【映画レビュー】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』がよすぎた件〜予習範囲にご注意!〜

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(by 蛙田アメコ)(注:本稿には段階的なネタバレが含まれます!)

あーーー、よかった。
めっちゃよかった、本当によかった。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』めっちゃよかった!!

この記事は多大なるネタバレを含んでおります。
ただし!!
今作はマーベル映画としては、少々特殊事情であります。
そのため、どうしても!!
まだ観ていない人に伝えたいことがあります!!!

というわけで。
第一段階として「今作を100%楽しむために必要な情報だけど、勘のいい人にとってはネタバレだから気をつけてほしいゾーン」。
第二段階として「ネタバレ全開ゾーン」

を設けようと思っております。

***

警告

警告

ネタバレ第一段階

「今作を100%楽しむために必要な情報だけど、勘のいい人にとってはネタバレだから気をつけてほしいゾーン」

突入

します。

──……。

──さて。
こういうのは、言葉を重ねるほどに「ああ、そういうこと?」と察知させてしまうものです。

「ネタバレじゃないですよ〜? でも、あ、ここ伏線!!」
「○○○(大切なセリフなので2回言いました)」
「詳しくは言わないけど、ここ覚えておいて!(微笑)」

みたいな、主にニコニコ動画のコメント欄などに生息しているたいへん厄介なネタバレ匂わせと長年戦ってきた自分としては、たった一言だけでこのゾーンは終わらせたいところであります。

このネタバレは、『予習範囲』についてです。
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)、いわゆる『アベンジャーズ』シリーズは全作品追いかけているから予習はいつでも大丈夫!! という人は気をつけてください。

本作品は、「SONY配給のスパイダーマンの続編」でもあります。
2000年代に始まる『スパイダーマン』シリーズが予習範囲に含まれます!
もちろん、初見でも楽しめる映画ではあるのですが、以下を事前に視聴しておくことをオススメします。

◆予習が推奨される範囲◆
『スパイダーマン』シリーズ各種
『ドクター・ストレンジ』シリーズ

こちら、MCUの続編モノの中ではかなり少ない視聴本数となっております。
また、『スパイダーマン』シリーズはAmazonプライム等で視聴できます。

やたらとスパイダーマン人気の高いとされる日本。
私は熱心なスパイダーマン推しではないけれど、やはり世代的にはアメコミといえばスパイダーマン、スパイダーマンといえばアメコミヒーローってなものなのです。

***

警告。

警告。

第二段階、「ネタバレ全開ゾーン」に突入します。
第二段階、「ネタバレ全開ゾーン」に突入します。
第二段階、「ネタバレ全開ゾーン」に突入します。
第二段階、「ネタバレ全開ゾーン」に突入します。

──……。

………………。

いや、最高でしょ。
今から、「MCUにおいてマルチバースを本格的に描く作品の主人公は、他ならぬ我らが親愛なる善良な隣人、スパイダーマンでありピーター・パーカーでなくてはならなかった」という話をしようと思います。

『スパイダーマン』シリーズの昔からのファンはもちろん、MCUのトム・ホランドでスパイダーマンに出会った人も大満足の一作でした。

テーマは救済。
ヴィランを助けようと、自分の大切なものを奪ったヴィランであろうとも、ピーター・パーカーというヒーローは助けようとするのです。

2002年からはじまる、サム・ライミ版といわれるトビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』シリーズは「えー、アメコミ映画ってオソマツな感じなんでしょ?」と嘲笑していた同級生たちの度肝を抜き、みんながピーター・パーカーに夢中になっていました(ひねくれものの私は、数年後にレンタルビデオ屋のお世話になりました)。

2012年のアンドリュー・ガーフィールド主演の『アメイジング・スパイダーマン』は2作目までしか制作されていないものの、キュートな風貌のピーター・パーカーに空前の「ガー君ブーム」が巻き起こったものです。

そして、SONYが映像配給に関わる権利を取得していたためにMUCアベンジャーズへの参加は絶望的であると思われていたスパイダーマンの、アベンジャーズ電撃参戦。
これは記憶に新しく、トム・ホランドの超早口でまくしたてられる若者言葉の強烈さとあいまって新たにスパイダーマンファンが増えました。

その三部作のラストを飾るのが、今回の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。原題も『Spider-man: No Way Home』、直訳すれば“帰り道はない”といったところでしょうか。

並行世界マルチバースからやってきた、スパイダーマンにゆかりのある多くのヴィランと……そして、各世界のスパイダーマン本人。

その彼らが、元いた世界に戻るための帰り道を──そして、その世界で死すべき運命にあるヴィランたちがもう一度やり直せるようになるための、最善の道を模索するピーターと仲間たちの物語なのです。

ノー・ウェイ・ホームというサブタイトルに対する、なんたる皮肉!!
シビれます。

そんなピーターは、ヴィランたちや並行世界のピーターたち(と、ついでに宇宙から来たアイツ)を元の世界に返すことに成功します。彼らの帰り道を作ったのちに……ピーターは、恋人や友人どころか世界中のすべての人から忘れ去られて、帰るべき場所を失ってしまうのです。No Way Homeです。これもなんたる、皮肉なことか……くぅ……!!

