2022年6月

【ぼくが映画に潜るとき】第6回:『ヴィオレッタ』〜母の「愛してる」からの逃亡〜

(by チカゼ) ものすごく幼いころ、ぼくはけっこう可愛い顔をしていた。目尻のきゅっと上がったぱっちりとした二重に、ふさふさの長いまつ毛。薄いくちびる、白い肌。くるくるの赤い巻き毛。ぼくは本家筋では実に40年ぶりに誕生した「女の子」であり、ぼくの代ではぼく以外全員男子だったから、親族じゅうに蝶よ花よ […]

【エッセイ】6万字の愛~小説『愛をくれ』を書いて、今、私が思うこと

(by 安藤エヌ) 2017年に、6万字の小説を書いて文芸賞に応募した。仕事の合間を縫い半年間におよぶスケジュールを立て、自身の半生と向き合い、痛みと喜びを書きなぐった。ここまで長い小説を書いたのは、生まれて初めてだった。 それは物語の中の母親とその娘に、私の過去を追体験させた半自伝的な小説だった。 […]

【武道家シネマ塾】第9回:『あゝ、荒野』~ユースケ・サンタマリアに憧れて~

(by ハシマトシヒロ) 10代の頃の僕にとって、寺山修司という名前は、自分自身を「文学青年」に見せるための便利なアイテムだった。 女の子と待ち合わせる時は、壁にもたれて『家出のすすめ』などを読んでいた。おしゃれに見えると思ったからだ。 本棚に、寺山修司を並べた。ついでに、中原中也やボードレールやラ […]

【映画レビュー】『流浪の月』~体も、心も、そのすべては持ち主だけのものなのに、そんな当たり前の尊厳が簡単に踏みにじられる世界で、私たちは生きている

(by 碧月はる) 人は、自分の見たいようにしか物事を見ない。事実はひとつだが、どの立ち位置から眺めるかで、受け止め方は大きく変わる。見たいように見て、信じたいものを信じる。本来それでいいのだと思う一方、その裏側で絶望に苛まれる人がいるのなら、それはやはり間違っている、とも思う。 善意と悪意の境目は […]