
(by 蛙田アメコ)
◼️落語家と小説家、別居する◼️
「スローな落語家と暮らしてる」、というタイトルで連作をしているこのエッセイ。しかしなんといま、我が家は別居生活中でございます。たいへんだっ!
簡単に言うと、生活リズムや考え方が食い違ってしんどくなってしまったので物理的に距離を置いている……という状態なのだけれど、別々に住んでみて分かる落語家事情もあるので今回はそんなことを書いてみようと思います。
◼️落語家、頑張る◼️
以前の連載でも話したが、TwitterもFacebookもやっていなかった配偶者。時は流れて、最近ではなんとInstagramまで始めているようだ。ツイキャスを始める日も近いかもしれない。夫はいま、二つ目の落語家という「人気や実力に一番大きく差がつく」修行期間にいる。
二つ目と真打、見た目は同じ落語家だけれど、二つ目はまだまだ修行中だ。年功序列によって真打ちに昇進できる場合もあるけれど、たとえば故・7代目立川談志を家元とする落語立川流では、「真打ち」になる要件として「落語100席(!)に二つ目時代よりもグレードアップした歌舞音曲」としています。
この歌舞音曲、というのは落語以外にも落語家さんに一種の教養として求められることが多いようです。歌、舞、音曲(和楽器)ですね。夫はこの中にある「舞」にあたる踊りの稽古に毎週通っています。
今回、別居に至った理由の一つもこの「修行」。
やはり芸人たるもの、第一線で頑張りたい! という気持ちもあるそうです。二つ目になって四年弱、ここらで本腰をいれて修行に打ち込みたいという気持ちがあるみたい。そして筆者である私も、超ひよっこの駆け出し作家なので私も私で頑張らなくっちゃ! ……というわけで別居することになった次第でございます。
◼️落語家、ユニット時代!?◼️
そんな配偶者、なんと落語家ユニットを組みました。
実は最近の落語界ではユニットを結成することが流行っています。落語家といえばひとりで座布団のうえでお喋りをするイメージなので意外かもしれませんね。
大御所でいえば、春風亭昇太師匠や柳家喬太郎師匠、林家彦いち師匠に三遊亭白鳥師匠という綺羅星のごとき新作実力派が結成していた「SWA」。若手二ツ目のユニットのはしりで有名どころは、2013年、落語芸術協会の同期11人で結成された「成金」なんかが有名です。
で、この「成金」が流行った!
その後、群馬県出身の二ツ目が結成した「上州事変」(林家つる子さんと立川がじらさんは筆者の友人です、お見かけの際はぜひ。おすすめです)などのユニットが立ち上がっているわけです。そして、配偶者もついに落語芸術協会の二ツ目が結成した「芸協カデンツァ」というユニットに所属することになったという運び。流行に乗っているぜ。

2019年4月に立ち上げ公演があったばかりの、この「芸協カデンツァ」をはじめ配偶者は精力的に修行に打ち込んでいるのです。離れて暮らしてみて、なるほどスローなばかりではなくてガッツ溢れるファイトもしているんだなぁ……と感心してしまっています。
そういえば、この連載で配偶者の名前を明かしていませんでしたね。
古今亭今いち。
落語芸術協会の二ツ目です。皆さん、お見かけの際はどうぞよろしくお願いします!