を書いて、誰かに言葉を届けたいっていう気持ちがあるので、よくある「仕事部分」での幻滅は、なかったかなと思います。

翻訳だと、支払いサイクルってどうなんですか?

猫:私がよくやっているゲームやマーケティング系ですと月末締め、翌月払いが多いですね。なので作家さんよりは、長期プランが立てやすいかと思います。本の翻訳では印税ベースになるのが普通なので、そっちは作家さんに近いですね。知り合いの文芸翻訳者さんもよく悲鳴を上げています(笑)。

蛙:月末締め翌月払いですと、ライターの仕事がそうですね。そういった仕事も並行してやっているので、ライターの仕事には助けられています。ゲームシナリオのお仕事もいただいているのですが、自分で小説を書き上げるのとはまったく別の面白さがあって、めちゃくちゃ楽しいです!

猫:では今はラノベと、他のライティング案件を組み合わせているんですね。

蛙:ですね。WEBエッセイ、SEO記事、ゲームシナリオ、小説の4本立てで回しています。

猫:それはやはり、実際しばらくプロでやってみて、「小説一本ではリスキーかもしれない」と感じたのでしょうか?

蛙:そうですね…いわゆる「執筆依頼」が安定していただけるようになったら、SEOの記事の比率は減らしたいと思っていますが、「金額は大きいけれど、支払いが遅い」という支払いフローの小説だけだと、リスクヘッジが難しいと感じたんです。

あとは何より、「いただいたお仕事は全部お受けする!」というスタンスなので、色々なお話を立て続けにいただいて受けていたら、結果としてこうなりましたという(笑)。

猫:ちなみにラノベ一本で食べている方って、業界的にどのくらいの割合なんでしょうか?

蛙:どうですかね…1割もいないと思います。

猫:全体的には、ゲームシナリオなどとの合わせ技でやっている方が多い?

蛙:7割がたは何かしらの自営業や会社員、主婦と兼業しているかなと。シナリオも含めて、書き物一本っていう方が3割くらいでしょうか。

ゲームシナリオの仕事は増えていますね。ただ、ラノベ単体とは別スキルだと感じます。ラノベ作家がシナリオの仕事をやって、必ずしもマッチするわけでもないみたいです。そもそも仕事の進め方も違いますので、全部の案件に敬意をもって、真摯に向き合いたいですね。そうしないとすぐにトラブルが起きると思います。

実際、シナリオ畑のかたから「ラノベのやつらはよぉ」みたいなのを耳にする気もしますし、逆にラノベ畑の方が「シナリオのやつらはよぉ!」とか言ってるのを聞いた気もしますし…。

猫:ラノベのやつらはよぉ(笑)。

こういう縄張りめいた話ってどの業界でも聞くんですけど…みんな仲良くやりましょうよ!

蛙:本当にそう思います(笑)。

それとあと、作家さんは株をやっている方がやたら多いですね。

猫:株ですか!

蛙:あとFXも!!(注:余談ですが、蛙田は『FX』という単語を口にするだけで全力で友達に止められます。)

嫉妬と功名心をうまく燃料にできる性格というか。

猫:先ほど生存戦略的な話にちょっと触れましたが、詳しくお伺いしても?

蛙:どうやったら生きていけるのかは私が知りたいくらいですが(笑)、私がやっているのは具体的には、「無視されてもいいから営業をし続ける」「シリーズが刊行されている間に次のシリーズを当てるように努力する」「SNSを育てる」ですね。

知り合った編集さんにご連絡をするのですが、今のキャリアだと無視されるか、遠回しのお断りがほとんどなのです。

猫:営業はけっこうつらいですよね…メールしてスルーされると「返事くらいくれてもいいじゃん」と思います。

蛙:とにかく数を撃ちますね。会社でも営業をやっていたので、そのあたりは図太いんです。

猫:「次のシリーズを当てるよう努力する」というのは具体的には?

蛙:トライ&エラーですね。公募に応募する、「なろう」で新作を書く…

Twitterでの宣伝によって「なろう」のポイントが吹くことはほぼないので、とにかく読者に訴求するものを書くだけです。宣伝に力入れるくらいなら、とにかく書く。

猫:修行に近いですね…やっぱり作家は書くしかない、と。

蛙:ですね…けど、デビューまではさぼりまくっていたので、ここは仕方ないです!

