考察

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【映画レビュー】『流浪の月』~体も、心も、そのすべては持ち主だけのものなのに、そんな当たり前の尊厳が簡単に踏みにじられる世界で、私たちは生きている

(by 碧月はる) 人は、自分の見たいようにしか物事を見ない。事実はひとつだが、どの立ち位置から眺めるかで、受け止め方は大きく変わる。見たいように見て、信じたいものを信じる。本来それでいいのだと思う一方、その裏側で絶望に苛まれる人がいるのなら、それはやはり間違っている、とも思う。 善意と悪意の境目は […]

【映画レビュー】失敗作『シン・ウルトラマン』〜現代的に描く視点が大局に依存した閉鎖性〜

(by 葛西祝) 『シン・ウルトラマン』ははっきりとした失敗作であって、原作の『ウルトラマン』がこんな風にリメイクされるんだって偏愛が無ければとても観ていられない映画だった。少なくとも自分にとって、失望の多くは『シン・ゴジラ』のように原点を現代に解釈し直す試みがすべて空回りに終わっていたことだ。 “ […]

【映画エッセイ】『青葉家のテーブル』~大人はもっと、ダサい自分を子どもに見せていい~

(by 碧月はる) 北欧のインテリアが好きだ。シンプルで木肌の温もりが感じられるものや、焼き物のぽってりとした趣。色は白、もしくは青を基調としたものに惹かれる。見た目だけではなく、使い勝手の良さも外せない。そんな私の好みを熟知している友人が、とあるブランドを教えてくれた。 「このお店、はるさん好きだ […]

【映画エッセイ】あたしゃ、ケネス・ブラナーの魅力を語らせてもらうよ!

(by こばやしななこ) ケネス・ブラナーをご存知だろうか?最近では『テネット』の武器商人として知っている人も多いはず。私と同世代のアラサーたちには『ハリー・ポッターと秘密の部屋』のロックハート先生といえば通じるだろうか。 物心ついた時からケネス推しな私は、彼の監督作『ベルファスト』がアカデミー賞の […]

【推しの一作】『30までにとうるさくて』は決して“女性のためのドラマ”ではない

(by みくりや佐代子) 冬模様に変化した街で、ショートブーツのファスナーを上げ切っていない人を二度見た。一度はバスの車内、一度はデパートの地下の総菜売り場だった。かかとから上へ伸びるファスナーは半端な位置で留まり、足首の部分の黒い皮が外側に開いていた。 それを見つけた時、「あ、私だ」と思った。私と […]

【ぼくが映画に潜るとき】第4回:『トムボーイ』〜「男の子」のふりをして過ごした、あのころのこと〜

(by チカゼ) 小学4年生のとき、ぼくは通っていた体操教室で約半年間、「男の子」のふりをしていた。運動音痴の双子の弟が教室への出席を拒否し始めたことが、そのきっかけだった。 ぼくはそのころ、しょっちゅう男の子に間違われていた。短い髪と、Tシャツに短パン。そういう服装を好むだけの「ただのボーイッシュ […]

【映画エッセイ】『パワー・オブ・ザ・ドッグ』〜男らしさの犠牲者〜

(by こばやしななこ) なぜ、彼はああなってしまったのだろう。なぜ周りから愛されないふるまいばかりするのだろう。ドスドスと床を踏み鳴らす祖父の気配を感じながら、息をひそめいつも考えていた。なぜ?と。 両親が離婚してから数年、母と祖父と一緒に暮らした。何年一緒に暮らしても家族だとは思えなかった。一緒 […]

【映画エッセイ】『猿楽町で会いましょう』〜若さの本当の価値と取り戻したいもの〜

(by みくりや佐代子) 「若さ」を恥ずかしいと思うたちだった。なぜか。この国は、若いこと、幼いことに価値があるとされているからだ。とりわけ女性は。 若い女性の肌や髪が画一的な「美しさ」とされ、販売促進に当然に使われることを気味が悪いと思った。まるで年を重ねるのは悪そのもののようであった。 以前、男 […]

【ぼくが映画に潜るとき】第3回:『リリーのすべて』〜“女の子”でなくなっていくぼくを、夫はどんな気持ちで見つめていたのだろう〜

(by チカゼ) 姿見の前で背広を脱ぎ捨てネクタイを外したアイナーは、内腿にペニスを挟み込んで「女性」に擬態する。「リリー」としての自身の裸体を指でなぞり、ひたすらに、食い入るように見つめる。その恍惚を、ぼくはたしかに知っている。己のものとして。 1930年、世界で初めて性別適合手術を受けたトランス […]

【映画レビュー】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』がよすぎた件〜予習範囲にご注意!〜

(by 蛙田アメコ)(注:本稿には段階的なネタバレが含まれます!) あーーー、よかった。めっちゃよかった、本当によかった。 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』めっちゃよかった!! この記事は多大なるネタバレを含んでおります。ただし!!今作はマーベル映画としては、少々特殊事情であります。そのため […]

【推しの一作】『キャロル』と洗練された退屈な街

(by 隷蔵庫)(注:本稿では一部、物語の核心に触れています) 2015年の冬、映画『キャロル』が公開された。ポスターに印刷されたケイト・ブランシェットとルーニー・マーラと、美しいキャッチコピーが目を引く。 映画はとてもよくできている。原作の空気感やメッセージを十分伝えきれていると思う。フィルムのよ […]

【映画エッセイ】“ボクたちはみんな大人になれなかった”のだろうか?本当に?

