【映画レビュー】限界オタクによる『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』感想~やっぱりファンタビは愛の話だった~

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(by 安藤エヌ

前作である『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』から4年。

ついに最新作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』が公開され、ワーナーの試写会イベントでいち早く観てきた私です、こんにちは。息してません。

『ファンタビ2』については以前、こちらの記事でも書かせていただいたのですが、この時はだいぶ己のオタク心を抑え、あくまで映画好きライターとして俯瞰したレビューを書きました。しかし、最新作はそんな悠長なことを言ってる場合ではありません。『アナ雪2』の記事と同じくらいのテンションで書かないとのたうち暴れまわってしまうくらい、今作はオタクの心にぶっ刺さりすぎてしまいました。今から観に行くオタクの皆さん、覚悟していってください。これは『呪術廻線』における五条悟と夏油傑のアレソレを観た時と同じ衝撃です。呪術知らんけど、どっちも観た傷だらけの猛者が言ってた。

邦題になっている『ダンブルドアの秘密』に深く関わってくることになる闇の魔法使い、ゲラート・グリンデルバルド役がジョニー・デップから、今回から“北欧の至宝”と称されるマッツ・ミケルセンに代わり、あまりのハマり役っぷりに白目を向いて垂直に倒れる観客続出……これが、今回の死因(の一端)です。

代役を務めることにプレッシャーを感じながらも「ジョニーの真似をするのは創作的な自殺になりますから、私は私なりのアプローチをしてグリンデルバルドを演じたいと思います」と話したマッツ。

いや、もうあなたにしか醸し出せない空気感(という名の色気)ムンムンでした。

お恥ずかしながら、私は今回のグリンデルバルド役でマッツに初謁見をしたわけですが、ファンから言わせると彼の“孤独を感じるまなざし”は一級品だそうで、それは人気ドラマシリーズ『ハンニバル』でも健在だとか。そうか、ハンニバル、観なきゃな。あと『アナザーラウンド』も観たい。完全にマッツ沼にはまってしまった私。あの瞳からは逃れられない……あれは“孤独を知っている瞳”だ……。

洋画界きってのイケオジであるマッツと、そしてジュード・ロウが甘美に織り成す上質なロマンス。ええ、まごうことなくファンタビの話をしています。そう、今作はマッツ演じるグリンデルバルドと、ジュード演じるダンブルドアの愛とか未練とか執着とか、そういうオタクが大好きな要素てんこ盛りのストーリーなのです。

今作で本格的にメインストーリーに関わってくることになる呪文学の教師、ユーラリー役のジェシカ・ウィリアムズいわく、今作は「ダンブルドアが厄介な元カレに悩まされる映画」らしいのですが、そんな魔法わくわく映画があってたまるか。2人の確執はハリー・ポッターの原作でも言及されており、それを知っているウィザーディング・ワールド・オタクならほい来た!!!!と膝を叩き喜ぶかと思いますが、はたして一般人はおじさん2人の濃ゆい関係性を見せつけられてどんな気持ちになるんだろうか、とこちら側のオタクは思う所存です。カップルなら愛が加速しちゃうかもしれないですね。

詳細なことはネタバレになるため言えないのですが、とにかく2人の間に流れる空気がラストノート:ムスクって感じなのです。絶対ムスク。それだけは譲れない。深追いしてしまいたくなる、ずっと嗅いでいたい残り香のような匂い……2人だけの世界、2人で交わした誓い、ふたりよがりだった若かりし頃の記憶、取り戻せない過ち。ほら……そういうの、(オタクは)みんな好きでしょう……?

作中でダンブルドアがグリンデルバルドのことを訊かれ、「愛ゆえか、それとも別のものか、解釈は委ねる」と言うシーンがあるのですが、いいのかい……そんなに簡単にオタクに解釈を委ねちまって……とほくそ笑んだのは言うまでもないです。オタクは地獄の果てまで考え込んで、1人で机を叩いて悶絶したり苦しんだり嗚咽したりするのが得意なので、既に彼らのことを毎日考えてしまっています。楽しい。

そして今作のキーアイテムともいえる“血の誓いのペンダント”。これは2人が青年期に「共に善良な世界をつくろう」と志を共にした時、互いに戦わないことを誓ったペンダントで、ダンブルドアがこれについて「若造の魔法だが、非常に強力だ」と言うシーンもあります。互いの血が入ったこのペンダントこそが2人を長年縛り付け、甘やかな過去の痛みを“確かに今もそこにある”現実のものとして存在させているのです。

これが!!なんと!!映画公式グッズとして発売されています!!お値段たったの4000円。これは破格としか言いようがありません。たったの4000円で私たちは2人の““ゴドリック谷のふもとで共に過ごしたあの夏”を疑似体験でき、かつ彼らにとって呪いとも愛おしい傷ともいえる“概念”を身に着けることができます。これは買うしかない。

その前にまず、絶賛上映中の『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』を観て、彼らの愛とかどうとかを思う存分浴びましょう。ロマンスをたしなむ紳士淑女の皆さんの心に必ずや、ダイレクトアタックするはず……!

そして屍になっているオタクから一言。ファンタスティック・ビーストは愛の話なんです。以上。俺の屍を越えていけ。宜しくお願いします。

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(C) 2022 Warner Bros. Ent. (C) J.K. Rowling
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』公式サイト

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この記事を書いた人

安藤エヌのアバター 安藤エヌ カルチャーライター

日芸文芸学科卒のカルチャーライター。現在は主に映画のレビューやコラム、エッセイを執筆。推している洋画俳優の魅力を綴った『スクリーンで君が観たい』を連載中。
写真/映画/音楽/漫画/文芸