
(by 冬日さつき)
鳥取・米子の温泉地には、大人の射的屋さんがある。光の漏れる入り口から中へ入ると、想像以上に明るいおばちゃんが出迎えてくれた。台の内側にいる犬が何度も大きく吠えた。姿は見えない。
標的のおもちゃがずらりと並んでいる。ラークラックDXという古いパチンコ台も2台あった。店内にはアダルトな雰囲気はない。となりの店が大人のおもちゃ屋で、その商品が景品としてもらえるらしい。温泉旅行に来た学生たちのわるいひやかしにあったりしないのかなと勝手に思ったけれど、こんなふうなお店をやっているのだから、わたしの心配がいらないくらいにおばちゃんだって肝が据わっているのだろう。50年ほど続く店なのだという。

30弾くらいもらえて、1回1000円。二人で半分こはできないようだったけれど、途中でおばちゃんが特別にとわたしにもと許してくれた。狙いを定めて撃つ。うまく当たらない。この日、わたしたち以外にはだれもいなかった。お店は雑誌の取材を受けたこともあるとのこと。
「むかしはこんなお店がたくさんあったんだけどね」とおばちゃんは話していた。弾のスピードはわりと強くて、手を限界までのばしてもいいし、跳ね返ってきた弾をもう一度使ってもいい。パチン!と音がしておもちゃに当たる。落ちそうで落ちない。下のほうを狙うといいとコツを教えてくれた。

犬がかまってもらいたくて何度も吠えている。大人の射的屋さんにかわいい犬がいることで非現実と現実の境界線がだいぶあいまいになっているような気がした。おばちゃんは子どもをあやすように犬を抱いている。わたしたちはアダルトな景品をもらうために標的を狙う。
何度も撃って、やっとひとつを落とした。もらった景品はファンシーショップの袋に入った何か。中をのぞくとピンクローターだった。おばちゃんは「電池がついているからすぐに使えるよ」と言いながらわたしたちの両方を見て笑った。
こんなふうなお店は、あと1000年くらい続いてほしいな。