~8年越しの復活と「『答え』のあるアクションゲーム」を再追求した最新作にして傑作『ロックマン11 運命の歯車!!』~

幼い頃楽しんだゲームがシリーズ化を遂げ、数十年が経った現在も新作を出し続け、若い世代から支持を得ているのを見ると、とても嬉しい気持ちになる。だが、中には売上が見込めないとの理由から、凍結されたものも少なくはない。

ロックマンはそんなことにはならないだろうと思っていた。
現に2001年以降、シリーズは『ロックマンエグゼ』という、全く新しいRPG作品を輩出して新境地を開拓。多くの若いファンを獲得した。

伝統的なアクションのシリーズも派生作中心に展開し、安定した人気を維持。

エグゼの次を担った『流星のロックマン』、アクションの次を担った『ロックマンゼクス』の二つが空回りしたこともあったが、初期のロックマン数十年ぶりの新作にして九作目が発売されるなど、シリーズは変わらず現役であり続けた。

だが、2010年下半期に発表された『ロックマンDASH3』で歯車が狂ってしまった。上層部の制作承認許可が下りていない状況で発表を行った常軌を逸した経緯、発起人の途中退社。そして、年が明けての東日本大震災の影響による、体験版出展が予定されていたイベントの中止。様々な爆弾を抱え、不運にも見舞われた本作は、2011年夏に発売中止となった。

発足の経緯、その後の流れからして、中止は当然の結果だと思った。
だが、これがシリーズ全体に暗い影を落とし、以降、新作は何年にもわたって出なくなってしまった。スマートデバイス向けの新作アプリが出たりもしたが、家庭用はからきし。決して人気が落ちた訳ではない。一つの新作を作るべく起こした常軌を逸した行いがアダとなり、表舞台に立てない状況へ追い込まれてしまったのだ。

こんな理不尽なシリーズ凍結があっていいのだろうか。これからもロックマンを追い続けていく思いにあった身にとって、あの出来事からの数年は地獄でしかなく、一連の事態を招いた要因の数々に怒りが溜まる一方だった。

だからこそ、シリーズ誕生30年を迎える2017年に『ロックマン11 運命の歯車!!』が発表された時は言葉に言い表せない嬉しさがあった。
既に2016年から旧作のコレクションパッケージを発売するなど、少しずつ再始動していたシリーズが本格的に動き出す。しかも、今度はちゃんとゲームが動いている。
DASH3の時とは決定的に違う、安心感がそこにあった。

発表から10ヶ月ほど経った2018年10月4日、同作は発売された。
ダブルギアシステムと言った新要素が多く盛り込まれ、グラフィックと音楽も現代の技術に準じたものになったが、内容はいつものステージクリア型アクションゲームのロックマン。純然たるクラシックスタイルで、今の時代にこの内容で出すのか、と驚かされた。

だが、その内容は紛れもなくロックマンだった。

何より、「答えのあるアクションゲーム」に完成されていたことに大きな感銘を受けた。新作発売までの間、私は過去の十作、外伝作品を遊びつつ、攻略本、漫画などの関連書籍も読み、改めてロックマンがどんな歴史を辿ってきたのかを振り返った。

その過程で特に印象に残っていたのが、『新装版ロックマンマニアックス下巻』に掲載されていたロックマン生みの親、漫画を執筆された御方の対談だった。その生みの親は初代『ロックマン』、『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』の二作にだけ携わった御方で、以降のシリーズには二作目の後に会社を辞めた関係から、一切参加していない。

ロックマンの礎を作った人の話は驚きの連続で、改めて緻密な計算に基づいて作られたゲームであることを知った。

そして、刊行に寄せたメッセージに興味深い記述があった。

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難しいシーンや強敵に対して、テクニックや反射神経だけではなく、こうすれば確実に攻略出来るという『答え』のあるアクションゲームって出来ないだろうか。そんな発想でロックマンを作り始めました。

