2021年

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【推しの一作】『キャロル』と洗練された退屈な街

(by 隷蔵庫)(注:本稿では一部、物語の核心に触れています) 2015年の冬、映画『キャロル』が公開された。ポスターに印刷されたケイト・ブランシェットとルーニー・マーラと、美しいキャッチコピーが目を引く。 映画はとてもよくできている。原作の空気感やメッセージを十分伝えきれていると思う。フィルムのよ […]

【エッセイ】家族という呪いと、クリスマスの夜~家族愛を描いた映画に感動できなくていい~

(by 安藤エヌ) クリスマスが近づくにつれ、街は華やぎ、色づいていく。ディスプレイに飾られたサンタクロースの人形を見て思い出されるのは、幼い頃の記憶だ。 小学生の頃、冬休みになるといつも母方の祖父母の家に遊びに行っていた。家庭の事情など何ひとつ知ることのなかった私は、父親のもとから離れた場所で優し […]

【エッセイ】絶望名人カフカの人生論〜ネガティブだけどチャーミングな人〜

(by こばやしななこ) ときどき読み返す本の中に『絶望名人カフカの人生論』がある。 20世紀を代表する作家・カフカが残したネガティブな名言を集め、編訳の頭木弘樹さんが解説を加えた本だ。冒頭でまず、カフカのこんな言葉が取り上げられている。 「将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。将来にむかっ […]

【シリーズエッセイ/碧い海に浮かぶ月④】途方もなくきれいで幸福な日々の足音

(by 碧月はる) ──疲れた。 そう思った瞬間、表面張力のようにぎりぎりまで小さく保とうとしていたものが、一気にあふれた。幼子のように途方もなく泣き続け、寝間着にはみすぼらしいシミができ、滴のついた髪の毛が頬にぺたりと張りついた。 「もういやだ」 思わず漏れ出た声は、誰にも拾われることなく夜のなか […]

【映画エッセイ】“ボクたちはみんな大人になれなかった”のだろうか?本当に?

(by みくりや佐代子) 友人と会うたび、私達はどうしてこうも昔話でいつまでも語り合えるのかと笑ってしまう。 変わった口調のあの先生、エキサイティングな喧嘩を繰り広げる派手なカップル、地元から輩出されたアスリート……。話題が尽きないのではない、限られた同じ話題を繰り返すことに飽きないだけだった。 学 […]

【武道家シネマ塾】第4回:『キス・オブ・ザ・ドラゴン』~あの頃ジェット・リーは、もう少しでひとりのダメ人間を立ち直らせそうになった~

(by ハシマトシヒロ) 2001年。 大学まで出してもらったにもかかわらず、父親に怒鳴られ、母親に泣かれ、弟たちには白い目で見られ、「長男は元々いませんでした」という扱いを受けながらも、なんとか踏ん張っていた演劇活動も、すでにほぼ詰んでいた。 風呂無しトイレ共同で家賃一万七千円の木造アパートから、 […]

【おなかの中のくらげ④】朝は二度来る

(by みくりや佐代子) 「くらげ」と呼んでいたおなかの中の赤ちゃんが、第三子として誕生して約2か月。黄疸の検査で通院は続いていたものの空腹や眠気を訴える泣き声は力強さがあって、生命力のあらわれのようだった。 「新たな一員」を迎え入れたことは長男と長女の生活にも変化をもたらした。当然だが「はい!今日 […]

【すなくじらの魔女修行】一限目:タロット占いの時間

(by すなくじら) 魔女になりたい。ずっとそう思っていた。 一人前の魔女たるもの、占いの一つも知っておかねばならないだろう。占いとは不思議なもので、我々に救済のヒントを与えると思えば、ある時は人間の心を巧みに操り、惑わし、時に邪な行為へと及ばせる。 魔女にとって、未来を予知できる占いは欠かせないス […]

【ぼくが映画に潜るとき】第2回:『ブロークバック・マウンテン』〜男女がいちゃつく改札前で、ぼくと彼女は手さえ繋げなかった〜

(by チカゼ) 大学生のとき年上の社会人の女性と、少しだけ付き合っていたことがある。いわゆるTwitterの裏アカがきっかけで、初めて会ったその日にホテルに行った。告白は、していない。ぼくも彼女も「付き合おう」「好きだよ」などという明確な約束は、最後まで口にしなかった。違う、できなかったのだ。 彼 […]

【碧い海に浮かぶ月③】「しあわせのスープ」が染み込んだ夜、かっこわるい大人は、ゆるやかに立ち上がった

(by 碧月はる) 晩秋の夕暮れどき、ふと思い立ち、てくてくと散歩をした。民家の柿の実が鈴なりになっている。枝先には、もうほとんど葉が残っていない。その光景を目にして、祖父母の庭に毎年たわわに実る柿の実と、庭の後ろにそびえ立つ山々の連なりを思った。杉の木が凛と立ち並ぶ山間のなかに、ぽつんと佇む一軒の […]

【映画エッセイ】『燃えよ剣』にハマって京都に行ったら新撰組のヤバさに気づいた話

(by こばやしななこ) うら若き16歳の春、私は新撰組に熱狂していた。 司馬遼太郎の歴史小説『燃えよ剣』のせいだった。 『燃えよ剣』は土方歳三がまだ何者でもない道場に通う若者だった頃から、新撰組の副隊長となって五稜郭の戦いで最期を迎えるまでを描いた作品だ。 かなりのエンタメ小説で、私はすっかり土方 […]