しかし、しかしですよ。
我らが善良なる隣人は、絶望に打ちひしがれることはありません。

誰も自分のことを知らない世界で、それでも微笑んで、自分を忘れてしまった恋人と親友を守るのです。

ピーターの養母であるメイおばさんは、本作でいくつもの印象的な言葉を残します。

MCUに通底するテーマとなった、「大いなる力には大いなる責任が伴う」。
そして、彼女の最期に刻まれた言葉である「全ての人に、救いの手を」。

これらがピーターに受け継がれた、スパイダーマンのヒーローとしての信念になっていることがラストに打ち出されます。たとえ人は死んでいなくなってしまっても、信念まで消え去ることはない……と。
(余談ですが、トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン2』は、仕事をクビになりそうなピーターが「もう一度チャンスを……」と懇願する印象的なシーンからはじまります。そのトビーピーターが、ヴィランたちにもう一度チャンスを与えるために駆けつけるなんて──!)

トニー・スタークの信じた「大いなる力には大いなる責任が伴う」。
メイおばさんの遺した「全ての人に、救いの手を」。

この信念が、ピーターにとっての帰る場所になっているんです。
どんなに世界が冷たくとも、ピーターには隣人たちがいる。

それは、無限に広がるお隣のマルチバースにいる自分自身であったり。
あるいは、かつて恋人だったり親友だったりした人の生きる世界であったり。

ピーターは、今日もまた親愛なる我らが隣人として、誰でもない、他の誰でもないただのスパイダーマンとして街を疾走するのです。

そう、ピーターは知っているのです。
帰り道を知っているから、彼は微笑んで前を向けるのです。きっとピーターの向かう先には温かい世界があるのだと、信じずには居られないのです。
ええ、ええ、この映画のサブタイトルはKnow Way Home(帰り道はわかってる)であり、Now Way Home(帰り道の途中)なんじゃないかと私は思うのです。

だからこそ。
MCUが並行世界マルチバースについて、本編映画で初めて本格的に描くのはスパイダーマンが主人公の物語であるべきだった。

お隣の世界からやってきた侵略者たちを、ただ追い返して死なせることができたはずのピーターは、そうはしなかったのです。
そのことを、ゴブリンは嘲笑し、実際にピーターは取り返しのつかないものを失ってしまいます。それでもヴィランを許し、救済しました。今回MCUの世界にやってきた『スパイダーマン』シリーズのヴィランたちは、それぞれがただ幸せになりたかった平凡な人でした。

彼らもまた、スパイダーマンにとっての親愛なる隣人だったのです。

救済。
そういう意味では、絶対に語らなくてはいけないシーンがもうひとつ。
『アメイジング・スパイダーマン』で、ピーターは大切な恋人を目の前で失ってしまいます。彼の伸ばした手が届かずに、最愛の人を失ってしまったアンドリューピーターが、ついに今作では(アメスパとまったく同じ状況で!!)“スパイダーマンの恋人”である少女を助けることに成功します。

今回こそ!
今度こそ!
アンドリューピーターの救いの手が、間に合ったのです!!

もう号泣ですよ。
こんな救い、こんな救済、ありますか?
あのとき助けられなかった恋人を救う経験を、アメスパのピーターにさせてあげたい……映画ファンならば誰もが願う光景を、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が見せてくれたのです。

こうしてヴィランだけではなく、私たちが過去に出会ってきたピーターたちをも救済してマルチバースとの最初の邂逅劇は幕を閉じたのです。

ありがとう、ありがとう……本当に感謝しかない……。

というか、ほぼ俳優を引退しているトビー・マグワイアを引っ張り出してきて、(当時のインタビューを読むに、ほぼトラウマになっていたであろう)スパイダーマンを再び、あんなに見事に演じてもらうとか……マーベルのキャスティング担当はいったい何者なんだ……!

(ドクター・オクタヴィアスがバケモノではなく人間として、彼の本来の善性を取り戻して、スパイダーマンたちを助けてくれる胸熱展開についてはまた別の機会に!)

***

並行世界が、自分たちの世界を侵略してくる。

さあ、別の世界の自分たちと戦うのか。
それとも別の道を模索するのか?

そんな残酷な選択肢がポップアップするこのテーマは、「汝の隣人を愛せよ」という哲学を背負い、親愛なる善良な隣人として街を救うヒーローであるスパイダーマンが最初に対面するのにふさわしかった。

きっとお隣のマルチバースとの門が開いても、上手くいく。
酷いことにはならないでいられるはず。

だって、その世界にも親愛なるスパイダーマンはいるのですから。
ピーターはきっと、私たちの善き隣人であるのですから。

あーーーー、本当に面白かった!!!!

++++
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映画『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』公式サイト

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この記事を書いた人

蛙田アメコのアバター 蛙田アメコ ライトノベル作家

小説書きです。蛙が好き。落語も好き。食べることや映画も好き。最新ラノベ『突然パパになった最強ドラゴンの子育て日記〜かわいい娘、ほのぼのと人間界最強に育つ~』3巻まで発売中。既刊作のコミカライズ海外版も多数あり。アプリ『千銃士:Rhodoknight』メインシナリオ担当。個人リンク:  小説家になろう/Twitter/pixivFANBOX