(by みくりや佐代子) 友人と会うたび、私達はどうしてこうも昔話でいつまでも語り合えるのかと笑ってしまう。 変わった口調のあの先生、エキサイティングな喧嘩を繰り広げる派手なカップル、地元から輩出されたアスリート……。話題が尽きないのではない、限られた同じ話題を繰り返すことに飽きないだけだった。 学 […]

【ぼくが映画に潜るとき】第2回:『ブロークバック・マウンテン』〜男女がいちゃつく改札前で、ぼくと彼女は手さえ繋げなかった〜

(by チカゼ) 大学生のとき年上の社会人の女性と、少しだけ付き合っていたことがある。いわゆるTwitterの裏アカがきっかけで、初めて会ったその日にホテルに行った。告白は、していない。ぼくも彼女も「付き合おう」「好きだよ」などという明確な約束は、最後まで口にしなかった。違う、できなかったのだ。 彼 […]

【ぼくが映画に潜るとき】第1回:『君の名前で僕を呼んで』〜どうしようもなく魅力的な「大人」について〜

(by チカゼ) 舞台は80年代の北イタリア、夏。17歳のエリオは両親と滞在している別荘で、美術史の大学教授である父に招かれた24歳の大学院生・オリヴァーと出会う。繊細で線の細いエリオをティモシー・シャラメ、陽気で自信家で筋肉質なオリヴァーをアーミー・ハマーが演じている。華奢で儚げなシャラメに対して […]

【映画レビュー】『空白』〜運命の行き着く果てにある光〜

(by とら猫) 命は重い。 なぜかというと、命は取り替えがきかないからだ。盗まれたものは買い直せばいいし、壊されたものは修理すればいい。けれど命だけは何をもってしても代替できない。命が失われるとはすなわち、存在の消滅である。誰かの存在を決する権限が、人間にあるとは思えない。それは神の領域だ。ゆえに […]

【乙女ゲームレビュー】『灰鷹のサイケデリカ』〜魔女に向けられた篝火が照らす数奇な運命〜

(by すなくじら) 女性向け恋愛シミュレーションゲーム、通称「乙女ゲーム」におけるの最大の魅力は、わたしたちプレイヤーが“神の視点”から登場人物の生き様を追いかけることができる点にあると考えている。 現実世界においてわたしたちは、自分の物語を紡ぐことを宿命としてこの世に生を受ける。自分は誰の生まれ […]

【名画再訪】『スタンド・バイ・ミー』~生と死のコントラストに、眩く光る友情〜

(by 安藤エヌ) 先日、スティーブン・キング原作の映画『スタンド・バイ・ミー』を観た。  映画好きならば必ず観ないといけない作品と思いながら、なかなか機会がなく、観れずにいた。名作を見届けたあとにある、偉大な感動へのほんのわずかな畏(おそ)れがあったのかもしれない。しかし先日、ちょうど金 […]

【映画レビュー】『シンデレラ』〜魔法使いがビリー・ポーターでなければならない理由〜

(by こばやしななこ) 「たとえ辛い時も信じていれば夢は叶うもの」 ディズニーアニメ版『シンデレラ』が伝えるメッセージはこれに尽きる。描かれているのはどんな境遇にあっても卑屈になることなく、夢を諦めず優しく誠実でいる人の魅力だ。私は何度も何度も「たとえ辛い時も信じていれば夢は叶うもの」とシンデレラ […]

【映画レビュー】『ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている』単なる成功譚ではなく、10代の痛みと喜びに満ちたドキュメンタリー映画

(by こばやしななこ) 時代のアイコンになったビリー・アイリッシュ 洋楽をあまり聞かない人でも、ビリー・アイリッシュの名は知っているのではないだろうか。2019年に発売されたデビュー・アルバムは18カ国で1位になり、翌年のグラミー賞を取りまくった。2001年生まれの少女は、世界に注目され時代のアイ […]

【映画レビュー】『キネマの神様』~創り手たちの想いをのせて、スクリーンから飛び出すように神様が手を伸ばす

(by 碧月はる) 2020年、日本映画史を彩る松竹映画は100周年を迎えた。 大きな節目を記念して制作された作品『キネマの神様』。こちらの作品は、コロナウイルスによるパンデミックの影響を受け、幾度となく困難に見舞われた。まず、撮影の半分を終えた3月末に、ダブル主演を務めていた志村けんさんがご逝去。 […]

【映画レビュー】“今”を特別にしてくれる傑作『イン・ザ・ハイツ』 ~ミュージカル映画って、いいなぁ〜

(by 安藤エヌ) 8月某日、私は非常にくさくさしていた。 仕事の悩みが堂々巡りになりつつあったのと、コロナ禍で友達と会う機会も少なくなってストレスを発散することができなくなってしまっていたのが重なり、精神衛生は最悪だった。私の場合、こうなると大好きなエンタメにもなかなか手を伸ばせなくなるので厄介だ […]

【名画再訪】「愛がなんだ」と吐き捨てるように言ったあの子へ

(by みくりや佐代子) 愛がなんだ。愛がどうした。 そう言えるだけの威勢があるならばいい。他人がどう言おうと自分の差し出すこれこそが愛なのだと、言い切れるほどの意地があるならばいい。たとえそれがどんなに非常識で、理解されにくいものだとしても。 映画「愛がなんだ」の最も不思議なのは、盲目的な恋に溺れ […]

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