とら猫

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【映画レビュー】『空白』〜運命の行き着く果てにある光〜

(by とら猫) 命は重い。 なぜかというと、命は取り替えがきかないからだ。盗まれたものは買い直せばいいし、壊されたものは修理すればいい。けれど命だけは何をもってしても代替できない。命が失われるとはすなわち、存在の消滅である。誰かの存在を決する権限が、人間にあるとは思えない。それは神の領域だ。ゆえに […]

【カルトの世界】世界で最も純粋無垢なぼかしが舞い踊る『人魚伝説』

(by とら猫) 体当たりの演技、とはよく言われるけれど、その定義を知りたい方はググったり辞書を引いたりするより、1984年公開の『人魚伝説』を観るのがてっとりばやい。 大河ドラマでデビューを飾った可憐な女優、白都真理は本作において、「体当たりの演技」という表現がぴったりどころか生易しく思えるほど、 […]

【エッセイ】締め切りに関するある疑惑

(by とら猫) 最近ひそかに疑っていることがある。 締め切りは生きているのではないか、ということだ。 だってそうだろう。それまであんなに遠くに、地理的にはハワイあたりにあった締め切りが気がつくと大島沖まで迫っていて、あれよあれよという間にみなとみらいに上陸してゴジラのごとく暴れ回って、こちらは髪を […]

【番組レビュー】『タイガーキング』〜最後に虎を食い物にするのは誰か〜

(by とら猫) 面白い。めっさ。 が、本作を“ドキュメンタリー”と呼ぶのには抵抗がある。実録として扱うには作為を感じさせる演出や、編集が、目につくからだ。トラビジネス界の大立者“タイガーキング”ことジョーの描き方も、その怨敵たるトラ保護団体の創設者キャロルの描き方も、『タイガーキング』は制作者たち […]

【ゲームレビュー】『アンリアルライフ』〜打てば響くことで伝わるもの〜

(by とら猫) 素晴らしいゲームだった。いや作品だった。 こうした素晴らしいタイトルに触れるとき、私はいつも思う。これをゲームと呼んで良いものかと。ゲームの指し示すものが多様化し、教育や医療にも応用されている昨今ですら、ゲームと聞くや脊髄反射的に「子供の遊び」と結論づける人は少なくない。 少なくと […]

【エッセイ】映画が戻ってくるその日まで、我は対岸で適応に耐える

(by とら猫) 人間は適応する。遅かれ早かれ。 悪いことではないと思っていた。むしろ前向きに捉えていた。適者生存という言葉もある。適応とは人間にとって、移り変わりの激しい社会でサバイブしていくためのツールであり、適応があるからこそ、人は先へと進んでいけるような気がした。 けれど、今は適応するのがつ […]

【この一曲】死すら歌の力に変えてしまうフレディの凄みに総毛立つ、Queen“The Show Must Go On”

(by とら猫) 一番好きなクイーンの曲を選べ、という問いは自分にとって、一番好きなビートルズの曲を選べ、という問いと同じくらい即答するのが難しい。 フレディに敬意を表するのであれば、「狂気と天才は紙一重」の凄みを体現するソングライティング能力に度肝を抜かれる“March of the Black […]

【インタビュー】ラノベ作家・蛙田アメコ~プロデビューから続編や翻訳版の出版、Web連載と続いた怒涛の一年を振り返って~

(聞き手:とら猫) 当BadCats Weeklyでも、高い創作スキルに裏打ちされた、多彩な味わいのレビューやエッセイを寄稿されている、ラノベ作家の蛙田アメコさん。2019年2月に待望のプロデビューを果たしてから、わずか一年の間に長編3作がリリースされ、海外でも2作が翻訳されるという、素晴らしい活躍 […]

【映画レビュー】トム・フーパー版『キャッツ』はどのていど、リアルな猫の生態を反映しているのか猫飼いが考察してみた

(by とら猫) 「不浄なポルノ」「ホラー」「FBIが乗り込んでくる」など、大喜利めいた辛辣レビューを世界中で量産している『キャッツ』を観てきたが、思ったよりも悪くないじゃん、というのが素直な感想だ。 確かに人面魚みたいなジェリクルキャッツがスクリーンに現れた瞬間、ポップコーンを吹いた。なんか不安に […]

【この一曲】イントロだけで世界を制したU2“Where the Streets Have No Name”

(by とら猫) “Where the Streets Have No Name”のイントロを聴くと、今すぐ駆け出したくなる。これはもうボタンを見ると押したくなる、釣鐘を見ると撞きたくなる、反町の駅を通り過ぎるとポイズンと呟きたくなるのと同じくらい、人間心理の奥深くに組み込まれている衝動であって、た […]

【映画エッセイ】私は松浦美奈さんに会うために『死霊の盆踊り』を観にいった

(by とら猫) 映画好きってやつは一年の最後にどの作品を観ようか、にやにやしながら思いを巡らせるものだ。いわゆるところの“映画納め”。私なんかもそうで、毎年師走の封切りラインナップを眺めながら理想的な映画イヤーの幕引きを考える。楽しい。 で、私の令和元年を締めくくった映画は何か。『死霊の盆踊り』で […]

