ライフストーリー

【エッセイ】プロポーズされた君へ、おめでとう。これから先も、隣で書かせて

(by チカゼ) かぼすが結婚する。 その知らせを聞いていちばん最初に湧き上がったのは、「とうとうかぼすが彼氏に盗られてしまった」という身勝手な思いだった。「おめでとう」、ではなく。 ちなみにかぼすというのは、15年来の付き合いになる、ぼくの数少ない友人のひとりだ。そんなかぼすからティファニーブルー […]

【映画エッセイ】『青葉家のテーブル』~大人はもっと、ダサい自分を子どもに見せていい~

(by 碧月はる) 北欧のインテリアが好きだ。シンプルで木肌の温もりが感じられるものや、焼き物のぽってりとした趣。色は白、もしくは青を基調としたものに惹かれる。見た目だけではなく、使い勝手の良さも外せない。そんな私の好みを熟知している友人が、とあるブランドを教えてくれた。 「このお店、はるさん好きだ […]

【エッセイ】トイレットペーパーとお尻の尊厳

(by こばやしななこ) 乙女のカリスマこと作家の嶽本野ばら先生が「キティちゃんのトイレットペーパーしか使わない」とエッセイに書いてらした。 思春期から彼の作品に影響を受けまくっていた私は読んでさっそく感銘を受け、キティちゃんのペーパーを探した。そんなもんどこにも売っていやしなかった。 エッセイは「 […]

【ぼくが映画に潜るとき⑤】『パッチギ!』〜イムジン河を渡り切る意味について〜

(by チカゼ) ぼくは「祖国」がわからない。 昨年、帰化申請をして日本国籍を取得したぼくは、「日本人」になった。それまでぼくは韓国籍で、書類上では「在日韓国人4世」だったのだ。でもこの表現は、ぼくにふさわしくない。なぜならぼくのルーツは、もう少々込み入っているから。 朝鮮戦争、南北分断。イムジン河 […]

【碧い海に浮かぶ月⑦】「大丈夫じゃない」を言えるようになったから

(by 碧月はる) 梅の芳醇な香りに誘われて見上げた空は、白と青の絵の具を混ぜ合わせたような、薄い水色だった。ねじれた枝の先端でほころぶ蕾たちが、その淡い空色に小さな手を伸ばしている。風は穏やかで、空気はほのかにゆるみ、木々の新芽が膨らんでいる。季節が、一周した。この地にまた、春が巡る。 離婚に伴う […]

【碧い海に浮かぶ月⑥】365分の5日

(by 碧月はる) 大事すぎる思い出ほど、誰にも見せずに自分のなかだけに留めておきたいと思う。生まれたての赤ん坊を抱きかかえるように、そっと静かに、ゆらゆらと揺れながらその記憶に浸りたい、と。 誰かに読まれる場所に、鮮烈な記憶を置く。その行為の先で、己の人生の一端が奇異の目で消費されるたび、ゆるやか […]

【エッセイ】脚本コンクールの最終選考で落ちた話

(by こばやしななこ) 2021年、10月某日。パソコンの前に座った私は、1分ごとにクロームの更新ボタンをクリックしていた。開いているのは「創作テレビドラマ大賞」という脚本コンクールの選考ページだ。最終選考には、私の名前が残っている。 この後は、最終選考に残った10本から大賞1本と佳作2本が選ばれ […]

【碧い海に浮かぶ月⑤】愛おしい旅路の欠片と、共通言語を持たない家族

(by 碧月はる) 家族が増えた。小指の先ほどの、小さな小さな家族。全部で4匹、いや、4人。“匹”という単位は、昔から字面がすきじゃない。 先日、離れて暮らす息子たちが遊びにきたとき、川べりでメダカを捕まえた。「逃がそう」と何度か提案したが、まだ幼い次男坊はがんとして首を縦に振らなかった。 「おうち […]

【エッセイ】スネが折れただけやん。

(by ハシマトシヒロ) 人間のスネの骨は、意外と簡単に折れる。 よくあるパターンは、フルスイングしたローキックが相手の硬い部分(膝だったり、スネ同士だったり)に当たってテコの原理が働き、スネが真ん中で折れてしまうケースだ。初めて見た時は衝撃だった。スネが真ん中で90度に曲がって、膝の下にもう一個、 […]

【エッセイ】家族という呪いと、クリスマスの夜~家族愛を描いた映画に感動できなくていい~

(by 安藤エヌ) クリスマスが近づくにつれ、街は華やぎ、色づいていく。ディスプレイに飾られたサンタクロースの人形を見て思い出されるのは、幼い頃の記憶だ。 小学生の頃、冬休みになるといつも母方の祖父母の家に遊びに行っていた。家庭の事情など何ひとつ知ることのなかった私は、父親のもとから離れた場所で優し […]

