(by 蛙田アメコ

◇『アメリ』に罪はないけれど。

世の中には「オシャレ映画」というカテゴリーの映画がある。例えば『アメリ』とか。『アメリ』のコンテンツ力ったらすごくて、一時期は「サブカル女子が観る映画といえば『アメリ』」、そして「意識高い系女子が観る映画といえば『アメリ』」、かくいう自分も「映画好きなんです〜」と話をすると「『アメリ』とか好きそう!」とか言われる日々が続いた。

『アメリ』にはまったく罪はないが、なんというかオシャレ映画と呼ばれるものには苦手意識があったわけだ。なんなら、「『アメリ』とか好きそう」と言われるたびに「なんだコノヤロー喧嘩売ってんのか」と思いながら生きてきた。『アメリ』に罪はないけれど。全然、ないけれど。

そんな折、私の前に運命の映画があらわれた。そう、『キスキス , バンバン』である。正確にはDVDになったあとに出会った作品なので『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』である。DVD発売と同時に後段が付け加えられたのだ。タイトルの長い「なろう小説」っぽい。

シェーン・ブラック監督、ロバート・ダウニー・jr(アイアンマン俳優だ)とヴァル・キルマー(バットマン俳優だ)のダブル主演。こすいコソ泥で生計を立てているロバート・ダウニー・jr演じるハリー・ロックハートが、ひょんなことからハリウッド映画の主演に抜擢されるかも……? という状況に陥り、L.A.(ロサンゼルス)で探偵をしているペリー……ゲイであると噂されているシュッとした探偵、通称『ゲイ・ペリー』に役作りのために弟子入りする――という筋書きだ。

正直いえば、筋書きには派手さもなければ、演出も地味だ。しかし、しかし、しかしなのだよワトソンくん(探偵ものなので意味もなくワトソンの名前を出す)。この『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』ことキスバンは面白い、めっちゃくちゃ、めちゃくちゃに面白いんだ!!!

ちなみに、監督のシェーン・ブラックはのちに『アイアンマン3』を監督することになる。
主演はもちろんロバート・ダウニー・jr。そう。『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』は実質的なアイアンマン、しかもDCコミックの看板ヒーロー、バットマンを演じたことのあるヴァル・キルマーとのダブル主演である!! すげえ映画だろ?

◇キスバン、とてもオシャレ!!

『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』はとてもオシャレな映画だ。オープニングは007のオマージュで、とってもオシャレな影絵アニメーションムービー。彩度を抑えた街並みと、レトロな衣装群――あれだ、『ラ・ラ・ランド』っぽい感じ。あれをイメージしてくれたらいい。そして、本格ミステリーじみた脚本!

好き〜〜〜っ!!!!
とても、好き〜〜〜っ!!!!

そう、そうなのだ。
オシャレ映画なのに、この『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』はめちゃくちゃに面白いのである、エンタメなのである、そして、超面白いのである!!!

ポイントは3つ。

・ロバート・ダウニー・jr、超スウィート
・『ゲイ・ペリー』に用意された最高ハッピーエンディング
・脚本が死ぬほど面白い

だ。もう早く観てほしい。クリスマスムービーではあるが、春を待つこの季節に今すぐ観てほしい。

◇超スーパーハイパーハッピーエンディング

『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』はものすごいハッピーエンド、大団円だ。具体的にいえば、「これは映画である」ということを力一杯使ったハッピーエンドだ。たった、たった一つの演出でだ! どういうことか、というのはぜひ本編を見てほしい。超スーパーハイパーハッピーエンディングが、「その演出」を皮切りに一気に加速するから。すごいから。物語のなかでは、死んだ人も生きている。ああ、そう。あれ。『蒲田行進曲』のエンディングにカタルシスを覚える人だったら絶対に好きですよ、ああ、なんていうネタバレ!

この映画、都合48回観ている(実際はもっと観ていると思う)わけなんだけれど、一番好きなのはヴァル・キルマー演じる『ゲイ・ペリー』にハッピーなエンディングが用意されているのだ。コソ泥だったハリー・ロックハートは、エンディングの段階でペリーの経営する探偵事務所の正式な助手として活動している。そして、明確に言及されてはいないけれど、ペリーとハリーは非常に『良好』な関係に落ち着いているのだ。

シュッとしているし、仕事もできるのに、物語のはじめにはどこか寂しそうだったペリーに、ハッピーな終幕が用意されているのだ。はじめは、ペリーのことを「ゲイだ!」とちょっと揶揄うような言動をしていたハリーはすっかりペリーのことを掛け替えのない相棒とみなして、気を許してしまう。逆に、ハリーに対して常に一線引いたような態度だったペリーも、ハリーに心を開いて、まるで10年来の親友みたいにじゃれつく…この映画にはそんなエンディングが用意されている。もう最高。

「歳を取るごとにハッピーエンドが好きになる」というのは本当なようで、年々『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』のことを好きになり続けてしまう。人生はままならないことも多いし、必ずしもハッピーエンドではない、理不尽な別れなんて、そのあたりにゴロゴロしている。だから、私は映画を観るのだ。

オシャレ映画もたまにはいい。なんか、こう、成城石井で赤ワインとか買って、『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』の49回目の再生を始めよう――そういう、日常の隣に転がっている幸せが似合う映画である。

++++
(C)2005 Warner Bros. Entertainment Inc.
映画 『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』 allcinemaページ

 

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One thought on “【名画再訪】『アイアンマン3』コンビのオシャレ映画『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』を48回観た話”

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