2021年12月

【推しの一作】『キャロル』と洗練された退屈な街

(by 隷蔵庫)(注:本稿では一部、物語の核心に触れています) 2015年の冬、映画『キャロル』が公開された。ポスターに印刷されたケイト・ブランシェットとルーニー・マーラと、美しいキャッチコピーが目を引く。 映画はとてもよくできている。原作の空気感やメッセージを十分伝えきれていると思う。フィルムのよ […]

【エッセイ】家族という呪いと、クリスマスの夜~家族愛を描いた映画に感動できなくていい~

(by 安藤エヌ) クリスマスが近づくにつれ、街は華やぎ、色づいていく。ディスプレイに飾られたサンタクロースの人形を見て思い出されるのは、幼い頃の記憶だ。 小学生の頃、冬休みになるといつも母方の祖父母の家に遊びに行っていた。家庭の事情など何ひとつ知ることのなかった私は、父親のもとから離れた場所で優し […]

【エッセイ】絶望名人カフカの人生論〜ネガティブだけどチャーミングな人〜

(by こばやしななこ) ときどき読み返す本の中に『絶望名人カフカの人生論』がある。 20世紀を代表する作家・カフカが残したネガティブな名言を集め、編訳の頭木弘樹さんが解説を加えた本だ。冒頭でまず、カフカのこんな言葉が取り上げられている。 「将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。将来にむかっ […]

【シリーズエッセイ/碧い海に浮かぶ月④】途方もなくきれいで幸福な日々の足音

(by 碧月はる) ──疲れた。 そう思った瞬間、表面張力のようにぎりぎりまで小さく保とうとしていたものが、一気にあふれた。幼子のように途方もなく泣き続け、寝間着にはみすぼらしいシミができ、滴のついた髪の毛が頬にぺたりと張りついた。 「もういやだ」 思わず漏れ出た声は、誰にも拾われることなく夜のなか […]

【映画エッセイ】“ボクたちはみんな大人になれなかった”のだろうか?本当に?

(by みくりや佐代子) 友人と会うたび、私達はどうしてこうも昔話でいつまでも語り合えるのかと笑ってしまう。 変わった口調のあの先生、エキサイティングな喧嘩を繰り広げる派手なカップル、地元から輩出されたアスリート……。話題が尽きないのではない、限られた同じ話題を繰り返すことに飽きないだけだった。 学 […]

【武道家シネマ塾】第4回:『キス・オブ・ザ・ドラゴン』~あの頃ジェット・リーは、もう少しでひとりのダメ人間を立ち直らせそうになった~

(by ハシマトシヒロ) 2001年。 大学まで出してもらったにもかかわらず、父親に怒鳴られ、母親に泣かれ、弟たちには白い目で見られ、「長男は元々いませんでした」という扱いを受けながらも、なんとか踏ん張っていた演劇活動も、すでにほぼ詰んでいた。 風呂無しトイレ共同で家賃一万七千円の木造アパートから、 […]

【おなかの中のくらげ④】朝は二度来る

(by みくりや佐代子) 「くらげ」と呼んでいたおなかの中の赤ちゃんが、第三子として誕生して約2か月。黄疸の検査で通院は続いていたものの空腹や眠気を訴える泣き声は力強さがあって、生命力のあらわれのようだった。 「新たな一員」を迎え入れたことは長男と長女の生活にも変化をもたらした。当然だが「はい!今日 […]