【エッセイ】絶望名人カフカの人生論〜ネガティブだけどチャーミングな人〜

(by こばやしななこ) ときどき読み返す本の中に『絶望名人カフカの人生論』がある。 20世紀を代表する作家・カフカが残したネガティブな名言を集め、編訳の頭木弘樹さんが解説を加えた本だ。冒頭でまず、カフカのこんな言葉が取り上げられている。 「将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。将来にむかっ […]

【シリーズエッセイ/碧い海に浮かぶ月④】途方もなくきれいで幸福な日々の足音

(by 碧月はる) ──疲れた。 そう思った瞬間、表面張力のようにぎりぎりまで小さく保とうとしていたものが、一気にあふれた。幼子のように途方もなく泣き続け、寝間着にはみすぼらしいシミができ、滴のついた髪の毛が頬にぺたりと張りついた。 「もういやだ」 思わず漏れ出た声は、誰にも拾われることなく夜のなか […]

【映画エッセイ】“ボクたちはみんな大人になれなかった”のだろうか?本当に?

(by みくりや佐代子) 友人と会うたび、私達はどうしてこうも昔話でいつまでも語り合えるのかと笑ってしまう。 変わった口調のあの先生、エキサイティングな喧嘩を繰り広げる派手なカップル、地元から輩出されたアスリート……。話題が尽きないのではない、限られた同じ話題を繰り返すことに飽きないだけだった。 学 […]

【エッセイ】腕を組み頬を寄せ合うのが「女の友情」とは限らない

(by みくりや佐代子) 「ちゃんとお祝いをしたいから会おう」と送ったすぐ後に「忙しくて時間がとれないから繁忙期が終わったら連絡する」と返ってきたラインを見て、これは一体どちらだ、と首をひねった。本当に忙しいのか、それともただ単に今は会う気分じゃないのか。 そんな風に疑ったのは私自身が「忙しい」とい […]

【名画再訪】『しあわせのパン』~私にとってのカンパニオ〜

(by 碧月はる) パンの焼ける匂いは、人をしあわせへと導く。小麦の香ばしさとバターの芳醇な香り。思わず深呼吸をする頃には、すっかり心を手招きされてしまっていて、足は自ずとパンを頬張る瞬間へと向かっている。 私には、年の離れた二人の息子がいる。二人ともにパンがすきで、長男のお気に入りはメロンパン、次 […]

【エッセイ】会いたい人に会うように、会いたい記憶に触れるように、私は海へいく

(by 碧月はる) 海の傍でなければならない。そう、固く決めていた。大切な思い出のほとんどは、海と共にある。故郷の思い出は少ないが、海の色だけは鮮明に覚えている。紺碧の海は、今もまだあの色を失わずにいるだろうか。 先月、引っ越しをした。兼ねてから協議中だった離婚が無事に終結し、それに伴っての転居だっ […]

【エッセイ】シュレーディンガーの彼

(by こばやしななこ) トイレのドアを開けるとき「中に誰か入っているかも」という思いが頭をよぎる。「同居人が入っているかも」という意味ではない。「知らない誰かが、そこに隠れているかも」という意味だ。 トイレだけじゃない。 窓の外を見るときにはベランダに誰かいるんじゃないかと思うし、玄関のドアを開け […]

【エッセイ】名前のない物語

(by 碧月はる) 先月、離婚をした。気持ちを新たに新天地での生活を送るべく、引っ越しを決めた。 引越しまでに必要なタスクを紙に書きだし、一つ一つクリアしては印を付ける。そんな日々を過ごしている。離婚に伴う手続きと並行して行わなければならないため、細々とした作業が尽きない。それでも苗字を変えない選択 […]

【エッセイ】「可愛くなりたい」の病気には処方箋があった。コンプレックスと戦う全ての人へ

(by すなくじら) 私はたぶん、現在進行形で「可愛い」の病気にかかっている。可愛いは正義だ。顔が可愛ければ、なんでも許される。多少男癖が悪くたって、美人のあの子は「でも可愛いから」で許される。“顔は変えられないけれど、性格は変えられる”は、ほんとうは真逆。顔は今の時代、整形でもメイクでも変えられる […]

【エッセイ】勝手に輪になる~生き延びよ、エンタメに生かさるる者たち~

(by みくりや佐代子) 日頃から文章を書いている人間だけど「物書き以外の何らかに成りたい」と思ったのは一度や二度じゃない。それは、世に溢れる文章の中で「この人、好きやなあ」「この人、天才やんけ」と思うものを見つけた時、その文末にある「肩書き」に頬をビターンと叩かれるからである。 好きな書き手がいる […]

【エッセイ】21歳、キャバクラの防音扉を開けて、今私はここにいる

(by 翳目) 21歳の頃、私はフリーターだった。 専門学校を二年次の序盤で中退し、昼間はコンビニ店員、夜は都内のキャバクラで稼ぎを得る「キャバ嬢」として働いていた。キャバクラで働いていた、と言うと多くの人が意外そうな顔をする(し、自分でもよく働いていたなと感心する)が、夕方までコンビニで働き、夜は […]