葛西祝

【映画レビュー】失敗作『シン・ウルトラマン』〜現代的に描く視点が大局に依存した閉鎖性〜

(by 葛西祝) 『シン・ウルトラマン』ははっきりとした失敗作であって、原作の『ウルトラマン』がこんな風にリメイクされるんだって偏愛が無ければとても観ていられない映画だった。少なくとも自分にとって、失望の多くは『シン・ゴジラ』のように原点を現代に解釈し直す試みがすべて空回りに終わっていたことだ。 “ […]

【連載/LIFE-】第10回:「が」のお話

(by 葛西祝) 「が」について、ささやかなお話をしよう。まず、自己紹介のテキストを書くとする。 「ぼくは中学3年生ですが、来年4月から高校生になります」 このテキストはすぐ修正をかけることになる。手を加えたあとはこうだ。 「ぼくは中学3年生で、来年4月から高校生になります」 ダムのひび割れみたいに […]

【連載/LIFE-】第9回:“文化的荒涼”のなかで鳴る東京五輪開会式の『ドラゴンクエスト』序曲

(by 葛西祝) その音楽は “文化的荒涼”のただ中にて、Twitterのタイムラインで称賛された。 オリエンタリズムのクリシェに塗れた演目が終わり、選手入場のイベントが始まる。噂された『ドラゴンクエスト』序曲が鳴り響き、各国から選手が競技場へ歩み始めた。オーケストラはやがて『ファイナルファンタジー […]

【連載/LIFE-】第8回:人生の半分を簡単に取り戻す方法

(by 葛西祝) 今回はとても簡単に人生の半分を取り戻す方法について教えましょう。前置きしますと、金銭や健康といったものを取り戻すものではないです。もしご期待したら申し訳ありません。 さて、人生の半分っていつだと思いますか? 40歳? 平均寿命を半分に割った結果ですね。じゃあ30代? そう単純じゃあ […]

【インタビュー】「使命感が無くなったらその時点で終了じゃないかとは思います」――『ベオグラードメトロの子供たち』クリエイター・隷蔵庫

(インタビュー文・構成:葛西祝、聞き手:とら猫) 今年2020年はビデオゲームでさまざまな話題作がリリースされる年だ。しかし、どこか気配の違うビジュアルノベル『ベオグラードメトロの子供たち』がリリースされたことを忘れてはならない。 本作は近未来の旧ユーゴスラビア圏・セルビアを舞台に、超能力を持った少 […]

【連載/LIFE−】第7回:テキストにおける “若さ”から手を切るということ

(by 葛西祝) 若さを良いものと評することは多い。選手が全盛期を迎える期間が限られたスポーツはまさにそうだし、流行りのファッションや音楽からは誰でも良い意味で若さを捉えているだろう。 だけど多くの人が見て、若さがすぐに気づかれない分野がある。それがテキストにおける若さである。 毎日誰もが目にする文 […]

【ゲームエッセイ】死角から振り返る『ファイナルファンタジーVll』と『ファイナルファンタジーX』

(by 葛西祝) 名作は時間の経過に耐えうるという。よく言われる「名作は何度見ても発見がある」という言葉は、そもそも見る自分たちが変わり、視点が変わったことが大きい。時を経て、自分と環境が変わってしまっても、鑑賞に耐えうるからそう言われるのだと思う。 ファイナルファンタジーシリーズで屈指の評価を得た […]

【連載/LIFE−】第6回:アカデミー賞にノミネートされながら、物乞いに堕ちたアニメ作家の物語

(by 葛西祝) さまざまなジャンルから、人生や日常の欠落についてを書く連載「LIFEー」6回目は、とある破滅的な経歴を送った作家の話をしよう。 あらゆる表現に関して、残された作品以上に生み出した作家のパーソナリティがフィーチャーされることは少なくない。その作家が苛烈な人生を送ったならばなおさらだ。 […]

【映画レビュー】『パラサイト 半地下の家族』~ポン・ジュノ監督が構築した韓国(もしくは世界)の凍りつく寓話~

(by 葛西祝)(注:本レビューには映画のネタバレが含まれます) 靴 半分地下で暮らす貧しい家族。その一人息子が、姉の偽造した書類を通して高級住宅街に暮らす一家の家庭教師に行く日、汚れひとつない靴を履いていた。 『パラサイト 半地下の家族』(以下、『パラサイト』)序盤のシークエンスを見ながら、ある話 […]

