冬日さつき

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【エッセイ】「やさしい世界」について

(by 冬日さつき) わたしはやさしい世界がすきだ、とよく話してきた。でも、実際「やさしい世界」というのは、どういうものなのだろうか。というか、そんなものは在りうるのだろうか。そもそも、やさしいというのは、どういう意味? みんなが笑っていて、争いのない世界? それでいて抑圧や怒りが存在しないこと?  […]

【エッセイ】だれも知らない誕生日

(by 冬日さつき) 八月のおわり、多くの人が「もう夏もおわったな」とつぶやく。わたしはいつも心の中でそれに反論している。わたしの誕生日がおわるまでは、夏はおわらない決まりなのだと。勝手この上ないルールだけれど、これはずっと前からそうなのだ。 小学校のころから誕生日がなぜか偶然登校日になることが多か […]

【番組レビュー】『クィア・アイ』〜今この世界で、5人が伝えるメッセージ〜

(by 冬日さつき) 外に出ると、なにかと居心地の悪さを意識することがある。人の目を感じ、ジャッジされているよう気がする。あの子は美しい、あの子は不細工、あの子は細い、あの子は太っている、あの子はお洒落、あの子はダサい。ある程度までは自分が勝手に被害妄想で生み出したものかもしれないけれど、それ以外は […]

【ゲームレビュー】『あつまれ どうぶつの森』〜いろんな人にやさしいじぶんだけの島〜

(by 冬日さつき) 幼いころ住んでいた家の押し入れに、今でもゲームがたくさんしまってあると母親が教えてくれた。かつての宝物を思い出したような気持ちになって、持って帰ってきてもらうことにした。たくさんのカセット(いまはもうそんなふうには言わないのだろう)やディスクを見て、すぐにいろんなことを思いだす […]

【名画再訪】『アメリ』~わたしがわたしのままでいることを許してくれた映画~

(by 冬日さつき) 蛙田アメコさんが記事の中で書いていた、「『アメリ』に罪はないけれど」という一文で、わたしは中学時代のことを思い出していた。 わたしは田舎の公立中学に通っていた。学級崩壊をするようなレベルではないけれど、公立ということもあって、いろんな生徒がクラスにいた。いじめは常に横行していて […]

【連載/世界テーマパーク巡り】第3回: 麻豆代天府(台湾)~生きながら天国と地獄をひと周り~

(by 冬日さつき) 日本を離れ、わたしはみずから地獄へと向かっていた。台南にある麻豆代天府という寺院には、天国と地獄をモチーフにした施設があるのだという。台南駅から最寄りの隆田駅までは30分ほど。そこからさらに車で15分ほどかかるため、タクシーに乗り込む。帰りに困らないよう、時間を指定して戻ってき […]

【名画再訪】~考えるのをやめないこと~『ちいさな哲学者たち』

(by 冬日さつき) 「何があなたを生かして、何があなたを滅ぼすか」という問いに、「疑問を持つこと」と答えたことがある。小さなころから常にわたしの頭の中には疑問があふれていて、いつでも考えることをやめようとしなかった。いつか大人になったら、すべてのことを知れるようになるのだと信じていた。 どちらかと […]

【エッセイ】日々のデッサン

(by 冬日さつき) わたしがいつまでもいろんなことを覚えているのは、いつも反芻を繰り返しているからだと思う。だから、記憶力が良いだとか、そういうのとはまたちがう。ほかの人の頭がどうなっているかわからないけれど、自分の頭の中はいつもさわがしい。思い出したり考えたり、絶えずイメージを含んだ言葉が行き交 […]

【猫エッセイ】猫アレルギーの魔法使い

(by 冬日さつき) わたしは魔法使いになりたかった。むしろ、今でもなりたいと思っている。誕生日が来るたびにホグワーツからの手紙が届かないかとそわそわするし、じぶんだけの魔法の杖の持ち方も考えたこともあった。でもじぶんの中の”魔法使いの素質”を考えたとき、どうしても外せない問 […]

【連載/世界テーマパーク巡り】番外編: 大人の射的屋さん(鳥取皆生温泉)~温泉街にひそむ昭和~

(by 冬日さつき) 鳥取・米子の温泉地には、大人の射的屋さんがある。光の漏れる入り口から中へ入ると、想像以上に明るいおばちゃんが出迎えてくれた。台の内側にいる犬が何度も大きく吠えた。姿は見えない。 標的のおもちゃがずらりと並んでいる。ラークラックDXという古いパチンコ台も2台あった。店内にはアダル […]

【エッセイ】完璧主義とわたし

(by 冬日さつき) 結婚式が終わったあと、「この先もっと自分のことを好きになれたら、いつかもう一度ウエディングドレスを着たい」と言ったら、叱られた。式に満足がいっていないように聞こえたようだった。だけれど、実際には不満なんてまったくない。自分で言うのもなんだけれど、こじんまりとした、わたしたちらし […]

