(by 蛙田アメコ

物語るモノは、いたるところに溢れている。
テキスト、音声、あるいは言葉もなく語るもの。
ライトノベル作家がハマっている物語コンテンツについて綴ります。

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禍話とは 〜失われた部室《らくえん》を求めて〜

夏、到来!!!!
怪談シーズン、到来!!!!
というわけで皆さん、怖い話は好きですか?
私は大嫌いです!!!!!

「ホラー嫌いのラノベ作家」というキャラで以前に記事を書かせていただいたこともありますが(実際、「キャラ」などではなく私は本当に心からホラーが嫌いです、怖いので…)、今回はオリジナルの怖い話をひたすら発信し続ける、狂気のコンテンツについてお話ししようと思います。

……そう、みんな大好き「禍話(まがばなし)」です。

ツイキャスでのネットラジオ配信から始まり、なんとこのたび、夏の特別番組として地上波放送されることになったおばけコンテンツです(怖い話だけに)。

2021年7月11日(日)夜11時
「スペシャルドラマ 禍話」(ABCテレビ制作)
番組公式HP

……これは私の予想ですが、今後は毎年夏の恒例めちゃこわドラマ番組として長期にわたってシリーズ化し、2010年代生まれの子どもたちがのちに【子どもの頃のトラウマ番組】として語り草にするはずですね。そしてさらには「存在しないはずの放送回」などのまことしやかな都市伝説とかが生まれる感じの伝説のコンテンツになるんじゃないかと思いますよ、ええ。

さて。

結論から申し上げると、私はこのコンテンツのせいで怖い話が……欠かせない体にされてしまいました……!!
くそ!! くそっ!!!!
私はかねてより、怖い話がもっとも怖くなるシチュエーションは「ある日クーラーの効いた部室でだらだらしていたら、先輩が突然思い出したように身近で起きた不条理な出来事を話し始める」だと思っているわけですし、これが一番怖いって清少納言も言っていました(※諸説あり)。禍話というツイキャスは、「「「「それ」」」」」そのものなんですよ。

というわけでこの記事は、
「禍話を知らないあなた! この夏、禍話で君も恐怖!!」
「リライトを楽しんでいる&ドラマを観たあなた! 本放送を聴いてくれ!!」
という恐怖伝道記事となっております。

禍話とは…

土曜日の夜11時から一時間ほど、猟奇ユニット・FEAR飯が発掘してきた怖い話をお届けする怪談ツイキャス。虚実の合間に魔が見え隠れし、気づけばアナタが次の体験者に……?また、当方は青空怪談なので、いかなる二次使用も可能です!ただし、怖くしてくれないと……。

語り手担当のかぁなっき氏Twitterアカウントより

知る人ぞ知る、知らない人もちょっと知ってる大人気コンテンツであります。

放送には語り手のかぁなっき氏の大学・大学院時代からの交友関係を中心に、1名〜3名の聞き手が放送に登場します。

2016年8月分が最も古いアーカイブでありまして、それ以降ほぼ休みなく週1回、オリジナルの怖い話を配信し続けているのです。2021年7月1日現在、259件(259件ッ!!!!)のアーカイブが残っており、それらはほぼすべて、1時間から3時間の収録時間を誇っておるわけですが……いや3時間って。『バーフバリ』ないしは『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』ですよ。膀胱がもたねぇ。語り手担当かぁなっき氏がプロの落語家かってくらいにトークがうめぇわ声がいいわという要素がなかったら成立しないのですわ……。

この禍話という音声コンテンツ。怖い話がめちゃくちゃ怖いのは大前提としてですね……とにかく、この語り手担当かぁなっき氏、および聞き手として登場するかぁなっき氏の大学の後輩さんたちのキャラクターが濃い。

「語り手担当」であるかぁなっき氏は、プロのラジオDJであるとしか思えぬトーク力を持つプロの書店員さん、そして野生のプロのエンターテイナーでいらっしゃいます。徹底した怖い話に関する先行研究に裏打ちされた話題と、サービス精神旺盛なトークは、横溝正史からB級映画にちょい役で出ているヴァル・キルマーにまで及び、あとよくわからないけれどいつもスタローン(cv.ささきいさお)のモノマネをしています。怪談や怖い話への一家言で集落ができてしまうタイプのストロングスタイルでいらっしゃるので、怖い話以外のその手のトークもめちゃくちゃ面白いです。ずるいですね。あと文学博士でいらっしゃり、ドラマ化に際しては人気声優・入野自由が演じることになりました。設定を盛りすぎだ……。「禍ちゃんねる」というタイトルで、怖い話抜きのコンテンツを語る配信を不定期でされているので、怖い話が苦手な方はそちらをお試しあれ。

聞き手=あいづち担当の加藤よしき氏は、ドラマ化により水谷美果が演じる美女になりましたが(女体化ってやつです)、実際は男性です。声質が柔らかく、また、たぶん弱めのWi-Fiを使って遠隔地から放送に参加していらっしゃるため、基本的に配信では声が遠いです。しかしッッッ、発言時間も限られているにも関わらず、確実に爪痕を残されるエンターテイナー。ライターでありツイッタラー、ついてはサブカルに造詣が深く、そして、かぁなっき氏のことがものすごく好きなのだなというのを前面に押し出したキャラクターをしておられます。三十路を越えた男が「あの……先輩……」と他人を呼称しているのを聴くのは、なかなかに刺激的ですね。放送にたびたび放送する「K荘」なる学生アパートでは、かぁなっき氏とお隣さん同士であったようです。ラブコメか。

