記憶

【エッセイ】思い出せない猫のこと

(by みくりや佐代子) <あの子を想う時、写真でなく絵で思い出されるようになったのは、私のこの軟弱な記憶力のせいだ。> 硬くなった出窓の引き戸に力を込める。開いた窓の隙間から細い風が部屋へと入り込む。窓は防犯上、10センチしか開かない。今日、小説のような一日になれ。私は唱えた。今日、小説のような一 […]

【碧い海に浮かぶ月③】「しあわせのスープ」が染み込んだ夜、かっこわるい大人は、ゆるやかに立ち上がった

(by 碧月はる) 晩秋の夕暮れどき、ふと思い立ち、てくてくと散歩をした。民家の柿の実が鈴なりになっている。枝先には、もうほとんど葉が残っていない。その光景を目にして、祖父母の庭に毎年たわわに実る柿の実と、庭の後ろにそびえ立つ山々の連なりを思った。杉の木が凛と立ち並ぶ山間のなかに、ぽつんと佇む一軒の […]

【エッセイ】会いたい人に会うように、会いたい記憶に触れるように、私は海へいく

(by 碧月はる) 海の傍でなければならない。そう、固く決めていた。大切な思い出のほとんどは、海と共にある。故郷の思い出は少ないが、海の色だけは鮮明に覚えている。紺碧の海は、今もまだあの色を失わずにいるだろうか。 先月、引っ越しをした。兼ねてから協議中だった離婚が無事に終結し、それに伴っての転居だっ […]

【名画再訪】『エターナル・サンシャイン』を観ておセンチに泣く夜

(by こばやしななこ) センチメンタルになって泣きたい夜がある。私がもっと美人なら、こうゆう感情にはならないのだろうか。とにかくそんな夜には『エターナル・サンシャイン』を観てさめざめ泣くのが一番だ。 初めてこの映画を観たときは、感情が大きく動くことはなかった。そこからいろんな経験といくつかの恋愛を […]

【エッセイ】シネマライズのあった渋谷

(by こばやしななこ) 渋谷のスペイン坂を上がったところに、シネマライズという映画館があった。 シネマライズ。その名を口にしただけで、お腹の奥がきゅっと切なくなる。私の憧れが詰まった場所。今はもう存在しない場所。 私の地元は鳥取県の港町だ。日本で1番人口が少ない県には当然、ミニシアターなどない。シ […]

【猫エッセイ】人生でいちばん美しかった桜 ~愛猫との別れで、遺影となった写真に思うこと〜

(by 安藤エヌ) 以前のエッセイ「私と猫と、愛のこと」で、私がとても猫を愛していることを書いた。 あれから半年ほどが経った。愛猫マイケルが、桜の咲く3月に享年20歳で亡くなった。家族も驚くほどの大往生、我が家で看取られながらの最期だった。 マイケルは腎不全で、数年前から体重が減り続け痩せていったの […]