【ノベルゲーム講座】第1回:文章重視なノベルゲームの文章の書き方

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(by 隷蔵庫

私がノベルゲームを作り始めてから、かれこれ3年が過ぎた。

今まで計4作を完成させてきたが、その過程で自分なりに文章の書き方をノベルゲーム用に改良してきた。そこで、まだ模索途中ではあるが、文章の書き方、文章重視なゲームの演出についてわかったことを記事にしようと思う。

私はノベルゲームに詳しいわけではなく、そのため少し変わった書き方をしているかもしれないので、この記事を踏み台にしてノベルゲームの文章について考えるきっかけを作ることができれば幸いである。私が使用している制作ツールはティラノスクリプトだが、どのツールでも変わらないことを書く。

① ノベルゲームと小説の違い
クリックして進むこと。画像や音楽、場合によってはUIや映像が文章と一緒に表示されること。大きな違いはこの二つではないだろうか。特に文章以外の情報が表示されるのは大きい。そのため、背景画像やSEでわかることは文章にするとくどくなることがある。例えば立ち絵を一緒に表示させる場合、見てわかるキャラクターの特徴をわざわざ文章で書く必要はあまりない。ただし心情や周りの反応など補足説明を書くのは無駄ではない。

② 時間の概念——文章のテンポ
小説は読者が完全に時間をコントロールできる。ノベルゲームは作者が時間をコントロールできる隙間がある。つまり映像的な間の概念を考える必要が出てくる。例えば、とあるキャラクターが黙るシーンがあったとして:

 女A「……」
 [wait time=”1000”] (←1秒間経過させる命令 1000ミリ秒=1秒)
 男B「何黙ってんだよ?」

女Aの沈黙が、小説なら文章だけで済むところを、ノベルゲームは実際にウェイトを使って数秒セリフとセリフの間に空白の時間を挟むことができる。さらに以下のように
 
 女A「……ちょっと言いにくいんだけど……」
 [wait time=”1000”]
 男B「何が?早く言ってよ」
 [wait time=”1000”]
 女A「うーん……」
 [wait time=”2000”]
 男B「早く言えよ!」

ウェイトを使い分けることで、プレイヤーも男と同じようにイライラしてこないだろうか。このように、プレイヤーはクリックしても自分の思った通りに物語の時間が進行するとは限らない。小説ならページが飛ばせるが、ノベルゲームでは飛ばせない。さらに、気を失ったり、停電したり、誰かに目を覆われた時、画面を真っ暗にしてプレイヤーを戸惑わせることもできる。アニメや映画では定番の演出だが、小説には不可能だ。ノベルゲームは映像的な演出と小説ならではの細かな心情説明や目に見えない事柄、両方いいとこどりで描写できる。

③モンタージュの概念
映画にはモンタージュという技法がある。
・モンタージュ=ショットとショットを繋ぐことで意味が生まれる技法のこと。

以下の画像はモンタージュによってもたらされた認知の歪みを表したものである。

男の顔は同じなのに、後に続く画像によって男の表情の意味が違って見える。これはクレショフ効果と呼ばれる。一見難しそうに見えるが、映像編集では日常的に行われていることだ。これがノベルゲームの文章となんの関係があるのかというと、文章と画像、効果音などでモンタージュ効果ができるのだ。例えば:

 文章:子供A「あっ」
 画像:手を伸ばす子供。
 暗転。
 SE:ガシャーンと何かが割れる。

こんな感じで、3つのメディアを総動員してシーンを作ることができる。上記の場合は子供が何かを割ってしまったという場面を表現しているように見えるだろう。

これを利用してミスリードをすることも可能だ。例えば、次のシーンで子供ではなく母親が何かを落としたところを画像として写すとか、子供が何者かに割られた窓ガラスで怪我をしているシーンなど、モンタージュによって前のシーンを覆すようなシーンを描写することができる。

④ ADVタイプ?全画面タイプ?
ノベルゲームには2つの文章の表示方法がある。ADVタイプと全画面タイプ。イラストを大画面で余すところなく見せたい場合はADVタイプ、長い文章を一気に見せたい場合には全画面タイプが向いているとは思うが、正直好みだと思う。ADVタイプでも長い文章は書くことはできるし、全画面タイプでもイラストは見せられる。

私は普段ADVタイプで主に執筆しているが、長い文章を書くときはあるし、場合によっては一つのテキストウィンドウで収まらない場合もある。それでも特に文が長すぎるという苦情は来たことがない(これから来たらごめんなさい)。

ただ、それでも私がADVタイプを使い続ける理由は、不要な文章や表現を削ぎ落とす意識ができるという点にある。私はかなりせっかちで、必要がない限り余計な文章を読みたくないし、不必要に長い文を読んでいると眠くなるので、文章は最大限短くしたいと思っている。ただ油断すると文を長めに書いてしまうため、戒めのためにADVタイプにしている。

伝説のノベルゲーム「さよならを教えて」は全画面タイプのノベルゲームだ。このゲームは文章力が異常に高く、カットインの見せ方も巧みなので、文章を読む楽しみもイラストを魅せるのも両立している。要するに演出がうまくいく方を選べばいい。

長くなってしまった……。文章じゃなくて映像的な演出の説明じゃないか!と思った方もいるだろう。題は、他の演出を最大限活用して一番大事な文章に注目してもらおうという意図でつけた。文章のためにある演出なんて、とても贅沢だし、ノベルゲームにしかできないことではないだろうか。

色々書いたが、いかなる文章にも、文法以外で書き方のお約束など存在しない。結局は好きに一番作品が輝く文章を書けばみんなハッピーになると思う。もし良いノベルゲームの演出方法があれば、ぜひ教えてほしい。

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© 2020 Summertime, Children of Belgrade Metro(ベオグラードメトロの子供たち)/http://summertimeinblue.net/CBM/index.html
『ベオグラードメトロの子供たち』(Steam/Booth)公式サイト

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この記事を書いた人

隷蔵庫のアバター 隷蔵庫 ノベルゲーム作家

小説描きたかったのに、いつの間にかゲーム作者になった人間。代表作『真昼の暗黒』『ベオグラードメトロの子供たち』など。ノベルゲーム制作サークルsummertimeを運営。