エッセイ

【エッセイ】妄想ライフのススメ

(by こばやしななこ) 生きるって大変。エコバッグ持ってても買い物に忘れず持っていけたことはないし、ぼーっとしてるとレジ袋も貰い忘れて袋だけ買いにレジに並び直すハメになる。憂鬱を切り替えるために丁寧に淹れたコーヒーも、手がすべって床にぶちまけた。コーヒーと一緒に食べようと思って焼いたクロワッサンは […]

【おなかの中のくらげ②】あつかましい“生”のこと

(by みくりや佐代子) 生活の中に「キリトリ線」がある。それをプチ、プチと少しずつ千切っていくような2週間だった。産休前の引き継ぎを通して「わたししかできない仕事」は「他人にもできる仕事」へと移行した。キリトリ線を千切り終えた時、「働く自分」が社会から完全に剥がれてしまった。 最終出社日に貰った花 […]

【碧い海に浮かぶ月①】私の生の隣には、いつだって海と言葉があった

(by 碧月はる) はじめてこの海を訪れた朝、私は厚手のロングコートとふかふかのストールを身に着け、それでも凌ぎきれぬ寒さにカチカチと歯を鳴らしていた。 新天地での生活は、希望より不安のほうが大きかった。岩肌に勢いよく押し寄せる水面が砕け散る様を眺めながら、祈るような気持ちで目を閉じた。望まぬ形で置 […]

【エッセイ】とある芝居の話〜嫌いな女性を嫁にしてみる〜

(by ハシマトシヒロ) 「あなたたち、全然夫婦に見えない!」作・演出の美奈さん(仮名・年下)が、怒って芝居を止めた。 二十数年前の僕は、あるお芝居の公演に参加していた。大きな芝居ではない。仲間内の芝居だ。その「仲間」というのも、所属劇団が解散した者、所属劇団をクビになった者、入りたい劇団に入れない […]

【名画再訪】『南瓜とマヨネーズ』~迷子だった私の耳に届いた優しさの道しるべ~

(by 遠山エイコ) 曖昧な物語が好きだ。 悪を懲らしめて正義が勝つとか、恋をして駆け引きをした先の結婚とか、物語に明確な結末はつきものだけれど、エンドロールまで観てもスッキリしない作品もあって、私はいつまでも、そういう物語のことを考えてしまう。 眉間にきゅっと皺を寄せながらパソコンの画面を閉じ、冷 […]

【エッセイ】勝手に輪になる~生き延びよ、エンタメに生かさるる者たち~

(by みくりや佐代子) 日頃から文章を書いている人間だけど「物書き以外の何らかに成りたい」と思ったのは一度や二度じゃない。それは、世に溢れる文章の中で「この人、好きやなあ」「この人、天才やんけ」と思うものを見つけた時、その文末にある「肩書き」に頬をビターンと叩かれるからである。 好きな書き手がいる […]

【エッセイ】『すべて忘れてしまうから』〜恋人に「この人、稲垣吾郎と同い歳なんだよ」と言ったこともすべて忘れてしまうのだろうか〜

(by こばやしななこ) 燃え殻という奇妙なペンネームの作家を知った時、私はジムでクロストレーナー(名称がわからなかったので「両手両足 一緒に動かす マシーン」と検索した)の上にいた。ジムの備え付けのテレビで、当時まだSMAPだった稲垣吾郎氏がMCをしていた番組『ゴロウ・デラックス』に燃え殻さんがゲ […]

【エッセイ】「お金に困る」の定義

(by こばやしななこ) 先日、母と電話をしていたら「私たちお金に困ったことってないよね」と言われた。 「そうだっけ?」と返さずにいられなかった。けっこう困ってきたと思うけど。 私が人生で一番裕福だったのは、4歳あたりだ。大企業に務める父と、主婦の母と暮らしていた。私は幼稚園に通いながらクラシックバ […]

【名画再訪】『永い言い訳』〜どうしようもない大人たちよ、時には振り絞るように泣け〜

(by みくりや佐代子) 正しい母親像、正しい父親像についてこの頃よく考えている。 何をもって正しいというのかはっきりとした定めがないこの概念は、辞書を引けどネットを彷徨えどそれらしい形をしたものしかなくて、ドアの先にドアが続くようにいつまでも惑わされてしまう。 西川美和監督作品「永い言い訳」を観た […]

【エッセイ】私は英語が分からない

(by こばやしななこ) 洋画や洋楽が好きだったから、英語学習の出だしは順調だった。中学に上がる春休みには自主学習用の英語教材を買って、初歩的な文法は覚えていた。 英語で人とコミュニケーションをとってみたいと思った私が辿り着いたのは、ネットのペンパルサイトだ。それは世界中の10代がペンパル(文通相手 […]

【エッセイ】外出を自粛するならば好きなだけ眠れると思っていた

(by みくりや佐代子) 緊急事態宣言が解除され、人々は元の生活を取り戻すのではなく、新しい生活様式を模索するようにのろのろと歩き始めた。遅ればせながら私も丸3か月リモートワークだったその重い腰をようやく上げようとしている。 外出自粛が強く叫ばれていた時、生活でミクロに変化したのは会議のツールでも買 […]

