エッセイ

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【猫エッセイ】猫がいるわけ

(by とら猫) わが家には猫がいる。もちろん最初からいたわけではない。すべてはとある中華料理店から始まった。 小雨が降るあの夜、私はツレと共に、収納スペースが一切ないコンクリートの箱みたいなマンションから徒歩五分のところにある、行きつけの中華料理店へと出かけた。店につくと、どこからともなく「にゃあ […]

【食エッセイ】ウタカタの変態飲料

(by シェループ) 私は酒を一滴も飲めない。だが、ジュースは毎日のように飲む。ほとんどコーラだが。幼い頃、かの有名な「骨が溶ける」との都市伝説で飲むのを禁じられていたのもあって、成人を迎えて以降は半ば意地で飲み続けている。 コーラの種類は多種多様だ。普通のもの、ゼロカロリー、近年ではトクホ系なんて […]

【映画エッセイ】封切り初日にチャッキーを観にいった話

(by とら猫) 7月19日がやってきた。何か。映画『チャイルド・プレイ』の公開日である。私はカレンダーに「チャ」と書き込んで、この日を楽しみに待っていた。 夜も更けてから最寄りのシネコンへ行くと、そこは大勢の人でにぎわっていた。初日にチャッキーを観たい人たちがこんなにいるのか――見えない連帯感のよ […]

【エッセイ】床屋という異界

(by とら猫) 床屋が苦手だ。 あれは基本的に拉致と同じで逃げ場がない。考えてもみてほしい。鋭利な刃物を手にした他人の前で、己の急所を無防備にさらけ出す。そういった状況に置かれるのは普通に生きていればオペのときか、テロリストに捕まったときくらいである。 人はいつ発狂するかわからない、ということを私 […]

【旅行エッセイ】ベトナム旅行記(後編)

(by 冬日さつき)(中編からの続き) ベトナム人は、あまり笑わないような気がする。行きの飛行機で覚えたこんにちはとありがとうも、こんにちはのほうはともかく、ありがとうはあまり言われることがなかった。だから、覚えた発音が正しいのかわからないままだった。店員がふとわたしに笑顔を見せたりすると、安心して […]

【旅行エッセイ】ベトナム旅行記(中編)

(by 冬日さつき)(①からの続き) 次の日、ホテルで車をチャーターしてもらい、ダナンから車で40分くらいの距離にある港町ホイアンへ向かう。窓の外をぼんやり見ていると、壁に数字が書いてあるのがときどき目にうつり、何だろうと気になった。だけど、もしかしたら下品な意味かもしれないと不安になり、結局聞かな […]

【エッセイ】意中の目薬

(by とら猫) 職業柄、目薬をよく使う。 実際目薬は仕事の生産性を大きく左右する。目薬が切れてしまうと、どうも調子が出ないし、目薬のことばかり気になって何も手につかなくなる。なので普段は出不精が服を着て歩いているようなプロ引きこもりのくせに、この時だけは雨が降ろうが槍が降ろうが、自転車をこいで近く […]

【エッセイ】続・コンビニのさゆりちゃん

(by とら猫) 以前のエッセイで、とあるコンビニで働く老婆について書いた。さゆりちゃんだ。あれからさらに数か月がたち、さゆりちゃんはどうなったのだろうか。 結論から言うと、さゆりちゃんは今も同じコンビニで働いている。 見た目もだいぶ変わった。お仕着せの極みのようだったコンビニウェアもだいぶ体になじ […]

【エッセイ】母の恋人

(by こばやしななこ) 21歳の誕生日。東京で一人暮らしをする私のアパートに、両手で抱えるほど立派な花束が届いた。白いカスミソウの束にピンクのバラが一輪だけ入った可愛らしい花束の送り主は母の恋人、Yさんだ。 その頃、私はまだYさんと面識はなかったが、母の恋人は随分キザなことする男だな、と思った。こ […]

【エッセイ】居場所の記憶

(by 冬日さつき) 昔、飼っていた犬が子犬を3匹産んだ。1匹はじぶんのかわいいところをよくわかっている強気なメスで、もう1匹はいつもほかの犬とくっついて眠ろうとするこわがりのオス。あともう1匹のオスがどんな性格だったかを思い出せない。彼は生後しばらくして、近くに住む知り合いの家にゆずられていった。 […]