【連載/世界テーマパーク巡り】第2回: 上海ディズニーランド(中国)~同じようでも一味ちがう~

(by 冬日さつき) 奇幻童話城堡(Enchanted Storybook Castle)と名前がつけられた城は、特定のキャラクターのものではなく、すべてのプリンセスのお城だという。パーク内のいろんなところで「奇妙」という単語を見たけれど、中国語ではすばらしいという意味らしい。 3年前、わたしは夫に […]

【エッセイ】見知らぬ人を時計にする

(by 冬日さつき) わたしは人をときどき時計にしている。 こんなふうに書くと、人間を魔法かなにかで時計にすっかり変えてしまうみたいだけれど、もちろんこれはぜんぜんちがう話だ。 決まった時間に決まった場所へ行くとき、かならず見かける人がいる。たとえば、毎朝会社へ向かうときに見かける人やすれちがう人。 […]

【連載/世界テーマパーク巡り】第1回: レ・マシーン・ド・リル(フランス)~サイバーパンクの楽園~

(by 冬日さつき) 機械仕掛けの象がゆっくりと歩いている、いつか夢で見た世界の一部分みたい。 フランス・パリにあるシャルル・ド・ゴール空港について、眠るだけの1泊をしたあと、TGV鉄道に乗ってフランス西部にある都市、ナントへ向かった。日本の新幹線みたいな位置づけだろうか。車内はしんとしていて、大き […]

【英語も学べる映画レビュー】『トイ・ストーリー4』~それぞれのおもちゃとしての人生(英訳付き)~

(by 冬日さつき) 名前をつけてかわいがっていた赤ちゃんの人形と、毎日いっしょにお風呂に入った。その人形は、体内に水が入ってもおしりあたりにある穴から出ていく仕組みになっていた。別売りのおむつは消耗品で、大切に使っていたから、ふだんはお風呂から出るときにいつも胴体から首を引っこ抜いて水を出す。子ど […]

【旅行エッセイ】ベトナム旅行記(後編)

(by 冬日さつき)(中編からの続き) ベトナム人は、あまり笑わないような気がする。行きの飛行機で覚えたこんにちはとありがとうも、こんにちはのほうはともかく、ありがとうはあまり言われることがなかった。だから、覚えた発音が正しいのかわからないままだった。店員がふとわたしに笑顔を見せたりすると、安心して […]

【旅行エッセイ】ベトナム旅行記(中編)

(by 冬日さつき)(①からの続き) 次の日、ホテルで車をチャーターしてもらい、ダナンから車で40分くらいの距離にある港町ホイアンへ向かう。窓の外をぼんやり見ていると、壁に数字が書いてあるのがときどき目にうつり、何だろうと気になった。だけど、もしかしたら下品な意味かもしれないと不安になり、結局聞かな […]

【エッセイ】居場所の記憶

(by 冬日さつき) 昔、飼っていた犬が子犬を3匹産んだ。1匹はじぶんのかわいいところをよくわかっている強気なメスで、もう1匹はいつもほかの犬とくっついて眠ろうとするこわがりのオス。あともう1匹のオスがどんな性格だったかを思い出せない。彼は生後しばらくして、近くに住む知り合いの家にゆずられていった。 […]

【旅行エッセイ】ベトナム旅行記(前編)

(by 冬日さつき) 新婚旅行の行き先にベトナムを選んだわたしたちは、結婚式を終えた3月のはじめ春を飛び越え夏にいた。 はじめての東南アジア。飛行機の中でこんにちはとありがとうの言い方をひとまず覚える。ダナンというリゾート地でしばらく過ごしたあと、ホーチミンへ行くという旅程だから、国内線を乗り継いで […]

【エッセイ】真夜中のひとり遊び

(by 冬日さつき) わたしの夜は長い。 海に向けられた定点カメラは大きくうねる波を静かにとらえている。白い飛沫は黄色いライトと混ざり合い、なめらかに消えていく。伊豆諸島、八丈島からの中継。ベッドに寝転がり、テレビを見つめる。映像に表示されている時間は現在を示してはいない。わたしはときどきこうして、 […]

【ゲームレビュー】失われたモノたちの暮らす世界へ『フォーゴットン・アン』

(by 冬日さつき) 「すべての失われたものや、忘れられたものが行き着く場所を想像したことはありますか?」 登山の途中で落としてしまった片方の手袋、留学中に寮でなくした大切な指輪。ベランダで太陽の光に当てていたらいつのまにか消えていたきれいな石、一度も読まないうちにどこにしまったかわからなくなった本 […]

【ゲームレビュー】『Detroit: Become Human』~良心を問われる判断の先にある、自分だけの結末~

  • 2019.03.19

(by 冬日さつき) ゆっくりと、しかし確実に、たくさんの作品で描かれてきた「未来」は近づいていて、携帯ショップではロボットに話しかけられるようにもなった。自宅にはロボットクリーナーがいて、わたしは彼(彼女)が掃除をしやすいようにゴミをひとかたまりにしておく。そこまでするのならば、それをゴミ箱に入れ […]