【名画再訪】『百円の恋』〜心と体が連動しなきゃ生きてる意味がない!〜

(by みくりや佐代子) 自分に最も無縁な動詞は何だろうかと考えた時に、真っ先に浮かんだのは「闘う」だった。 生まれてこの方、武闘には縁がない。元ヤンキャラのバラドルが話す「嫌いな奴をタイマンでボコりました」などというエピソードトークを前にしても、一ミリも笑うことなく驚いて目を丸くしてしまう。大好き […]

【この一曲】サンボマスター“そのぬくもりに用がある”に新たな愛を知る

(by みくりや佐代子) 「涙流れて愛が生まれる」とは一体なんだろう。初めてその曲を聴いた時は、メロディラインに心躍るものの歌詞がピンと来なかった。だって「愛を失って涙が流れる」のが一般的のはず。涙が流れるのはたいてい、何かに負けた時や何かをなくした時、何かの壁にぶつかった時なのに。 ひどく揉めて別 […]

【エッセイ】木曜日の夜、ちょうどいい他人に頼りたい

(by みくりや佐代子) 木曜日の夜にごはんを一緒に食べるのは、決まってちょうどいい他人だ。 電話するよりも顔を見て話したいほど親しみをもっている相手であり、けれど土曜の夜に時間を忘れて話し込みたいほど近しい間柄じゃない。木曜日は、2時間くらいで話し終えて2軒目に行かなくても済むような、ちょうどいい […]

【エッセイ】700gの私の身体を失った話。

(by 蛙田アメコ) 人間の魂の重さは21gだという。 昔の人が、とっても杜撰なやり方でもって計測した数値だ。実験方法はとても杜撰でいいかげんなものなので、21gという数字には何の信憑性もないのだけれど、21世紀で令和な今も魂の重さといえば21gと相場が決まっている。たぶん、目にも見えなければ実在性 […]

【映画レビュー】『ジュディ 虹の彼方に』〜美しい虚構に生きた1人の少女が、晩年で見せた姿~

(by 安藤エヌ) 「その声で100万ドル稼がせてやる」 17歳で映画『オズの魔法使』のドロシー役に抜擢され、一躍大スターとなったジュディ・ガーランド。 『ジュディ 虹の彼方に』は彼女の晩年を描いた映画で、その後の彼女が歩んだ人生にスポットが当たった作品となっている。 先日、日比谷の宝塚ビ […]

【連載/LIFE−】第6回:アカデミー賞にノミネートされながら、物乞いに堕ちたアニメ作家の物語

(by 葛西祝) さまざまなジャンルから、人生や日常の欠落についてを書く連載「LIFEー」6回目は、とある破滅的な経歴を送った作家の話をしよう。 あらゆる表現に関して、残された作品以上に生み出した作家のパーソナリティがフィーチャーされることは少なくない。その作家が苛烈な人生を送ったならばなおさらだ。 […]

【推しの一作】私を“大丈夫”にさせる小説~吉本ばなな『キッチン』&『満月 キッチン2』~

(by こばやしななこ) 生きていると、どうしようもなく辛い時期がある。 大切な存在の死、いじめ、過労、病気、プレッシャー、人間関係、罪悪感、孤独、貧乏。いろんな理由で人は辛くなる。辛い時は、やり過ごす以外、方法がない。全てを辞めてじっとやり過ごすのだ。そして「努力しなくてもそのうち回復する」と思い […]

【映画エッセイ】キアヌ・リーブスに勝手な親近感を抱いている話

(by こばやしななこ) バカみたいだけど、キアヌのことをとても身近に感じる。私の言うキアヌとは、キアヌ・リーブスのことだ。 こうなってしまったのも幼い頃、父親よりも画面の中のキアヌと過ごす時間の方が多かったからだと思う。 ガチョウやアヒルが、犬とか人間とか親以外の生き物を「親だ」と認識して後ろをつ […]

【エッセイ】生きづらい私が冬が好きな、たったひとつの理由。

(by 蛙田アメコ) 冬が好きだ。 無邪気にそう言えるのは、雪と無縁の地域で生まれ育った人間であるという証左だそうだ。重く閉ざされた雪に、春になれば消え去る雪「ごとき」に生活を脅かされる日々を想像すると、なるほどそうだと納得する。雪国の冬は好きとか嫌いとかじゃなくて、季節という名の定例災害の一種なの […]

【エッセイ】見知らぬ人を時計にする

(by 冬日さつき) わたしは人をときどき時計にしている。 こんなふうに書くと、人間を魔法かなにかで時計にすっかり変えてしまうみたいだけれど、もちろんこれはぜんぜんちがう話だ。 決まった時間に決まった場所へ行くとき、かならず見かける人がいる。たとえば、毎朝会社へ向かうときに見かける人やすれちがう人。 […]