【連載/LIFE-】第5回: POPEYEの村上春樹

(by 葛西祝) 雑誌でよくPOPEYEを読む。去年からおや、と感じたのは、村上春樹のエッセイが始まったことだ。はじめはすこし驚いたが、毎回読むうちに昔から書かれていたみたいに思えていった。毎回持っているTシャツについて書いていて、そのスムーズなテキストが、POPEYEのコンセプトへきれいに収まって […]

【インタビュー】“みんな「独学」ってどうやってるの”座談会 with LayerQ ~after trialog~

レポ&モデレーター by 葛西祝   様々なジャンルのゲストを呼び、テーマに沿ったトークセッションを行うイベント「trialog」。7月26日に行われたtrialog vol.6では「独学」をテーマに、ハリウッドで活躍するコンセプトアーティスト・田島光二氏をゲストにトークセッションが行われた。Bad […]

【連載/LIFE-(ライフマイナス)】第4回: ノンポリティカルの時代は終わった

(by 葛西祝) 令和に変わるまでの数か月、どこでも平成の特集や総括が行われていた。自分がこの30年で確信しているのは、様々なエンターテインメントにしろ、実際の態度にしろ、ノンポリティカルでいることが難しくなったことだ。 平成はノンポリティカルでいられる時代だった。作品と現実はまったく別物であり、政 […]

【イベントレポート】trialog.vol.5~信頼のおける仲間と組めば、もう少し幸福になるの?クリエイティブのための新しい組織や関係~

(by 葛西祝) 「BadCats Weekly」では様々なメンバーが集まっている。ライトノベル作家の蛙田あめこ氏から、星新一賞で入賞している、あでゆ氏、そして英日の翻訳者である武藤陽生氏など、様々なメンバーが寄稿しているサイトだ。ジャンル複合ライティング業者みたいにめちゃくちゃな経歴を自称していて […]

【野球エッセイ】電車のなかの、幻想のイチロー

(by 葛西祝) 国民的スター……? 電車のなかで誰かが、引退を発表したイチローをそう言ったのが引っかかった。声は上石神井駅から乗り込んできた学生たちからか、隣に立つスーツ姿の二人組からか。いずれにせよ、車内の誰かはイチローを“国民的”だと信じているようだった。 メジャーリーグで10年以上にわたり活 […]

【連載/LIFE-】第3回: 名誉と報酬をめぐる物語としての格闘技

(by 葛西祝) 社会的に得ることのできる名誉と、仕事の対価である報酬にはどんな関係があるのだろうか? この関係を考えるうえで、少し前のMMA(※打撃、投げ技、関節技が許される総合格闘技の正式名称)以上に適したジャンルはない。ふたつの価値がドラマチックな展開を見せる、おそらく唯一のジャンルだからだ。 […]

【ノベルゲーム】『Butterfly Soup』~日本が近い未来に訪れるおとぎ話~

(by 葛西祝) 『Butterfly Soup』をクリアしたときに思ったのは、「これは日本が向かう近い未来のことなのだろうな」ということだった。アメリカのオークランドに住む女の子たちが、野球をしながら仲良くなるストーリーは、この先に起こることが描かれている。 今年の新宿区で行われた成人式では新成人 […]

【連載/LIFE-】第2回: 現実世界の向こうの現実へのアクセス

(by 葛西祝) 「現実からディスプレイの向こう側の作品世界と関わる」これはビデオゲームを遊ぶ構造を利用した仕掛けだ。この構造を押し出すことは、いまではメタフィクションということで語られやすい。 メタフィクションは賢い見方に思えるかもしれない。でも自分にとっての実質的なファーストインプレッションはち […]

【映画レビュー】『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』~旧来の価値が崩れゆく現実に耐えられない嗚咽~

(by 葛西祝) 昨年からの#MeToo、そして性や人種、障害の多様性が語られる現在。この流れで自分が注目しているのは、むしろ既存の社会的な価値で優位な立場である男性だ。がらがらと旧来からの価値が崩壊をはじめるとき、優位な立場だったはずの人間のひとりひとりが何をもって自意識を保っていたのかがはっきり […]

【連載/LIFE-】第1回: ささやかな日常の感情についてを見つめるビデオゲーム

(by 葛西祝) 現実を生きるなかで実際にやることはささいな行動の数々だ。ほとんどはドラマチックな物事から切り離されている。朝決まった時間に起きる。朝食を作る。皿を洗う。服を着替える。歯を磨く。生活のおおよそは特別なこともない行動で埋められている。 ビデオゲームでは長らく、そんな生活の中で生まれる感 […]