とら猫

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【エッセイ】床屋という異界

(by とら猫) 床屋が苦手だ。 あれは基本的に拉致と同じで逃げ場がない。考えてもみてほしい。鋭利な刃物を手にした他人の前で、己の急所を無防備にさらけ出す。そういった状況に置かれるのは普通に生きていればオペのときか、テロリストに捕まったときくらいである。 人はいつ発狂するかわからない、ということを私 […]

【連載/洞窟が呼んでいる】第4洞: 巨大仏頭が誘うクリエイティブの極北「ハニベ岩窟院」

(by とら猫) 「ハニベ岩窟院」を訪れた者はまず、巨大な仏頭に出迎えられる。ほんとでかい。全長十五メートルある。五階建てのビル並みだ。しかもこれで未完成らしい。マジか。 ここで君はひとつの根源的問いにぶち当たるだろう――つか「ハニベ」って何よ。それでいい。君がセミナーなんかの「質問タイム」で訊きた […]

【エッセイ】意中の目薬

(by とら猫) 職業柄、目薬をよく使う。 実際目薬は仕事の生産性を大きく左右する。目薬が切れてしまうと、どうも調子が出ないし、目薬のことばかり気になって何も手につかなくなる。なので普段は出不精が服を着て歩いているようなプロ引きこもりのくせに、この時だけは雨が降ろうが槍が降ろうが、自転車をこいで近く […]

【エッセイ】続・コンビニのさゆりちゃん

(by とら猫) 以前のエッセイで、とあるコンビニで働く老婆について書いた。さゆりちゃんだ。あれからさらに数か月がたち、さゆりちゃんはどうなったのだろうか。 結論から言うと、さゆりちゃんは今も同じコンビニで働いている。 見た目もだいぶ変わった。お仕着せの極みのようだったコンビニウェアもだいぶ体になじ […]

【ノベルゲームレビュー】『真昼の暗黒』が暴きだす、様々な狂気への旅路

(by とら猫) 狂っていくというプロセス。 なぜだか自分は幼い頃からそうしたことに関心があって、狂った人々が暴れまわる映画や漫画を好んで見ていた。 猟奇的な事件が起きると槍玉に挙げられるたぐいの作品ばかりだったが、それらを見ていて学んだのは、人が狂うことと凶暴性にはあまり関係がなく、狂った人が全員 […]

【連載/洞窟が呼んでいる】第3洞: 「恐竜ランド極楽洞」が体現する洞窟のフリーダム性

(by とら猫) 「恐竜ランド極楽洞」は、和歌山県紀伊半島の山中深くに広がっている。 と、そしらぬ顔で筆を起こしてみたが、ひょっとすると向学心の強い君なんかは今、軽めの疑問を抱いたかもしれない。なぜに和歌山で恐竜なのか?おまけに極楽とは?仏陀が恐竜を相手に修行したという逸話の残る場所なのか? 答えは […]

【小説レビュー】北アイルランドが舞台のテンポの良いクライムノベル『アイル・ビー・ゴーン』

(by とら猫) カーテンを閉め切ってハシシを吸いながら、“気分を盛り上げるために”爆音でアタリのゲーム『ギャラクシアン』に興じている、降格を食らった元刑事。おかげで携帯無線が鳴っているのにも気づかない…… 主人公のショーン・ダフィが人間臭い拗ね者で、体制とは反りが合わないアウトローであることが端的 […]

【エッセイ】コンビニのさゆりちゃん

(by とら猫) さゆりちゃんをご存知だろうか。 知らないだろう。無理もない。なぜならさゆりちゃんはとあるコンビニで働くスタッフだからだ。 さゆりちゃんが他のスタッフと一線を画しているのは、かなりのご老体だということだ。顔は皺くちゃで、腰も曲がっており、 手塚治虫の漫画に出てくるお婆ちゃんを彷彿とさ […]

【野球エッセイ】イチローとの3日の差

(by とら猫) 実はイチローと同い年だ。誕生日も3日しか違わない。 だからといって何か特別な絆が生まれることはまったくない。当然だ。何しろ向こうは世界のイチローで、一方のこちらは猫たちのカリカリ代を払うのにも窮する、しがないフリーランサーである。 はなから比べるのは間違っている。そんなこたあ百も承 […]

【映画レビュー】『グラン・トリノ』と対をなす贖罪の物語『運び屋』

(by とら猫) イーストウッドの映画を観るということは、イーストウッドを体験するということだ。 こうした特性はイーストウッドが七十歳を過ぎて以降、監督と主演を兼任した作品において顕著に見られる。『ミリオンダラー・ベイビー』しかり、『グラン・トリノ』しかり。演じるのは架空の人物でも、そこに投影されて […]

【連載/洞窟が呼んでいる】第2洞: 見栄を張って進むべきか、日和って退くべきか「飛騨大鍾乳洞」

(by とら猫) 飛騨大鍾乳洞はその名のとおり、飛騨の山中深くに広がる鍾乳洞だ。 最寄りのバス停を降り立つと君はまず、黄色いジャケットを着た、鍾乳洞のスタッフとおぼしきおじさんに出迎えられる。鍾乳洞までシャトルバスが運行しているのである。親切だ。おそらく客は君しかおらず、かつそこは一面の山野で、民家 […]

