【フリーに生きる】第3回:あるITエンジニアの場合〜自分の心の声に従うこと〜

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(by あるITエンジニア)

新卒で大きな会社に入り1年働き、調子を崩した。身体ではなく心のほうで。

新卒特有の何がわからないのかわからない状態であたふたし、先輩や上司に気を使いながら仕事をしていたストレス。日勤夜勤でひたすら作業しても、次の日にリセットされ振出しに戻ってしまう仕事。深夜2時の帰宅になる作業に、正社員として安定しない生活習慣に、その働きに見合わないと思った給料。趣味も何もしたくない状態なのに何かやらないともったいないと思う感情が錯綜し、ただ過ごすだけで何もせず、何もできなかったと後悔しかしない休日。

いつの間にかずっと何かに追われ続けるような焦燥感がすさまじかった。

休職をして、その間に転職しようとしたけれど、その体力も消耗しきっていて大して受けられなかった。決まった時間に起きて、会社に行き、指示されたことをやるばかり。また戻って同じように調子を崩すのだろうなと考えた。

ふと、正社員じゃないとそんなにダメなのか。自分がやりたかった仕事はそんなことで良いのか。1か月ずっとぐるぐると考えた。

友人から仕事を紹介されたこともあり、まずは勉強がてら、フリーランスの道を行ってみることに決めた。

いわゆる“大企業”と呼ばれる会社を辞めた。
世間一般にはもったいないと言われるだろう。

フリーになっても新卒で働いていた時と比べて、やっていることや生活習慣は大して変わらなかった。むしろもっと荒れていたのではないか。今考えるとそう思う。なにせ寝泊まりは近くのネットカフェで、家に帰るのは週末だけという生活だった。

そんな生活をしつつも、会社員時代にもらえていた給料のおよそ3倍が報酬になった。経費や税金でかなり持っていかれても、会社員時代より残るくらいだった。

生活としては健康的とは程遠いものだったので、現場で長期間働くことは体調管理の都合上できなかったが、それでも心の持ちようが明らかに違った。

忙しく、生活が荒れているとしても、毎日しぶしぶと行かなきゃいけないような何とも言えない義務感がほぼなかった。

フリーといえば自分の裁量で何事も決められるが、その責任はすべて自分に返ってくる。とても厳しい働き方だと、世間一般ではささやかれている。

フリーは大変であるというのは、いろいろ調べたうえで理解していた。
予想通り大変ではあったが、感覚としては、言われるほど大変とは思わなかった。

正社員とフリーとの違いは、分かりやすいところでは確定申告だ。正社員でも自分から手続きすれば確定申告を行えるが、基本的には会社負担だろう。正社員では毎月経費のレシート等の締め切りがあるが、フリーなら確定申告までにしてしまえる。後まわしにしていると、大変なことにはなるが……

ほかにもいろいろな手続き等は自分でやらなければならない。
いかに正社員というものが守られているのかを実感することだろう。

現実的に、仕事は安定しないから収入は安定しない。多い時もあれば少ない時もある。傍目からは充実とは程遠い、とても大変な働き方のように見えると思う。でもそれは結局のところ他人の意見だ。

重要なのは他人から見てどうではなく、自分の心がどう思っているかだ。

フリーになってから、正社員の頃と比べて勉強する時間が圧倒的に増えた。そして一番大きいのは、この勉強が楽しいというところだ。学生だった頃から考えても、自分ではびっくりするほど楽しい。この勉強がまた別の仕事につながっていったりする。

それに趣味の時間を楽しめているし、作ってみたいものを作ることができる。仕事詰めで疲れ、時間がない頃では難しかった。

生きるために働いているのに、ずっと何かおぞましいものに追い回されるような感覚がない。追い回される感覚でクオリティを下げ、将来の自分の信用を下げることになるなら、いかにクオリティを上げられる働き方にできるかを考える。その結果がフリーランスだったというだけのことだ。

もしフリーランスのほかに自分の過ごしやすい生き方があるのなら、迷わずそっちに行く。

ITのフリーランスはいまや活況となっている。ITの報酬単価は表面的に見れば確かに高い。それに目がくらむのもわからない話でもない。ただ、それに安易に流され、あとからこんなはずではなかったと思う人も多いと聞く。

そういう人の経験談から「フリーは正社員よりも厳しい」という言葉が出ることも少なくない。でもそれは“向いているか向いていないか”という話で済むものと思う。「正社員よりも厳しい」のに正社員をやってこれなかった自分が、やっていけているからだ。

正社員よりも厳しいと感じるなら正社員になればいいし、フリーのほうが働きやすいと感じるならフリーでいい。結局のところ、働き方の一つに過ぎないのだから。

自分に合った働き方を探しつつ、これからも生きていくのだろう。

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画像:パンダの中のパンダさんによる写真ACからの写真

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この記事を書いた人

システム開発を手掛ける、ITフリーランサー。PHP、VB、C#での開発経験あり。ウェブサイト制作やWindowsアプリの制作も。