【名画再訪】劇薬『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のヤバさを説明したい

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夏だ!!ブチ上がりたい!!!

ムダに血湧き肉躍るこの季節、持て余した熱をどう発散させようか。フェス?ビアガーデン?海?どれも全然ブチ上がらない。滾っているのは気持ちだけで、こちとら体は貧弱なのだ。暑さも人混みも日差しも酔っ払いもウンザリする。

ゴリゴリのインドア派が夏の熱情を昇華させるベストな方法は、涼しい部屋で『マッドマックス』を爆音で観ることだ!ということで、合法的にハイになれる劇薬映画『マドマックス 怒りのデスロード』を紹介しよう。

ただ、この作品は言語に頼らず視覚的に理解する映画で、面白さの方向も放射線状に広がっている。魅力をかいつまんで伝えるのが難しい。公開当時、友人から「マッドマックス観た人みんなヤバい!しか言わないから何がヤバいか全然わかんないんだけど」と言われた時も「説明する!」と意気揚々と話し始めたものの次第に興奮して「とにかくヤバいの!」を連呼するのみになってしまった。友人は翌朝すぐ映画館に行ってくれ「ヤバかった!」と連絡をくれたので結果オーライではあったが…もう少しきちんと言語化したい。

「俺の名はマックス」という主人公の語りから映画は始まる。資源を奪い合い、核戦争を経て砂漠化した世界。マックスはかつて警察官だったが、今、荒野に1人立っている。状況をナレーションで説明した彼は、開始3分で土地の支配者イモータン・ジョーの軍に捕まってしまった。

戦士にフレッシュな血液を与える「輸血袋」として車にくくりつけられたマックス。その時、ジョーが指揮する軍の隊長・女戦士フュリオサがジョーを裏切り、「子産み女」として監禁されていた5人の妻たちと貴重な資源を盗んで逃亡する。混乱に乗じて逃げ出したマックスは、フュリオサたちの乗った車をカージャックし、全員で追っ手から逃げるというストーリーだ。

アクション、美術、音響など全部が最上級なのだが、今回言及したいのは映画の構造。物語の編み上げ方が、尋常じゃなくうまい。

元警察官のマックスが過去に護れなかった人々の亡霊が、時折フラッシュバックのように彼の前に現れる。彼は「俺は生者からも死者からも逃げている」と言う。この作品はアイデンティティを失いもはや人というより「生き抜く本能の塊」になったマックスが、彼自身に戻る話でもある。

映画のもう1人の主人公は、女戦士フュリオサだ。彼女は子どもの頃、ジョーが支配する土地へさらわれて来た。戦士になったフュリオサは戦闘軍のウォーボーイズたちを束ねていたが、故郷「緑の地」へ戻るため、そしてジョーの子供を産むことを強制された女性たちを解放するために逃げ出すのだ。この作品は、フュリオサが求め続けたホーム(緑の地)を取り戻す話でもある。

ストーリーは、非常にシンプル。「緑の地」を目指し荒野をまっすぐ1本の線を引いたように走り続けるのみだ。後半でターニングポイントを迎えても、結局は1本の線の中に収まる。この1つのラインの中で2人の主人公の物語が相互に作用し合う。そこに、ウォーボーイのニュークスという愛おしい男、それから女性たちの物語も重なってくる。何本もの細い糸を撚って1本の太い糸にするように、幾重にも重なり合ったテーマをひとまとめに観せられるので、初見では言葉にできない感動に包まれる。

アクションで話が進んでいく構造もすごい。この手の作品はアクション中に話が止まることが多く、戦い自体を楽しめない私は白けてしまうこともある。だがこの映画は一体どうなっているのか…カーチェイスしながら肉体的なバトルがあり、同時に話も展開し、役者の表情や仕草で多くのことが語られる…大量の情報をフルスピードで脳に投入され続けるのが最高に気持ちいい。

さらに登場人物の配置も見事だ。資源を独占する支配者、支配者を妄信し自ら駒として死ぬウォーボーイズ、モノ扱いの女性たち、男社会の中で戦ってきた女戦士、過去にトラウマを抱えたアウトロー。現実逃避のエンタメにならず、支配者層と被支配者層の生々しい現実が投影されている。性的虐待を受けて育った過去を持つ劇作家のイヴ・エンスラーがアドバイザーとして参加しており、特に女性の問題に関して丁寧に描かれていた。5人の妻たちのキャラクターは描き分けられ、類型的でないのが良い。彼女たちは未来への希望を象徴する存在だ。フュリオサは希望を連れて逃げたのだ。モノ扱いされる地獄を終わらせるため、未来への希望をつなぐため、団結し命がけで戦う女性たちの描写に肩入れせずにはいられない。男臭そうな映画だと思わず、ぜひ女性にも観てほしい。シビれるから!!

書きたいことは山ほどあるが、語りきれないものを語るのは無粋だ。この作品を説明する言葉はやはり「ヤバいからとにかく観て!」に尽きる。できるだけ大きな画面で大きな音量で!!

++++
(c)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」allcinemaページ



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この記事を書いた人

サブカル好きのミーハーなライター。恥の多い人生を送っている。個人リンク: note/Twitter