ほんと書くしかないですし、カリスマ性をあげて、編集さんの目に留まりやすくなるしかない。いいものを書けば、話題になりますし、話題になればもっと読んでもらえる。

猫:やっぱり書いてこその作家さんですし、最終的には地道に書いていくしかない…と。

蛙:一作目を出して、そのまま折れてしまう方もいらっしゃると聞きます。そのあたり自分は「本当に書くのが好き」という一点においてだけは、救われていますね。あとは、嫉妬と功名心をうまく燃料にできる性格というか。

猫:その辺はやはり、実力勝負の世界の厳しさってところでしょうか。

蛙:そうですね。やはり小説を「芸術」や「アート」として捉えている傾向が強い方だと、脱落しがちになるみたいです。

ラノベは作家が宣伝活動することも求められるので、SNSのフォロワー数が大きいこともポイントになるかもと思っていまして。

猫:蛙田さんのTwitterなどを見ていると、「SNSを育てる」は得意科目なのでは?

蛙:いやあ、まだまだ(笑)。将来的には1億フォロワーを目指しているので(笑)、道半ばであります。

猫:蛙田さんのツイートは、実は私もけっこう参考にしています。訴求の仕方が巧いんですよね、嫌味なく宣伝するのが。定期的にバズらせてますし、コツを盗みたい(笑)。

蛙:ほんとですか! それは嬉しいですね。

特にラノベの場合は作家が宣伝活動をすることも当たり前に求められているので、SNSのフォロワー数が大きいのも、執筆依頼のポイントのひとつになるかもと思っていまして。

自分の「推し」と「好き」を発信し続けることに、Twitter芸人としてのキャリアをつぎ込んできたので、ここに来てそれが活きているのかもしれません。

猫:SNSのフォロワー数を増やすのって、「何マジでやってんの」とバカにされたりもしますけど、自分もすっごい重要だと思っています。初詣では「フォロワー数5000人」って願掛けしましたし、フォロワーを獲得するのにも戦略が必要じゃないですか。

蛙:そう思います。私もアカウント運用戦略みたいなハウツーを読んだりして、ちょっと勉強しています。

それと作家さんのアカウントは、新作リリースや実績公開のときにガッとフォロワー数が増えるので、とにかく実績を絶やさないことが大事かな、と。

猫:作家さんは売上のことがあるので、特にフォロワー数が重要かもしれません。

フォロワー数が1万人を超えたら、割合はともかく、仕事を受けるチャンネルは確実に増えるんじゃないかと思います。やらないよりは、絶対やったほうがいい。

蛙:私なんかはいわゆる”ツイ廃”なので、普段やっていることを、ちょっとの努力で仕事につなげられるなら儲けもんですよ(笑)。

猫:けど、なぜかバカにされるんですよね。フォロワー数を増やすこと(笑)。

蛙:バカにするなよぅ、ってかんじですよね(笑)。

『女だから』の英訳版は、気づいたら話が進んでいたんです。

猫:『女だから』の英訳版のお話は、どうやって始まったのでしょうか?

蛙:気がついたら、話が進んでいたんです。

©2020 J-Novel Club LLC, All Rights Reserved

猫:え、それはびっくりですね(笑)。

蛙:「海外出版の打診がありましたよー」というメールがたしか夏くらいに来て、「へー」と思っていたら、もう2か月ちょっと後にはリリースされていた感じですね。

猫:はえええ! ちゃんと契約してるんですよね???

蛙:はい! 日本の版元さんが間に入って、ちゃんとお金もいただいています(笑)。

猫:よかった。しかしフットワーク軽いですね、海外は。

蛙:ラノベの電子書籍出版をやられているレーベルさん(J-Novel Club)のおかげです。海外は、百合人気も高そうですね。

猫:翻訳版そのものも、かなり反響が良さそうじゃないですか! Amazonでたくさんのレビューがついたとか。

蛙:そうなんです! 海外の電子書籍版の売れ行きがよかったので、今度紙媒体でリリースされるんですけど、その事実はTwitterで知りました(笑)。

猫:なぜ、教えてくれないんでしょうね。誰が得をするのか。

蛙:サプライズでしたね。出版社にも具体的な時期とかは話が来ていないようでしたから…

ちなみに『女だから、と~』のAmazonのレビューは日英合わせて100件(①②巻合計)を超えています。これは異例です。

猫:それはすごい!

海外と日本のオーディエンスで、作品の受け止め方は違いますか?

