みくりや佐代子– Author –

ライター&エッセイスト。微炭酸な文章を広島から発信。著書『あの子は「かわいい」をむしゃむしゃ食べる 〜恋をやめられない私たち〜』『働く女の「しないこと」リスト』が好評発売中。個人リンク: note/Twitter
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【エッセイ】「何かに夢中になる人」の成功を喜べない
三杯目のアイスカフェラテを注文するのを躊躇した。目の前には、やけにハツラツと注文をとる学生アルバイトが立っている。おあずけを食らっても次の餌が貰えると信じて... みくりや佐代子 -
【エッセイ】思い出せない猫のこと
<あの子を想う時、写真でなく絵で思い出されるようになったのは、私のこの軟弱な記憶力のせいだ。>硬くなった出窓の引き戸に力を込める。開いた窓の隙間から細い風が... みくりや佐代子 -
【エッセイ】センチメンタル・シンガポール・パンツ
シンガポールの街並みに並ぶ屋台を覗き込み、あれでもないこれでもないとフラフラ歩いたあの夜を思い出す。あの夜、夕飯はどこにしようかと選んでいた私たちは、選んで... みくりや佐代子 -
【推しの一作】『30までにとうるさくて』は決して“女性のためのドラマ”ではない
冬模様に変化した街で、ショートブーツのファスナーを上げ切っていない人を二度見た。一度はバスの車内、一度はデパートの地下の総菜売り場だった。かかとから上へ伸び... みくりや佐代子 -
【映画エッセイ】『猿楽町で会いましょう』〜若さの本当の価値と取り戻したいもの〜
「若さ」を恥ずかしいと思うたちだった。なぜか。この国は、若いこと、幼いことに価値があるとされているからだ。とりわけ女性は。 若い女性の肌や髪が画一的な「美しさ... みくりや佐代子 -
【映画エッセイ】“ボクたちはみんな大人になれなかった”のだろうか?本当に?
友人と会うたび、私達はどうしてこうも昔話でいつまでも語り合えるのかと笑ってしまう。変わった口調のあの先生、エキサイティングな喧嘩を繰り広げる派手なカップル、... みくりや佐代子 -
【おなかの中のくらげ④】朝は二度来る
「くらげ」と呼んでいたおなかの中の赤ちゃんが、第三子として誕生して約2か月。黄疸の検査で通院は続いていたものの空腹や眠気を訴える泣き声は力強さがあって、生命力... みくりや佐代子 -
【おなかの中のくらげ③】今はまだ黄色の子
くらげが産まれ落ちた。それは順を追って丁寧に私に知らされた。眼鏡もコンタクトも外し、身体に麻酔が回っていた私には、ぼんやりと滲む世界の中でただ天井を見てハイ... みくりや佐代子 -
【おなかの中のくらげ②】あつかましい“生”のこと
生活の中に「キリトリ線」がある。それをプチ、プチと少しずつ千切っていくような2週間だった。産休前の引き継ぎを通して「わたししかできない仕事」は「他人にもできる... みくりや佐代子 -
【おなかの中のくらげ①】「正解は、命です」
「くらげみたい!」と笑ったのは私じゃなくて君の姉だから、どうか私を恨むのはやめてほしい。 エコー写真を覗きこんですぐ、6歳の娘は驚いて顔をあげた。「くらげ」と... みくりや佐代子 -
【名画再訪】「愛がなんだ」と吐き捨てるように言ったあの子へ
愛がなんだ。愛がどうした。そう言えるだけの威勢があるならばいい。他人がどう言おうと自分の差し出すこれこそが愛なのだと、言い切れるほどの意地があるならばいい。... みくりや佐代子 -
【エッセイ】腕を組み頬を寄せ合うのが「女の友情」とは限らない
「ちゃんとお祝いをしたいから会おう」と送ったすぐ後に「忙しくて時間がとれないから繁忙期が終わったら連絡する」と返ってきたラインを見て、これは一体どちらだ、と... みくりや佐代子 -
【エッセイ】「自分はこういう人間である」はだいたい錯覚らしい
部屋が綺麗になった。リビングのソファに積み重なっていた衣類たちは片付けられ、キッチンカウンターは本来の乳白色を取り戻した。ズボラで掃除嫌いの私にとって部屋が... みくりや佐代子 -
【名画再訪】『かもめ食堂』~「食べる」というこの世で最も人に優しい行為について~
カレーライスを食べる人には共通項がある。それは誰もが「大きな口を開けること」。 あたたかいカレーライスが目の前に現れると、どんなに可憐な女性でもちまちま食べは... みくりや佐代子 -
【エッセイ】「似た者夫婦」でない私たちにとって大切な唯一のこと
コロナ感染症拡大の影響で気軽な外出もはばかられるようになり、それならばと思い切って遠出をすることになった。車で一時間、街の外れまで家族でドライブ。川沿いの道... みくりや佐代子 -
