【名画再訪】完全燃焼!〜映画『プロメア』を、遅ればせながら観て燃え尽きた人間の感想レビュー〜

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(by 安藤エヌ

2019年5月に上映された『プロメア』を、2020年の4月に見た。これは罪深いことである。映画館に観に行くのがこれほどまでに似合う映画を、ほぼ1年後にテレビで観てしまった私の罪は重い。映画好きにとっての失態である。

私は天邪鬼で、その時に流行っているものはほとぼりが冷めるまで少し間を置いてから観てしまう癖がある。しかし、今回のことで思った。何も天邪鬼になる必要はない、流行りものには素直に乗っかっていればいいのだ。「なんか周りみんな『プロメア』観に行ってるけど今の勢いに乗っかるのも億劫だから後でいいや」と思っていた自分に心底後悔している。今の率直な心境としては

「くそっ!!出遅れた!!応援上映に行きたい!!爆音で『プロメア』を浴びたい!!頼む!!!行かせてくれ!!!」という状態だ。心がバーニングしている。助けてほしい。心が燃えて、しょうがないんだ。

『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』などを手掛けたアニメ会社TRIGGERによる長編アニメーション映画『プロメア』。メインキャストの声優に劇団新感線で活躍する俳優を据え、脚本は同劇団で作家として在籍する中島かずきが務める。

圧倒的な技術により高みへと推し上がった驚異の表現力により完膚なきまでに「完全燃焼アニメ」としての仕上がりを見せた本作は、劇場公開されるや否やリピーターが続出。全国各地で「応援上映」ならぬ「応炎上映」が開催されたり、劇場独自の音響システムによる「爆音上映」などが敢行されることとなった。

近年、『マッド・マックス』や『バーフバリ』など、エネルギッシュな(アドレナリンがドバドバ放出される体感系映画)の応援上映や爆音上映が映画のステータスとして定着化しつつある中、この『プロメア』も例に漏れずそのムーブメントに乗っかった。というのも、本作があまりにも”それ向き”すぎるのだ。ジェットコースターのように縦横無尽に動き回るカメラワーク、登場人物たちの熱き闘志と必殺技のようなセリフ、ここぞという時に嵌められるイカした音楽。どれもがあまりにも、あまりにも胸に迫るアッツアツの演出で、観客が応援したくたるのも、爆音で観たくなるのも大いに頷ける内容となっている。

それに加え、精鋭アニメクリエーター集団のTRIGGERがぶっ放す高度なアニメーション技術への熱意と、一瞬でも目を逸らせない細かな描き込みのなせるアニメーションの繊細な側面とがあいまった映像美は圧巻を極める。初見では誰もがその映像に驚くこと間違いなしだ。

TRIGGER作品の特徴として「熱い展開」というのがファンの間で親しまれている要素であるが、本作ももちろんその点は抜かりなく貫いている。ラストにかけての畳みかけるような熱!熱!熱!!!!な展開に思わずこちらも拳を握って小学生男子のように目を輝かせてしまう。男と男の信念のぶつかり合いが好きな諸君には、待ってました!といわんばかりのシナリオが用意されている。潔い友情とは、かくも眩しいものなのか。あれこれと御託を並べながら生きがちな現代人にとって、彼らのド直球な姿はあまりにもストレートに胸に刺さる。

そう、現代人には『プロメア』が必要だし、現代人は『プロメア』を観ないといけないのだ。世の中に対して煮え切らない――くすぶり続け燃え尽きることのない感情を抱いている人達には、この『プロメア』は願ってもない「火種」になることに違いないだろう。胸に炎を灯し、己の信念を貫いて生きる人間の雄姿を、ぜひ本作で刮目してほしい。きっと何かに一心不乱になって打ち込みたくなるはずだ。

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(c)TRIGGER・中島かずき/XFLAG
映画『プロメア』公式サイト

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この記事を書いた人

安藤エヌのアバター 安藤エヌ カルチャーライター

日芸文芸学科卒のカルチャーライター。現在は主に映画のレビューやコラム、エッセイを執筆。推している洋画俳優の魅力を綴った『スクリーンで君が観たい』を連載中。
写真/映画/音楽/漫画/文芸