【ノベルゲームの夕べ】『かまいたちの夜』は、あの時、確かに“ゲーム”だった

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(by カワチ

“BadCats Weekly”読者のみなさん、こんにちは! ゲームライターのカワチです。編集長のとら猫さんに「うちで書かんか。うちはええでー。うちは実力主義やさかいな」とスカウトされてコラムを執筆することになりました。よろしくお願いします……!

さて、自分はアドベンチャーゲーム、とくにノベルゲームと呼ばれるジャンルが大好きなので、今回は、このジャンルにハマったきっかけにもなったチュンソフト(現・スパイク・チュンソフト)のサウンドノベル第2弾『かまいたちの夜』についての思い出を書こうと思います。

なお、冒頭の文章も『かまいたちの夜』のネタ。自分が最初に到達したエンディングは大阪に就職するものでした(笑)。

さて、サウンドノベルというジャンルですが、これは簡単に説明すると背景画像やBGM付きの読み物です。第1弾に『弟切草』というホラー作品がありましたが、自分は存在を知らなかったので『かまいたちの夜』が、このサウンドノベルとの出会いでした。

当時、小学生だった自分は活字が好きだったわけではなく、恥ずかしながら本作のシナリオを手掛けている小説家・我孫子武丸さんのことも知りませんでした。

どちらかというと、自分自身で殺人事件の犯人を見つけるというゲームの内容が気になってプレイし、そこが面白くてハマりました。また、犯人を見つけてクリアしたあとも、新しい選択肢が追加され、まったく異なる展開に突入したりするので、プレイしてもプレイしてもコンプリートできなくて驚いた記憶があります。

後の移植版ではチャートが追加されたため、ルートや全体像もわかりやすかったのですが、スーパーファミコン版はエンディングを迎えるごとに最初からやることになるので、何度も何度もやり直しました。

ノベルゲームは“読むだけの退屈なジャンル”などと言われることもありますが、少なくとも自分は本作がゲームだと思ったし、ゲームだからこそハマれたと思っています。選択肢によって展開と結末が変わるというサウンドノベルの構造自体は昔から存在したゲームブックに近いのですが、本と違って厚さで全体のボリュームがわかることもないし、BGMでガラリと雰囲気が変わることもあるので、プレイしていてすごくワクワクしました。

また、学校の友だちと協力しながら攻略したのも思い出深いです。例えば大作RPGが発売されたとき「昨日どこまで進んだ?」「あのボス倒せた?」などと会話をすることはありましたが、『かまいたちの夜』でも同じことが起きたのが衝撃的でしたね。「あのトリックわかった?」「2周目のあのシーンで選択肢が追加されていたよ」と情報を共有しながらプレイを進めていました。まだインターネットで攻略情報が共有されるような時代ではなかったので自分たちだけで謎を解いていく必要がありました。そのため、自然にゲームへの思い入れもどんどん深くなりました。

もうひとつの革新がシルエットで表現されるキャラクター。当時、活字に興味のない子供だった自分がここまで『かまいたちの夜』にハマることができたのは登場人物が影のシルエットで表示されていたから。『かまいたちの夜』のシナリオは先が気になる展開を作るのが上手だし、BGMによって雰囲気も盛り上げてくれます。ただ、シルエットがなければ、ここまで作品に感情移入できなかっただろうし、そもそもちゃんとゲームのなかで起きている描写を正確に頭の中で思い浮かべることもできなかったと思います。バカな子供でしたから(笑)。

サウンドノベルが“リッチな小説”というような説明をされると、やっぱりどこかで首を傾げてしまいますね。『かまいたちの夜』は自分の中でゲームだったし、登場人物たちも『ファイアーエムブレム 紋章の謎』のマルスや『ファイナルファンタジーIV』のセシル、『す〜ぱ〜ぷよぷよ』のアルルと同じ“ゲームキャラクター”という位置付けでした。

“泣きゲー”“萌えゲー”などが流行してからはゲーム性が減ってきてしまい、物語を楽しむことに特化されていきました。また、『かまいたちの夜』自体もシリーズの復活作となる『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』では一部のサイドシナリオが課金ダウンロードコンテンツになってしまいました。

課金モデル自体に拒否反応はありませんでしたが、「どんなシナリオがあるんだろう?」「こんなところに隠し要素があったのか!」といった楽しみが減ってしまったのは本当に残念でした。(もちろん、『真かまいたちの夜』も“問題編”と“解決編”に分かれていて、あとから解決編を無料でダウンロードできる“犯人当て編”など、面白い試みがあって、そこはさすがだなと思いましたが)

物語をじっくり楽しむのも好きですが、ひとりのゲーマーとして、また、あのワクワクするような体験がしたい。それがボクの望みです。

++++
(c) Spike Chunsoft/我孫子武丸
『かまいたちの夜 輪廻彩声』(PC版)公式サイト

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この記事を書いた人

フリーランスのゲームライター。プロのゲームライター陣がゲームについて語るマガジン「ゲームライターマガジン」主宰。noteも。