(by 蛙田アメコ

劇場版『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。アニメシリーズから始まった、手紙の代筆をする女性――自動書記人形《ドール》として生きる元少女兵ヴァイオレットが『愛してる』を知り、『愛してる』を伝える物語の終着点だ。京都アニメーションの近年の代表作。 2020年11月9日の動員123万人、興収収入は17億円となっている。

社会現象となった『鬼滅の刃』による、映画史を塗り替える超メガヒットの影になっているが、前作『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -』の興行収入をすでに超える大きなヒットとなっている。

「普遍」で「不変」の物語――公式サイトで謳われているその言葉は、一から十まで真実だった。

「心から、愛してる」
孤児であった少女を慈しみ、育て、しかし彼女を少女兵として戦場に伴っていたギルベルト・ブーゲンビリア。彼が最後に告げた「愛してる」という言葉がわからない、人の感情というものに触れずに生きてきた元少女兵・ヴァイオレット・エヴァーガーデン。彼女が戦後、手紙の代筆を生業とする自動書記人形《ドール》として人の心と思いを書き綴り、心と気持ちを獲得する物語だ。

物語というものには、あるべき着地点がある……と、私は思う。
ヴァイオレットという女性の旅路の先にあったのは、彼女が人生を生きたその先の世界でも『手紙』が人の心を繋ぐ世界だった。

映画は静かに始まる。ある老女アン・マグノリアの葬式のあと、忙しさにかまけて老女に付き添わなかった女性と、その娘。おばあちゃんっ子であった娘は、母親が家族より仕事を選んだことに対して刺々しい態度をとる。それを後悔しながら、祖母の遺品を整理していると祖母アンが幼い頃に亡くなった母クラーラ・マグノリア(娘にとっては曾祖母だ)から、50年間毎年受け取っていた手紙を見つける。自分の命が長くないと知った曾祖母が、幼い祖母のためにヴァイオレットに代筆を依頼した手紙たちだ。

母クラーラがヴァイオレットに手紙の代筆を頼むエピソードは、アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の第10話「愛する人は ずっと見守っている」で語られている。アンは当時、ほんの小さな子どもだった。そのアンが、孫娘たちに見送られて旅立った後の視点から映画は始まるのである。当然、アンよりも年上だったヴァイオレットはすでにこの世の人ではないであろうことがうかがえる。映画は、有名な自動書記人形となった18才のヴァイオレットの物語と、数十年後にヴァイオレットの足跡を追う少女の視点で描かれる。

アニメシリーズから追ってきた視聴者は、明確にあることに気づく。ヴァイオレットのキャラクターデザインの『変化』だ。アニメシリーズのヴァイオレットは丸顔で幼くあどけない顔立ちだった。そして、映画で18才になったヴァイオレットは美しく、ほっそりと、しかし肉感的な顔立ちをしている。大人の女性の顔だ。時は流れ、移ろっていく。成長したヴァイオレット、幼くして死んでいく少年が家族に宛てた手紙の代筆、普及する電話と廃れゆく自動書記人形……劇場版『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、変化と時の流れ、そして私たちが想いを受け継ぎ、バトンを渡して歴史を紡ぐことが淡く優しく描かれている。

『人の人生の集合体が歴史である』というメッセージは、けれども本当に静かなテーマだった。映画で丹念に描かれているのは、あくまでかけがえのない、たった1人の、たった1つの人生で。ヴァイオレットが知って、伝えた『愛してる』は、世界の歴史の中でほんの一瞬のきらめきで。だからこそ、こんなにも美しい。

Covid-19という疫病は世界を変化させてしまった。距離的に、経済的に、心理的に、私たちは以前よりも少しだけ離ればなれだ。だからこそ、伝えたい想いがある。言いたい言葉がある。ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、あなたが抱くその気持ちの背中を押してくれる。

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(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
劇場版『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』映画.comページ

 

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