時は2001年。

寂れた港町。市内に1つだけあるTSUTAYAで借りてきた『ロッキー』のVHSをブラウン管テレビで見ている少女。それは11歳の私である。

子供というのは自分のヒーローを真似するものだ。その日から私はロッキーのトレーニングを真似て生卵を飲み、脳内でロッキーのテーマを流しながらランニングし、親に持たせた枕をサンドバッグ代わりに殴り、無意味に「エイドリアーン」と叫んだ。ファイティングスピリットがすっかり枯れた今の私を知る者が聞いたら驚く話だろう。

月日は流れ2019年1月、『クリード 炎の宿敵』が日本公開された。

『クリード 炎の宿敵』はロッキーシリーズの最新作であり、ロッキーの後継者となった若者を主役とした作品の第二弾である。前作『クリード チャンプを継ぐ男』は大傑作だった。『クリード 炎の宿敵』について書く前に前作について少し語らせてほしい。

『クリード チャンプを継ぐ男』は、ロッキーの最良のライバルであり友であるアポロ・クリードの隠し子アドニスが、ロッキーにボクシングを教えてくれと押しかけるストーリーだ。そしてアドニスがロッキーの後継者にふさわしいボクサーになるまでが描かれている。

何が良かったかって、作品自体のノリが黒人の若者のそれなのに、正真正銘のロッキーシリーズになっていることだ。アドニス演じるマイケル・B・ジョーダンのちょっとノリの軽い黒人の兄ちゃんというキャラクターに加えて、ゲーム風に表示される対戦相手のスペック、フィラデルフィアをバイクでウィリーする若者たち、イケてる音楽…とイマドキの若者が「うわおもしれー」と言っちゃうような演出が溢れている。この全く新しい映画のテンションの中で、ロッキーは変わらずにロッキーの人生を歩んでいた。老いぼれトレーナー=ロッキーが、イマドキのチャラ蔵=アドニスにニワトリを追いかけさせるシーンとか、最高じゃないか。映画は上記の説明の100倍面白いので絶対に観てほしい。

前置きが長くなったが『クリード 炎の宿敵』についてだ。本作の敵は『ロッキー4』でロッキーの敵だったソ連の怪物イワン・ドラゴと息子ヴィクター・ドラゴである。

えっ、コイツら誰……?

実はこんなに語っておいて私、ロッキーは『ロッキー3』までしか観ていない。

お前、アポロの死を知らないままロッキーもクリードも語ってたのかよ!ニワカじゃん!と言われても仕方ないが、私にも言わせてもらいたい。

てか、『ロッキー4』まで観ている20代女子ってそんないるか!?いなくね!?

『クリード 炎の宿敵』は中盤まで割とシリアスなトーンが続く。……真面目か!それに加え、本作は対戦シーンがマジで痛い。敵のパンチが重く、速い。野犬同然のドラゴに強力なパンチを連打される。観ているのが結構辛い。やめて!私を傷つけないでッ!私の心を叩かないでーッ!と私の心の中の豊田議員が発狂しそうになった。いや、多分してた。

しかし、これは全て後半のブチ上がりの為に仕組まれた展開だ。

後半はもう、すごい。

野犬を超えた獣になるための予想外でユニークなトレーニング(狂ってた)!

最後の対戦のスタジアムの熱気(選手登場の演出も最高)!

因縁の対決中に感じるドラマドラマドラマ(泣かせる!)!!

極め付けはなんと言っても音楽だ。ロッキーのテーマは無条件に身体中の全ミトコンドリアがうぉおおお!と共鳴してしまう全くずるい映画音楽だが、これがかかるタイミングがすごい。もうここしかない!というところでキメてくる。殺す気かー!!

気づけば私はめちゃくちゃに泣いていた。ニワカのくせに。対戦からエンドクレジットまでずっと泣かせられっぱなしだった。真面目か、とか言ってすみませんでした。真面目って素敵よね。愛してるクリード。愛してるスティーブン・ケーブル・Jr.さん(監督)。

今、これを読んだあなたが細胞レベルでロッキーを、そしてクリードを求めているならばこんなに嬉しいことはない。ツウだろうが、ニワカだろうが、今すぐ映画館に行くっきゃない。

(c) Warner Bros.

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でBadCats Weeklyをフォローしよう!