【映画レビュー】『花束みたいな恋をした』~あまりに静かな恋と暮らしに「花束」の新たな意味を知る
(注:本記事では一部、映画の結末に触れています。)映画『花束みたいな恋をした』。2015年の東京を舞台にした、大学生カップルの恋愛の軌跡。人気俳優の菅田将暉と有... みくりや佐代子 -
【エッセイ】勝手に輪になる~生き延びよ、エンタメに生かさるる者たち~
日頃から文章を書いている人間だけど「物書き以外の何らかに成りたい」と思ったのは一度や二度じゃない。それは、世に溢れる文章の中で「この人、好きやなあ」「この人... みくりや佐代子 -
【映画エッセイ】『えんとつ町のプペル』を観に行ったら息子の身長がちょっと伸びた。
「鬼滅とプぺルいつ行く?」 話題の映画「えんとつ町のプぺル」は、ひとりで身軽に観に行こうと思っていた。 ただ対象年齢が幅広いと知ったので、それならばと小学3年生... みくりや佐代子 -
【エッセイ】12月16日。ほくろを取った。
(by みくりや佐代子) 2020年12月16日。天気、曇りのち雪。仕事、休み。こんな繁忙期に一律の平日休みである。休みは多いにこしたことはないが、いったい誰の都合でこ... みくりや佐代子 -
【名画再訪】『八日目の蝉』〜「男性の不在」に際立つ二種類の母性~
隣で眠る子供の寝顔を見つめながら、どうしてこんなに可愛いのかと疑問に思うことがある。それは慈しみにあふれた湧き上がる愛情とはまた種類が違い、参考書を開いて受... みくりや佐代子 -
【エッセイ】傷つきやすい人のための小説の読み方
小説を読む前に、安全バーが欲しい。 朝の通勤バスの中でKindle画面を立ち上げ今日読む本を選ぶとき、注意深く「あらすじ」を読み込んだり本のタイトルに「感想」のワー... みくりや佐代子 -
【エッセイ】半径2メートルに塩をまくように生きる
肌寒い日の信号待ち。喫茶店の入り口に大きな盛り塩を見た。お茶碗一杯くらいの。驚きのあまりじっと見入ってしまっていたようで、ちょうど店先の掃き掃除をしていた奥... みくりや佐代子 -
【名画再訪】人はみな多大な迷惑をかけながら生きる〜『こんな夜更けにバナナかよ』
「人に迷惑をかけてはいけません」。その言葉を幼い頃から刷り込まれているから私たちは今日も無理な納期に向き合うし、自分のタスクが終わるまで退社しない。迷惑をか... みくりや佐代子 -
【名画再訪】汝、社会に抵抗せよ!映画『アズミ・ハルコは行方不明』に見る“世の理不尽”との戦い方
理不尽だ!納得できない!こんな世の中イヤになる!そんな気持ちになったことが誰もが一度はあるのではないだろうか。 私にとってのそれは高校3年生のこと。友人に誘わ... みくりや佐代子 -
【エッセイ】14歳の私と堂本剛くん~かつてアイドルに本気の恋をした全ての人を肯定したい~
「アイドルを本気で好きになりました。どうすればいいですか?」 やべえ台詞だ。痛々しい。見るに堪えない。けれどこれは14歳の私だった。 KinKi Kidsを知った時期を覚... みくりや佐代子 -
【エッセイ】270円でサカナクションに生きる力を貰った話
仕事を早めに切り上げて午後にふらりとヒトカラへ行った。 とりあえずサカナクション「新宝島」を入れて、一度目はPVを視聴する。リリースからはもう1年経つ曲だが自分... みくりや佐代子 -
【推しの一作】あなたの生きる世界は本当にノンフィクションですか?~真下みこと著『#柚莉愛とかくれんぼ』〜
想像はフィクションである。想像と実際は別物である。けれど真下みこと著「#柚莉愛とかくれんぼ」は小説でありフィクションであり、現実である。「矛盾しているじゃない... みくりや佐代子 -
【名画再訪】『永い言い訳』〜どうしようもない大人たちよ、時には振り絞るように泣け〜
正しい母親像、正しい父親像についてこの頃よく考えている。 何をもって正しいというのかはっきりとした定めがないこの概念は、辞書を引けどネットを彷徨えどそれらしい... みくりや佐代子 -
【名画再訪】『her~世界でひとつの彼女~』から見る近未来的で原始的な愛の形
「愛してる」だの「そばにいて」だの、恋愛には言葉がツールとして用いられることが多い。指輪というただの金属が「結婚しよう」という台詞によってプロポーズとみなさ... みくりや佐代子 -
【エッセイ】外出を自粛するならば好きなだけ眠れると思っていた
緊急事態宣言が解除され、人々は元の生活を取り戻すのではなく、新しい生活様式を模索するようにのろのろと歩き始めた。遅ればせながら私も丸3か月リモートワークだった... みくりや佐代子
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