蛙:違いますね。まず海外の読者さんは「社会問題を反映していること」を、すごくポジティブに捉えているんですよ。

百合(レズビアン)小説であることとか、東京医大の問題とか。対して日本は、そういうのを「ちょっとアレ」みたいに捉えることが多い。

猫:海外ですと、意見を述べることが社会に浸透してますからね。むしろ、意見がないとちょっと恥ずかしいくらい。

蛙:はい。それと日本は、女性と男性それぞれのジェンダーやセックスへの各種フォビアというか…そういうのが根強いんですよ。

猫:そう考えると、『女だから』はラノベでありながら社会問題をスマートに盛り込んでいますし、本質的に海外のほうが受けるのかも?

蛙:アメコ自身が洋画ばっかり観て育ちましたからねぇ…「日本のライトノベルは、奴隷とかパンチラとか平気で出てきてちょっと恥ずかしいとか、社会問題を反映している作品はないとか言われているけど、『Sexiled』をみろ!」みたいに、引き合いに出されているツイートを複数見ましたね。

猫:そうそう、この英語版のタイトルがいいんですよね! 

このタイトルも、けっこう大きかったんじゃないかしら。

蛙:そうなんです! 最初に案をいただいたとき、度肝をぬかれました。

おかげで「今からセックスするから、とルームメイトに部屋を追い出される」という状況を表すスラング(sex+exiled=sexiled)があるんだと知りました(笑)。

猫:キャッチーかつインパクトありますよね。天才の所業です。

蛙:ほんとに! ありがとう、molly lee(注:『Sexiled』の翻訳者さん)!!!

猫:今後はもっと海外で売りたいなーとかいう野望はあったりします?

蛙:やっぱり『オーシャンズ8』とか『ゴーストバスターズ(リブート版)』とか大好きなので、そういう文脈の作品を日本でも海外でもバチバチに当てていきたい、という野望はあります。

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』みたいに、ぽこっと海外で映画化されてほしい(笑)。

猫:『女だから』はけっこう映像化に向いてそうですけど。フォーマットがあって、そのつど時事ネタを盛り込めるじゃないですか。

蛙:ですです。ぜひ、そうしていただきたい(笑)。

現状、日本では全2巻完結という形なので…今後何か起きて3巻を出すことになっても、その時に起きている時事問題を取り入れて書けそうですね(笑)。

猫:現状ではそうなんですか…面白いラノベなので、勿体ないなあ。

そういうわけで、ターニャたちの活躍をもっと読みたい方は、今からでも紙版の『女だから』を買いましょう!!

とにかく色々やって、自分の力を発揮しやすい土俵を見つけて、全力で潜り込んでいくしかないですね…

猫:最近のお仕事についてお伺いします。

マンション購入がテーマのラノベをWebで連載されていますが、あちらはどういった経緯で書くことになったのでしょう?

というのも「蛙田さんと不動産」があまり、結びつかなくて(笑)。

蛙:カーサミアさんの『腐女子、家を買う。』ですね。あちらはですね、Twitterのフォロワーさんのお勤めされている会社です(笑)。

© Copyright 2019 カーサミアクラブ

そこからいただいたお仕事ですね。ほんとにありがたい……。

猫:人脈かッ!

蛙:『レ・ミゼラブル』観劇友達です。

猫:人脈も、生存戦略のキーポイントですよね。

蛙:ですね、人当たり大事かと。あとTwitterを炎上させないことも。

猫:冷静でいらっしゃる。

先日電子書籍でリリースされた『異世界に咲くは百合の花』は、どうでしょう?

蛙:『百合の花』は「なろう」で6000ポイントを獲得した段階で、電子書籍の原稿募集をしている会社に売り込みました。

『女だから』の長期シリーズ化は難しそうだと判断して、キャリアに穴を作らないためにも、早期から営業をかけた感じですね。百合専門レーベルさんなのも魅力でしたし。

猫:早めに動いたんですね。そういった会社がいくつかあるんですか?

蛙:電子書籍は、個人でやっている”半アマ半プロ”みたいな出版社が多いので、けっこうありますね。

『百合の花』の出版元のGL文庫については、Twitterで見かけてホームページを見に行ったら、原稿募集があった感じです。

猫:では今後もそういった出版社を、有力な取引先として考えていると?