【武道家シネマ塾】第3回:『燃えよ剣』~そもそも美しさとは作れるものなのか~

(by ハシマトシヒロ) 『燃えよ剣』を観た。 原作、司馬遼太郎。監督、原田眞人。主演、岡田准一。 司馬遼太郎。言わずと知れた、歴史小説の大家である。『竜馬が行く』、『国盗り物語』、『関ヶ原』、『功名が辻』など、そのおもしろ過ぎる歴史小説の中でも、この『燃えよ剣』は国宝級のおもしろさである。全・日本 […]

【おなかの中のくらげ③】今はまだ黄色の子

(by みくりや佐代子) くらげが産まれ落ちた。それは順を追って丁寧に私に知らされた。眼鏡もコンタクトも外し、身体に麻酔が回っていた私には、ぼんやりと滲む世界の中でただ天井を見てハイ、ハイと答えるほかに出来ることはなかった。 「姿が見えたよ、もうすぐよ」くらげは間抜けなことにまだ眠っていた。 「お母 […]

【エッセイ】バイクに乗るってことは人生に“責任”とるってことなのかもしれない

(by 蛙田アメコ) オートバイのいいところは、一人乗りだってところだ。 サイドカーやタンデムシートをつけなければ、オートバイはひとりしかその背中に乗せてはくれない。それって、かなり痛快だ。 ◆ 本当は私たちは毎日、自分の(あるいは他人の)生き死にに「責任」を負って生きていることになっている。そうい […]

【ぼくが映画に潜るとき】第1回:『君の名前で僕を呼んで』〜どうしようもなく魅力的な「大人」について〜

(by チカゼ) 舞台は80年代の北イタリア、夏。17歳のエリオは両親と滞在している別荘で、美術史の大学教授である父に招かれた24歳の大学院生・オリヴァーと出会う。繊細で線の細いエリオをティモシー・シャラメ、陽気で自信家で筋肉質なオリヴァーをアーミー・ハマーが演じている。華奢で儚げなシャラメに対して […]

【マイ・ラヴ・パレード①】『ツイステッド・ワンダーランド』に登場するジャミル・バイパーの話をさせてくれ

(by 安藤エヌ) オタクにはみんな、推しがいる。推しがいるから生きていける。推しの幸せが私の幸せ──。 カルチャーライターであり生粋のオタクである私が「愛してやまないものたち」について奔放に綴る連載「安藤エヌのマイ・ラヴ・パレード」。記念すべき一回目は、スマホゲームアプリ『ツイステッド・ワンダーラ […]

【エッセイ】妄想ライフのススメ

(by こばやしななこ) 生きるって大変。エコバッグ持ってても買い物に忘れず持っていけたことはないし、ぼーっとしてるとレジ袋も貰い忘れて袋だけ買いにレジに並び直すハメになる。憂鬱を切り替えるために丁寧に淹れたコーヒーも、手がすべって床にぶちまけた。コーヒーと一緒に食べようと思って焼いたクロワッサンは […]

【碧い海に浮かぶ月②】大人である私たちは、置き忘れたことにさえ気づかないままで

(by 碧月はる) 『ちいさなちいさな王様』という物語がある。ドイツの作家、アクセル・ハッケのベストセラー小説だ。ミヒャエル・ゾーヴァの挿絵が美しい本書は、一見御伽噺のような風貌を醸しつつも、哲学的な要素を持ちあわせている。 王様の世界は、年齢を重ねるごとに身体が縮んでいく。その代わり、想像の世界は […]

【おなかの中のくらげ②】あつかましい“生”のこと

(by みくりや佐代子) 生活の中に「キリトリ線」がある。それをプチ、プチと少しずつ千切っていくような2週間だった。産休前の引き継ぎを通して「わたししかできない仕事」は「他人にもできる仕事」へと移行した。キリトリ線を千切り終えた時、「働く自分」が社会から完全に剥がれてしまった。 最終出社日に貰った花 […]

【映画レビュー】『空白』〜運命の行き着く果てにある光〜

(by とら猫) 命は重い。 なぜかというと、命は取り替えがきかないからだ。盗まれたものは買い直せばいいし、壊されたものは修理すればいい。けれど命だけは何をもってしても代替できない。命が失われるとはすなわち、存在の消滅である。誰かの存在を決する権限が、人間にあるとは思えない。それは神の領域だ。ゆえに […]

【武道家シネマ塾】第2回:どんなに大人になっても僕等はサニー千葉の子供さ(後編)

(by ハシマトシヒロ) さて。 前回の記事を通じて、入門編としての“ヒーロー・千葉真一”を堪能してもらえたと思う。主演映画の面白さをわかってもらえたと思う。 本番はここからだ。今までの二作品は前座にすぎない。勝手に料金に加算されている、突き出しにすぎない。 この映画を見せるために、あえて“ヒーロー […]

【武道家シネマ塾】第1回:どんなに大人になっても僕等はサニー千葉の子供さ(前編)

(by ハシマトシヒロ) いやいや、千葉真一が死ぬわけないやん、だって千葉真一やで! ……と思っていたが、どうやら事実らしい。 『仁義なき戦い』シリーズで一緒に暴れまわっていた方たちが、どれだけお亡くなりになっても、千葉真一は死なないと思っていた。だって、たまにテレビで見かける姿は常に元気で黒光りし […]

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