
(by こばやしななこ)
RBG、これは85歳にしてアメリカの現役女性最高裁判官であるルース・ベイダー・ギンズバーグ氏のイニシャルだ。キュートなRBGおばあちゃんの実績と人柄が描かれたドキュメンタリーが『RBG 最強の85歳』である。
この映画を観て言いたいことがありすぎて、まとめきる自信がないので、このドキュメンタリーの印象的だった部分を2つピックアップしてお伝えします!!
個人的にはデートでこの映画を観に行って、彼氏彼女とどう思ったか話し合うのって最高だと思う。気まずいラブシーンもないし、おすすめです!!
性差別をなくすことは男も女も生きやすくなること
ルースが弁護士時代に担当した訴訟の中でも印象的だったのは、男性の為にルースが闘った通称「ワインバーガー対ワイゼンフィルド」という裁判だ。
妻を亡くしたある男性が、幼い息子を育てる為に仕事を辞めたが、夫と死別した女性には支払われる給付金が「男だから」支払われなかった。しかし、ルースは依頼人が男性だからという理由で同じ状況の女性には支払われるお金が彼に支払われない法律はおかしいと主張し、勝訴したのだ。
「性差別」と聞くとなんとなく女性のものだってイメージがあるけれど、性別に関わらず戸籍上の性に縛られることで不利益を被る差別的な慣習や法律は多々ある。個人の特性に関わらず女性を家庭内に閉じ込める慣習は、同時に、個人の特性に関わらず男性を仕事に縛り付け家族と過ごす時間を奪ってきた慣習でもあるだろう。
それに日本には、男性が被害者である性犯罪を罰する法律がつい最近まで無かった。2017年にやっと被害者の性別に関わらず処罰される法律ができたのだ。
思春期を迎えたあたりの私は、私たち女性が生きやすい社会になるといいなぁなんて漠然と思っていた。でも大人になるにつれて、困っている人や助けを求めている人は、性別に関わらずたくさんいることが見えてきた。今は、性を限定せず、みんなもっと生きやすくならないかな?と日々思っている。
日本国憲法には法の下の平等が定められていて「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的、又は社会的関係によって、差別されない」と約束されている。
これってすごく理想とする状態かもしれない! でも正直、この通りにはなってないからもっと「守られてないよ!」って主張しないと。
意見が違う人とだって親友になれる
ルースは9人いる連邦最高裁の判事の中でリベラル派を代表する存在だ。そんな彼女の親友だったのは、妊娠中絶反対、同性愛者の権利拡大反対を表明していた保守派の男性、アントニン・スカリア氏だ。
憲法の解釈やイデオロギーが正反対の二人だが、お互いオペラ好きということもあり、話していると楽しくウマがあったのだそうだ。
自分と違う思想・哲学・政治的理念を持っている人を拒絶する人は多い。別に、意見が違う人のことも絶対好きにならないといけないことはないと思うけれど、意見が違うけど気があう人がいることで自分の考えや人生は豊かになる。全否定か全肯定以外の会話が出来る相手って意外と貴重だよね。
ルースとアントニンが一緒に象に乗っている写真を見ながら軽口をたたき合うシーンは、二人ともとてもチャーミングで楽しそうだった。
他にもルースの最高に魅力的な夫マーティン氏のことや、数々の裁判、ルースのオペラを愛する一面などなど印象に残る場面は多々あったが全て書ききれないのでぜひ映画を観て欲しい、としか言えない。ルースが最初に担当した裁判を描いた劇映画『ビリーブ 未来への大逆転』も感動的な作品だった。
そういえば、このドキュメンタリーを観て日本の最高裁に女性判事って何人いるんだろう、と調べてみたら判事15人中、今は宮崎裕子さんという方1人だけだった。歴代でも5人しかいない。ちょっと少なすぎるよね。女性裁判官自体はじわじわと増えてきているみたい。
世界ジェンダーギャップ指数の順位は、149カ国中日本は110位。この指標が絶対とは言えないが、政治の場や組織の幹部に女性が少ないことは否めない。組織が成長したい時に、差別があるととっても非効率なんだって。NASAで活躍した黒人女性を描いた映画『ドリーム』を観るとよくわかる。(めちゃくちゃおすすめの映画!)
ルースはアメリカでまだ女性が弁護士になれなかった時代に弁護士を志し、ガラスの天井をぶち破って世界を変えた人だ。
自分の頭上にある天井をブチ破れるのは限られた人かもしれない。でも誰かが限界を壊したらみんな次に続いていける。誰がその天井を破る人かわからないから、頑張っている人をみんなで応援しあうしかないんじゃないだろうか。
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映画『RBG 最強の85歳』公式サイト