蛙:うーん…まだわからないです(笑)。

ただ、「半年以上キャリアに穴が開く(ファンに対して「これやったよ」という実績を出せない)」ことは避けたいので、状況を見つつですね。正直に言えば、ゲームシナリオやSEO記事のお仕事の方が、電子書籍単体よりも実入りはいいので……。

猫:センシティブな話がさらっと出ましたね(笑)。

けど、わかります。フリーになりたての頃って、色々やりながら、とにかく続けていくしかないんですよね…続けないことには先も見えないので。

蛙:そうなんです。とにかく色々やって、自分の力を発揮しやすい土俵を見つけて、全力で潜り込んでいくしかない……。

猫:やりながら分かっていくこともありますし。

蛙:はい、日々是大発見ってかんじです。

“蛙田節”と呼ばれるような「唯一無二な持ち味」を目指していきたいものです。

猫:そいういえば、こないだとあるラノベの受賞が確定したそうで?

蛙:「なろう」で連載している『突然パパになった最強ドラゴンの子育て日記』が、第8回ネット小説大賞の期間内受賞(注:本選考に先立って受賞が確定すること。書籍化が確約される)に選ばれました。キャリアで初めての「男性主人公」の物語です。

とっても強くてめちゃくちゃ優しいドラゴンが、人間の女の子を育てることになり……?という、種族を超えた家族愛をテーマにした明るくてほっこりする物語です。

猫:リリースはいつ頃でしょうか?

蛙:まだ詳しいことはわからないですが、今年中にはお届けできるといいなぁ。

これまで色々と書いてきて、自分の持ち味が”優しくて強い物語”であることが見えてきたので、百合以外の作品でも、そういった部分をゴリゴリに出せればと思っています。

猫:確かに、蛙田さんの本は読むと元気になれますね。

蛙:はい、そういう物語をもっと届けたいのです!

それと2020年は、ラノベ以外の文芸系の執筆もさせていただいて。ワクワクしてます。”蛙田節”とでも呼ばれるような「唯一無二な持ち味」を目指していきたいものです。

猫:おっと、さらっとサプライズ発表がありましたね!

蛙:実はそうなんです! ただ、まだ予定の段階なので…刊行が確定しないと仄めかせられないという。ビターな中に優しさと強さが滲みだすような、いい作品になるといいなと思ってます。

猫:ともあれ、それは楽しみです。今年も波瀾万丈の一年になりそうですね。

蛙:はい。BCWで書いているような抑えた筆致のものから、元気いっぱいのラノベまで、色々な顔が見せられたらいいなと!

11月には友人とリーディングライブ(朗読劇)をやるので、それも楽しみです!

猫:それとそう、個人的には蛙田さんの「転生厨房☆岡田以蔵〜なんでも斬れるチート剣、ただし食材に限る〜」という作品がめっちゃ好きなんですよ。

あの人斬り以蔵が異世界へ飛んで料理の腕を振るう、というお話なんですが(笑)。

なんでこれ出版されないんですかね? メチャクチャ面白いのに。

蛙:あれも早く完結させたいのですが、今のところポイント的に厳しくて…

猫:ああ、やっぱりポイントが大切なんだ……

蛙:「なろう」の書籍化のボーダーラインは通説では”3万ポイント”らしいのですが、たとえ低ポイントでも、コンテスト等で日の目を浴びれば…ってところですね。

ちゃんと私が量を書ききれれば、営業もできるんですが…今のところ何社か出したんですけど、見事に「岡田以蔵」だけ無視されますね(笑)。

猫:みんな見る目ないな! 銭があれば、とら猫出版で出したいですよ…

蛙:いや、あれは本当に面白いと思っているんですよ!! 自分の作品の中で、今一番書籍化してほしいやつです(笑)。

猫:私はあれが一番好きです。出版社の皆さんは今のうちに権利を買っておくんだ!

蛙:ありがとうございます、以蔵さんへの愛を感じてください(笑)。

猫:最後に何か、言っておきたいことはありますか?

蛙:蛙田アメコ、お仕事募集中です!!!!!!!!!!

【ゲストプロフィール】
蛙田アメコ:ラノベ作家。ツイ廃。代表作『女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました(1~2巻)』『異世界に咲くは百合の花』など。カーサミアさんでWebラノベ『腐女子、家を買う。』を連載中。デビュー作シリーズの『女だから』は英語翻訳版もリリースされている。お仕事どしどし募集中!執筆依頼はこちらから

 

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