【旅行エッセイ】ベトナム旅行記(前編)

(by 冬日さつき) 新婚旅行の行き先にベトナムを選んだわたしたちは、結婚式を終えた3月のはじめ春を飛び越え夏にいた。 はじめての東南アジア。飛行機の中でこんにちはとありがとうの言い方をひとまず覚える。ダナンというリゾート地でしばらく過ごしたあと、ホーチミンへ行くという旅程だから、国内線を乗り継いで […]

【エッセイ】真夜中のひとり遊び

(by 冬日さつき) わたしの夜は長い。 海に向けられた定点カメラは大きくうねる波を静かにとらえている。白い飛沫は黄色いライトと混ざり合い、なめらかに消えていく。伊豆諸島、八丈島からの中継。ベッドに寝転がり、テレビを見つめる。映像に表示されている時間は現在を示してはいない。わたしはときどきこうして、 […]

【エッセイ】愉快犯~清水ミチコが教えてくれたとっても大切なこと~

(by こばやしななこ) 3年前、清水ミチコさんのコンサートがWOWOWで放送されているのを見た。 「これだ。私は清水ミチコになりたいんだ!」直感的にそう思った。 会社を辞め数ヶ月。労働でクタクタになった身体が少し元気になって、やっと無職の不安に苛まれるようになってきた頃だった。これからどうやって生 […]

【エッセイ】コンビニのさゆりちゃん

(by とら猫) さゆりちゃんをご存知だろうか。 知らないだろう。無理もない。なぜならさゆりちゃんはとあるコンビニで働くスタッフだからだ。 さゆりちゃんが他のスタッフと一線を画しているのは、かなりのご老体だということだ。顔は皺くちゃで、腰も曲がっており、 手塚治虫の漫画に出てくるお婆ちゃんを彷彿とさ […]

【野球エッセイ】電車のなかの、幻想のイチロー

(by 葛西祝) 国民的スター……? 電車のなかで誰かが、引退を発表したイチローをそう言ったのが引っかかった。声は上石神井駅から乗り込んできた学生たちからか、隣に立つスーツ姿の二人組からか。いずれにせよ、車内の誰かはイチローを“国民的”だと信じているようだった。 メジャーリーグで10年以上にわたり活 […]

【野球エッセイ】イチローとの3日の差

(by とら猫) 実はイチローと同い年だ。誕生日も3日しか違わない。 だからといって何か特別な絆が生まれることはまったくない。当然だ。何しろ向こうは世界のイチローで、一方のこちらは猫たちのカリカリ代を払うのにも窮する、しがないフリーランサーである。 はなから比べるのは間違っている。そんなこたあ百も承 […]

【食エッセイ】G線上ミッドナイトキッチン

(by 蛙田アメコ) ふと、真夜中にどうしようもなくクサクサした気持ちになることがある。 その気持ちは例えば、いつか迷って買わなかった素敵な指輪への未練だったり、あるいは未来への漠然とした不安をともなうアレルギー性鼻炎に苛まれることだったりするのだけれど、とりわけその不安がやってきたときに思い出すの […]

【アートエッセイ】プーシキン美術館展~旅するフランス風景画展

(by 武藤崇恵) 風景画。この言葉を目にして、頭に思い浮かべるものは? もちろん正解なぞ存在しない。ある人にとってはゴーギャンが描いた原色のタヒチ。あるいはルノアールの目に眩しい光溢れる緑。たとえば雪舟の水墨画。またはミレーが描いた農民のリアルな姿と遙かなる平原。あるいは何人もの画家がそれぞれ美し […]

【猫エッセイ】猫の国へようこそ

(by とら猫) 俺は猫の国にいる。 もちろん当初は人の国にいて、今だって住まい自体は以前と何ら変わりないが、気がつくと奇怪にも、自宅が猫の国に“切り替わって”いた。と言っても、別にすべての語尾に「ニャン」をつけてしゃべるとか、一日三食カリカリを供されるとか、「ニャンとも清潔トイレ」で用を足さなけれ […]

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