暮らし

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【エッセイ】命がけのハーゲンダッツ

(by こばやしななこ) 気が滅入る日々の中で、私に心の平穏を与えてくれるのは「おいしい食べもの」だ。例えばそう、ハーゲンダッツ。私にとって、ハーゲンダッツはちょっと贅沢で最高に幸せな食べ物の象徴だ。 お金のなかった大学時代、たまに買うハーゲンダッツが楽しみだった。 私の住んでいた1Kのアパートは坂 […]

【エッセイ】木曜日の夜、ちょうどいい他人に頼りたい

(by みくりや佐代子) 木曜日の夜にごはんを一緒に食べるのは、決まってちょうどいい他人だ。 電話するよりも顔を見て話したいほど親しみをもっている相手であり、けれど土曜の夜に時間を忘れて話し込みたいほど近しい間柄じゃない。木曜日は、2時間くらいで話し終えて2軒目に行かなくても済むような、ちょうどいい […]

【エッセイ】『明日の神話』は人間の煌めきだ

(by こばやしななこ) 渋谷駅。京王井の頭線とJR線をつなぐ通路に、岡本太郎氏が作った壁画が飾られている。高さ5m以上、横幅は30mもあるその作品のタイトルは『明日の神話』だ。 大学に通うため、田舎から初めて東京にでて来た日に目にした『明日の神話』のことは、ちょっと忘れがたい。 地元を発った夜行バ […]

【エッセイ】700gの私の身体を失った話。

(by 蛙田アメコ) 人間の魂の重さは21gだという。 昔の人が、とっても杜撰なやり方でもって計測した数値だ。実験方法はとても杜撰でいいかげんなものなので、21gという数字には何の信憑性もないのだけれど、21世紀で令和な今も魂の重さといえば21gと相場が決まっている。たぶん、目にも見えなければ実在性 […]

【エッセイ】生きづらい私が冬が好きな、たったひとつの理由。

(by 蛙田アメコ) 冬が好きだ。 無邪気にそう言えるのは、雪と無縁の地域で生まれ育った人間であるという証左だそうだ。重く閉ざされた雪に、春になれば消え去る雪「ごとき」に生活を脅かされる日々を想像すると、なるほどそうだと納得する。雪国の冬は好きとか嫌いとかじゃなくて、季節という名の定例災害の一種なの […]

【猫エッセイ】犬でなく、鳥でも蛇でも虫でもなく、猫だった

(by こばやしななこ) 「猫はかわいくて虫は苦手なのは差別?」と悩んだ。生き物を選別し、かわいがったり嫌ったりするのはいかがなものか。でもどうしたって猫は特別。他と平等には語れない。自分だけじゃないのだと安心するために、猫贔屓な作家たちが書いた猫に関する本をたくさん読んだ。 本を読み漁るにつけ、思 […]

【エッセイ】日々のデッサン

(by 冬日さつき) わたしがいつまでもいろんなことを覚えているのは、いつも反芻を繰り返しているからだと思う。だから、記憶力が良いだとか、そういうのとはまたちがう。ほかの人の頭がどうなっているかわからないけれど、自分の頭の中はいつもさわがしい。思い出したり考えたり、絶えずイメージを含んだ言葉が行き交 […]

【猫エッセイ】私と猫と、愛のこと

(by 安藤エヌ) 先日、気の置けない友人と恋愛経験値の話からこんな言葉が飛び出た。 「ぶっちゃけ、私がいちばん恋愛感情に似た気持ちを覚えるのって、猫なんだよね」 生粋の猫好きな私たちは、そこでどっと笑う。 「分かる~!」 猫を愛しすぎるがあまりの、胸が締めつけられる感情を恋だという。何も間違ってな […]

【エッセイ】完璧主義とわたし

(by 冬日さつき) 結婚式が終わったあと、「この先もっと自分のことを好きになれたら、いつかもう一度ウエディングドレスを着たい」と言ったら、叱られた。式に満足がいっていないように聞こえたようだった。だけれど、実際には不満なんてまったくない。自分で言うのもなんだけれど、こじんまりとした、わたしたちらし […]

【エッセイ】メロンパンの呪い

(by とら猫) 学生の頃、ボウリング場でバイトをしていた。 そこは陸橋の脇にある二十四時間営業のくたびれたボウリング場で、私は主に深夜から朝までの徹夜番としてシフトに入っていた。当時はインターネットやソーシャルメディアが今ほど盛んではなく、暇を持て余す学生たちの遊びといったらボウリング、カラオケ、 […]