【映画エッセイ】ディズニーの奴隷になって楽しむ『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

(by とら猫) 『スター・ウォーズ』が完結した。ジョージ・ルーカスが四十二年前に生み出した壮大なスペースオペラが今、令和元年のこの年についに(ひとまず)幕を閉じたのである。 旧三部作の興奮をリアルタイムで体験していないせいか、わたしなんかは筋金入りの『スター・ウォーズ』マニアというわけではない。そ […]

【映画エッセイ】おっさんだって楽しく『天気の子』を観たいんだ

(by とら猫) 人はいつからおっさんになるのだろう。 『天気の子』の中で「もう大人になれよ」という台詞を聞いたとき、そんなことを思った。 大人になるタイミングは分かりやすい。遅くとも成人に達したときだ。もちろんそれは便宜上の分類でしかなく、その日からいきなり成熟した精神性を発揮できるわけではないが […]

【映画レビュー】『ジョーカー』が見せる、エンタメとリアルの危ういバランス

(by とら猫) 『ジョーカー』における最大のタブー、そしてチャレンジは、本来薄暗い部屋でひっそり嗜まれるような主題を、純正のエンタメという形でマスに届けたことではないか。 そう考えると、賛否が巻き起こっているのも頷ける。『ジョーカー』は仲間に遊ぼうぜと誘われて行ったら、陰惨な弱い者いじめを延々見せ […]

【映画レビュー】のっけからワニ汁を全身に浴びる『クロール-凶暴領域-』

(by とら猫) アレクサンドル・アジャは真の漢(おとこ)だ。それは論を俟たないが、ここ最近のアジャのフィルモグラフィーに物足りなさを感じていたホラー映画ファンは少なくないのではないか。わたしなんかはそうだ。 いや『ホーンズ』や『ルイ』だって悪くはない。ゾンビ映画の巨匠ロメロですらゾンビの出ない『ナ […]

【音楽エッセイ】だからシオンには野音がよく似合う

(by とら猫) 野音は都会の一部でありながらその埒外にあるような、ふしぎな雰囲気をもつライヴ会場だ。冷たい高層ビル群に抱かれながらも温かみがあって、いつの時代も流行におもねることなく、凛とした態度でそこに在りつづけてきた。 そんな野音で毎年ライヴを行っているシオンもまた、流行におもねることなく、今 […]

【ドラマレビュー】人間の業と否応なしに向き合わされる『チェルノブイリ』

(by とら猫) チェルノブイリ原発事故。人類史上最悪と呼ばれる人災。 そして福島の事故を経験している私たちは、当然のことながら、あの時の悪夢とこのドラマとを重ね合わせずにはいられない。 『チェルノブイリ』を観ていると、虚構であるべきものが現実を蝕み、自分のリアルがあえなく崩壊していったあの無力な瞬 […]

【映画レビュー】『フリーソロ』で思い知らされる、努力と挑戦の残酷さ

(by とら猫) 努力ってけっこうむごい。成功を保証しないから。 フリーソロ。命綱のギアを一切使わず、己の手足だけで断崖絶壁をよじ登っていく、究極のクライミング。この世界で戦っている者たちは努力の残酷さを身に染みて知っている。一流クライマーとして名高いアレックス・オノルドもそう。彼の周りでは常人離れ […]

【エッセイ】メロンパンの呪い

(by とら猫) 学生の頃、ボウリング場でバイトをしていた。 そこは陸橋の脇にある二十四時間営業のくたびれたボウリング場で、私は主に深夜から朝までの徹夜番としてシフトに入っていた。当時はインターネットやソーシャルメディアが今ほど盛んではなく、暇を持て余す学生たちの遊びといったらボウリング、カラオケ、 […]

【エッセイ】渋谷は生きている

(by とら猫) “ジャンル複合ライティング業者”こと葛西祝氏に誘われ、おれはtrialogというイベントを見るため渋谷の街へ降り立った。 ちなみにtrialogというのは『WIRED』の元編集長若林恵氏が代表を務め、『TETRIS EFFECT』などのゲームで知られるクリエイター水口哲也氏と共に、 […]

【猫エッセイ】猫がいるわけ

(by とら猫) わが家には猫がいる。もちろん最初からいたわけではない。すべてはとある中華料理店から始まった。 小雨が降るあの夜、私はツレと共に、収納スペースが一切ないコンクリートの箱みたいなマンションから徒歩五分のところにある、行きつけの中華料理店へと出かけた。店につくと、どこからともなく「にゃあ […]

【映画エッセイ】封切り初日にチャッキーを観にいった話

(by とら猫) 7月19日がやってきた。何か。映画『チャイルド・プレイ』の公開日である。私はカレンダーに「チャ」と書き込んで、この日を楽しみに待っていた。 夜も更けてから最寄りのシネコンへ行くと、そこは大勢の人でにぎわっていた。初日にチャッキーを観たい人たちがこんなにいるのか――見えない連帯感のよ […]

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