当時、ロールプレイングゲームが台頭してきた頃で、技量の必要な横スクロールアクションは、少しマニアックなジャンルになりつつありましたね。それでも人気タイトルが登場すると、みんながんばってクリアーを目指しましたが、最後のシーンまで辿り着いた人は少なかったのではないでしょうか。ロックマンはそんな子供達に向けた、少しパズル的な要素のある思考型アクションゲームとして登場しました。

私はゲームを面白くするために、今までに見たことのない難しいトラップを考え、とても行けそうにないステージを沢山設定しました。そこは、たとえすぐクリアー出来なくても、特殊武器やアイテムという『答え』を使えば、絶対にいけるのだから大丈夫と考えていたのです。(以下略)

※新装版ロックマンマニアックス下巻(短編・設定&対談編):193ページより一部引用
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しかし、実際はより難しい遊び方をされることになってしまい、申し訳ない気持ちになったとのコメントが後々に記されていた。

今回の新作はいつになくステージが難しく、長い。
初見クリアは困難を極めるほどだ。
実際、私も初めは何度もやり直しの憂き目に遭った。しかしある時、特殊武器を活用すれば、目の前の障害を一瞬で無くせることに気づかされた。

普通に戦うと長丁場になる中ボスを一瞬で倒せてしまうのだ。

タイミングを読んで進む場所そのものを”消せる”のだ。

回る足場を無視して強行突破できてしまうのだ。

それに気付いて以降、本作の難易度は急激に落ちた。手強いと感じていたのが、実はとても良心的な難易度であることが分かったのだ。
そして直後、先述のメッセージを読み返して戦慄した。

生みの親が目指したアクションゲームが実現しているじゃないか!

ロックマンは昔から、難しいゲームと言われるが、単に難しいだけではなく、プレイヤーの工夫次第で優しくできる、不思議な特徴を持ったゲームでもある。特にそれを象徴していたのが、8体のボスを倒す度に得られる特殊武器、ステージ攻略の御供となるサポートキャラクター達だった。

私の記憶が確かならば、2001年の『ロックマンX6』を皮切りに、アクションのシリーズは”難しさ”が強調されるようになっていった。
ステージに即ミスに繋がる罠を敷き詰めたり、特殊武器で戦うにも操作技術が求められたり。前々作の『ロックマン9』、前作の『ロックマン10』もその影響を強く受けていて、前者の殺意に溢れたステージ構成には私自身、大きな違和感を抱いた。

今回の新作もその影響を受けている節はある。だが、特殊武器を応用すれば、難所が途端に優しくなる。僅かなテクニックと反射神経で確実に攻略できる、ロックマンの基を踏襲した作りになっているのだ。

そのことに私はとても大きな感銘を受け、本作を傑作と評している。

無論、見過ごせない難点もある。標準難易度が事実上の上級者向けであったり、入門に適した難易度低めのステージが一つもないのは意地悪だ。

だが、今までとは違うクリエイターの方々が制作した初めての作品が、「これは面白い」と豪語できるロックマンとなったことに、明るい未来を感じることができた。

今時のアクションゲームとしては物足りなさ、古臭さがあるし、ファン視点からすれば、久々のシリーズなのに一部のキャラクターが出てこないのは寂しい。
しかし、間違いなく本作でロックマンは新たなる一歩を踏み出した。

発売から大分時間も経ったが、今から遊んでも遅くはない。また、今作はシリーズを遊んだことのない人も、ストーリーを含め、前提知識なしで楽しめる作りになっている。

ただの難しいゲームとは一味違う、懐の広さを持つロックマン。30年の歴史を誇り、今もなお世界中で愛され続けるゲームの世界を覗いてみて欲しい。

最後に8年ぶりに帰ってきてくれたロックマン本人にメッセージを送る。

もう二度と歯車を止めないでくれ。
ここから再び羽ばたいて、新たな未来を紡ぐんだ!

そして、これからの時代を担う、新しいロックマンの誕生に期待したい。
エグゼと流星が7年の歳月を費やして築き上げるも途絶えてしまった、「誰もが楽しめるロックマン」の血を受け継いだヒーローの誕生を……今一度!

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シェループ

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。
連載エッセイ:だからゲームはやめられない
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