【エッセイ】衿なしシャツの呪縛

(by こばやしななこ) 「男の人の衿なしシャツって好きじゃないのよね」 これは母の口癖だ。母は衿なしシャツの説明をするとき「人民服みたいなやつ」と形容するので、いわゆる“バンドカラーシャツ”という形のものを指している。あまりに頻繁にこう言われて育ったので、私自身も「男の人が衿のないシャツを着ている […]

【エッセイ】見知らぬ人を時計にする

(by 冬日さつき) わたしは人をときどき時計にしている。 こんなふうに書くと、人間を魔法かなにかで時計にすっかり変えてしまうみたいだけれど、もちろんこれはぜんぜんちがう話だ。 決まった時間に決まった場所へ行くとき、かならず見かける人がいる。たとえば、毎朝会社へ向かうときに見かける人やすれちがう人。 […]

【エッセイ】2019年、梅雨の記録

(by こばやしななこ) 子供の頃よく「自習ノート1ページ」という宿題が出た。漢字練習でも計算ドリルでもいいから、ノート1ページ分何かして行かなければならない。私はこの宿題が出ると必ず1ページ分の日記を書いた。授業で作文を書くんだからこれも自習のうちに入るだろうと閃いたのだ。楽がしたくて日記を思いつ […]

【エッセイ】渋谷は生きている

(by とら猫) “ジャンル複合ライティング業者”こと葛西祝氏に誘われ、おれはtrialogというイベントを見るため渋谷の街へ降り立った。 ちなみにtrialogというのは『WIRED』の元編集長若林恵氏が代表を務め、『TETRIS EFFECT』などのゲームで知られるクリエイター水口哲也氏と共に、 […]

【エッセイ】床屋という異界

(by とら猫) 床屋が苦手だ。 あれは基本的に拉致と同じで逃げ場がない。考えてもみてほしい。鋭利な刃物を手にした他人の前で、己の急所を無防備にさらけ出す。そういった状況に置かれるのは普通に生きていればオペのときか、テロリストに捕まったときくらいである。 人はいつ発狂するかわからない、ということを私 […]

【エッセイ】意中の目薬

(by とら猫) 職業柄、目薬をよく使う。 実際目薬は仕事の生産性を大きく左右する。目薬が切れてしまうと、どうも調子が出ないし、目薬のことばかり気になって何も手につかなくなる。なので普段は出不精が服を着て歩いているようなプロ引きこもりのくせに、この時だけは雨が降ろうが槍が降ろうが、自転車をこいで近く […]

【連載/スローな落語家と暮らしてる】第9話: スローでいるのも楽じゃない

(by 蛙田アメコ) 前回、前向きな別居を始めた我が家のことをお伝えしたこの連載。さらに新たな事実が発覚して……!? ◼️別居後に発覚した「とんでもない事実」落語家って食べていけるの? そんな疑問に、過去の記事ではこう答えた。「お金はないけれど、頂き物のご飯が多いので食べるのには困らないです。食べる […]

【エッセイ】続・コンビニのさゆりちゃん

(by とら猫) 以前のエッセイで、とあるコンビニで働く老婆について書いた。さゆりちゃんだ。あれからさらに数か月がたち、さゆりちゃんはどうなったのだろうか。 結論から言うと、さゆりちゃんは今も同じコンビニで働いている。 見た目もだいぶ変わった。お仕着せの極みのようだったコンビニウェアもだいぶ体になじ […]

【エッセイ】母の恋人

(by こばやしななこ) 21歳の誕生日。東京で一人暮らしをする私のアパートに、両手で抱えるほど立派な花束が届いた。白いカスミソウの束にピンクのバラが一輪だけ入った可愛らしい花束の送り主は母の恋人、Yさんだ。 その頃、私はまだYさんと面識はなかったが、母の恋人は随分キザなことする男だな、と思った。こ […]

【エッセイ】居場所の記憶

(by 冬日さつき) 昔、飼っていた犬が子犬を3匹産んだ。1匹はじぶんのかわいいところをよくわかっている強気なメスで、もう1匹はいつもほかの犬とくっついて眠ろうとするこわがりのオス。あともう1匹のオスがどんな性格だったかを思い出せない。彼は生後しばらくして、近くに住む知り合いの家にゆずられていった。 […]