過去に遡ると聞き手の鬼こと佐藤実氏、禍話リライト本編集者である和田文也氏などが聞き手として放送に登場し、怖い話提供者としてはさらに多くの人物の名前が挙がるわけです。かぁなっき氏はじめ、みなさんの先輩でいらっしゃる「ジィルさん」氏(事故物件在住)、こっくりさん話蒐集家のK氏はじめ常連投稿者のみなさん、民俗学系怖い話を執筆提供しておられる鬼才・余寒氏など、多才かつ多彩な交友関係が配信にお出しされます。私のような木っ端ラノベ作家的にはKADOKAWAメディアワークス文庫とかでキャラクター小説になりそうな人物配置だなと思うレベルでございます。

……で、そのいずれもが強烈な個性とやたらと高度な専門性を発揮し、エンタメ性の高い配信をされているんですよ!!! なんじゃそりゃ!!!

それもそのはず、この人達の多くが文学や経済学の修士・博士号を所持していたり文筆業だったりしておられるのです。もはや重めのライフワークとして怖い話や映画をご覧になっていて……となると、何が起きるか。

そう。この禍話。
怖い話と怖い話の間をつなぐのは、軽妙洒脱かつマニアックなエンタメトークなのでございます!!!! いやそれはズルいんだわ!!!

ほら、高校・大学時代、サークルや部活にいませんでしたか?
やたらとサブカルに詳しく、すさまじいトーク力を持ち、ちょっと厄介でめちゃくちゃ面白い先輩達が……いたでしょ、ねぇ、いましたよね?
大学卒業後、人は永遠にあの『部室』を失うわけです。仕事に追われ、故郷を離れ、あの失った部室に恋い焦がれて日々を過ごす人々のなんと多いことか。

博識で面白くてやっかいで弁の立つ先輩たちの軽妙なトークに耳を傾けていたと思ったら、そこからシームレスに死ぬほど禍い話が繰り広げられる。それを聞いているリスナーたちがコメント欄でワーとかキャーとか言いながら怖い話に打ちのめされる……ほらね、完全に部室ですよ、これは。私の思う禍話の「「「「本質」」」」がこれなのであります。疲れた社会人がハマらないはずがなかったんです。

禍話はインターネット上の疑似部室。その日常の延長にて、明らかな非日常(こわい)が語られるとき、人は最も恐怖を覚えるのです……!! 部室で先輩が語ってる怖い話なんだから、そりゃ怖いわよ。もう許してくれ。

この禍話にはさらに仕掛けがあります。
めちゃくちゃ熱心かつ才気走りまくったリスナーが『禍話リライト』と称して放送された怖い話を小説形式・イラスト形式・漫画形式などで再生産し、noteやTwitterで発信しております。これもひとえに、怖い話としての完成度が高いゆえのことでしょう。ツイキャス禍話を聞いたことがない方でも、禍話リライトを楽しんでいる方も多いと思います。今回のドラマ化ももはやリライトですよ。感染する恐怖って趣で、いいですよね。そういうの。

この記事を作成するに当たって、放送直後に全ての怖い話にタイトルをつけるという大役をになっているリスナーであり、また、noteでのリライト記事作成の第一人者のひとりであるドント氏のリライト記事をすべて読んだのですが、ちょっとあり得ないくらいに怖いです……ツイキャスの配信では、前述の洒脱なトーク部分で誤魔化されている恐怖をカルピスの原液のごとき濃さで流し込まれている気がします。本当に勘弁してほしい。

『疑似部室』という語られるシチュエーションの構造も怖い。発信される怖い話もめちゃくちゃ怖い。……もうお手上げです。

毎週土曜日にリアルタイムで禍の直撃を喰らった日には、そりゃもう他のリスナーと手と手をとりあって恐怖に震えるしかありません。でね、それがね、ちょっと楽しいのですよ。なるほど、怖い気持ちになるのも楽しいし、こうしてワーとかキャーとか騒ぐことも楽しいことなのか……それに気付いてしまえば最後、ホラーやスプラッタを憎み、嫌い、遠ざけてきたはずの私が400時間を超える禍話のアーカイブを視聴しつくすのに、そう時間はかからなかったわけで……いや、400時間はかかったわ。

【入門編はこちらがおすすめ】
禍話BEST OF BEST(加藤よしき選)

そんな大人気怪談ツイキャス禍話ですが、ドラマ化のほかにも小学館Maybe! vol.11にて雑誌デビューされました!! なんと、ここでしか読めない怪談を初卸しているという徹底ぶり。どういうプロ意識なのだ、妥協を知ってくれという気持ちです……普通に怖いやんけ……。

ホラー嫌いだったはずの私がいつのまにかのめり込んでいた禍話。
この夏、あなたも聴いてみませんか。
まずはドラマ、観てみませんか。

だってほら。流行病でまだまだ外出できないし。
ずっと誰もいないはずの家にひとりでいるとあの日の部室が恋しくなってきて、誰かの喋り声が聞こえてきたりするじゃないですか……。

++++
(c) ABC TV
『禍話』公式Twitterページ

 

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