【映画レビュー】シャマラニストたちよ、快哉を叫べ『ミスター・ガラス』

(by とら猫) 叫べ、快哉を。 シャマラニストである君は今まで幾度となくセンスを疑われ、鼻で笑われ、肩身の狭い思いを味わってきたにちがいない。当然だ。 宇宙人の侵略をお茶の間レベルで描いた『サイン』、植物によるテロという斬新すぎるコンセプトで主演のマーク・ウォルバーグをして“失敗作”と言わしめた『 […]

【連載/洞窟が呼んでいる】第1洞: 導入部から厨二的な震えが走る、珠玉のネーミング「龍泉洞」

(by とら猫) 世の中はきつい。つらい。生きていくのは大変だ。 自分なりにけっこう経験は積んできたし、ああいった場合はこうする、こういった場合はああするといったケース・バイ・ケースの方策みたいなものは漠然と蓄積されているから、自分が損をしないように世間を渡っていく技術は若い頃より身についているよう […]

【連載/映画ホルマリン漬け】第4回: 『恐怖の報酬 オリジナル完全版』~スターも銭を稼ぐのは大変だ~

(by とら猫) きっつ。銭かせぐのきっつ。 と初めて音を上げたのは、花屋のビラ配りの仕事だった。別に花が好きだったり、看板娘にホの字(死語)だったりしたわけではなく、当時大学生だった私はご多分に漏れず銭がなかったので、アンだかフロムエーだかで見かけた近所のビラ配りのバイトに申し込んだところ、花屋へ […]

【映画レビュー】観る者の感受性が裁かれる壮絶なラスト『サスペリア』

(by とら猫) 『サスペリア』がリメイクされるらしい。 そういう噂が数年前に広まったとき、大半の映画ファン、というかアルジェントを偏愛する一部の好事家たちは耳を疑ったものだ。私も含めて。 だって、“あんなもの”をリメイクできるのか。 なぜなら『サスペリア』という映画は、そもそも“映画”と呼べるのか […]

【ゲームレビュー】孤島で猫ちゃんを見つけよう『Hidden Paws Mystery』

(by とら猫) 猫好きの間では常識だが、奴らは隠れるのが巧い。 例えば拙宅に住んでいる猫ズもよく姿が見えなくなる。というか消える。マジで。いやいや消えるとか大げさでしょ、プリンセス天功じゃあるまいし、と今半笑いで呟いたあなたは一度、猫ちゃんとかくれんぼ勝負をしてみるといい。 奴らは必ずや、あなたが […]

【映画レビュー】危険な雪山でイドリスと過ごそう『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』

イドリス・エルバを雪山で独り占めしてウハウハ。 そんな世界中のイドリス愛好家が泣いて喜ぶような映画が、ここに登場した。しかもタイトルは『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』ときた。三度の飯よりもイドリスが好きという諸兄なら、このタイトルを聞いただけで胸は高鳴って「熊蜂の飛行」を奏でだし、心臓は […]

【イベントレポート】世界初のうどんバトル-TEUCHI-うどん総合格闘技

(by とら猫) 「うどん総合格闘技」とはなんぞや。 その真相を確かめるべく、私は渋谷へとやってきた。 格闘技と聞いてまず思い浮かべるのは「リング」だが、すでに満席近い会場内にそういったものは見当たらない。どうやら格闘技と言っても、麺棒で互いを殴り合ったり、熱々のうどんを相手の頭の上からぶっかけたり […]

【映画レビュー】両エースが去っても心配なしの面白さ『ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ』

(by とら猫) 前作『ボーダーライン』は掛け値なしの傑作だった。 『ブレードランナー 2049』の監督にも抜擢されたドゥニ・ヴィルヌーヴの描く、麻薬カルテルと米国政府のガチンコバトルは非情で、残酷で、それでいて詩的な美しさを湛えていた。 俳優陣もすばらしく、中でもエミリー・ブラントが善と悪の境界< […]

【映画レビュー】フレディを追いかけた旅の果て『ボヘミアン・ラプソディ』

(by とら猫) 思えば、ずっとフレディを追いかけてきた。 最初に聴いたクイーンのアルバムは確か『イニュエンドウ』で、当時はヘヴィメタルしか聴いていなかった私に、やっぱりヘヴィメタルしか聴かない友だちが、主にヘヴィメタルのことしか載っていない『BURRN!』という雑誌と一緒にCDを貸してくれたのでは […]

【連載/映画ホルマリン漬け】第3回:『孤狼の血』~あるおじさんの記憶~

(by とら猫) 役所広司という芸名の由来が、昔役所に勤めていたから、と知った時の衝撃はかなりのものだった。 あれは確かまだ小学生の頃、エネッチケーで『宮本武蔵』が放送されていた時分で、その特集番組か何かで小耳に挟んだのではなかったかと思う。なぜ衝撃を受けたかというと、名前っていうのはそんなに適当な […]

【映画レビュー】オレたちのトムハと一緒に皆で『ヴェノム』になる

(by とら猫) 何か別のものになりたい、いわゆる「変身願望」というやつはおそらく、かなりの割合の人が持っているはずで、私なんかももちろん持っている。たっぷり。それが証拠にかつては自宅のクローゼットに、サルとカンガルーの着ぐるみを常備していた。 が、実際着てみると分かるが、変装は温度差との戦いだ。無 […]