(by 蛙田アメコ)
大好きな映画があって、『グーニーズ』という。
父親の借金と地上げ屋の思惑によって生まれ育った家を手放さなくてはいけない兄弟が、はみ出し者仲間でつくった悪ガキグループ「グーニーズ」の仲間とともに海賊・片目のウィリーが残した財宝を探しに犯罪者一家の家に忍び込むというストーリーだ。どこまでもコミカル(まさにアニメと同じ演出やカットの連続!)に、王道中の王道の宝探しお冒険譚が繰り広げられる。
主人公は喘息持ちの夢見がちな少年、ヒスパニック系の背伸びをしたい悪ガキ、中国系の発明家少年にヘタレな肥満児に気が優しくて力持ちの障碍者――文字通りの多様なはみ出し者たちだ。彼らが宝の地図を片手にギミック満載の大冒険を繰り広げ……そしてラストシーンでは、すこしだけオトナになった「いい表情」をして水平線を眺める……!!
はい、最高ッ!!!!!!!!!
王道中の、王道。
海賊、財宝、子どもたちの大冒険――要素だけ抜き出せば、「これでワクワクしないはずない!」というものばかりだが、それだけに調理が難しい。これを不朽の名作といえるほどに面白く仕上げたのは、脚本・美術・編集・役者。それらが奇跡のように相乗効果をあげたからなのだと思う。
余談だけれど、Twitterでおすすめ映画を挙げるハッシュタグを眺めていたらプロ作家のなかで『グーニーズ』を好きな映画として挙げる人がやたらと多かった。ボリューム世代が30代~40代だからかしら、と思ったのだけれど特に回答者の年代に問わず強く支持されているようだった。これが、王道。
中学時代、新潟で行っていた剣道部の夏合宿の帰りのバスでかならずかかるのが、この『グーニーズ』だった。何故か高速道路に乗ってからしか再生をしてもらえず、東京にある学校に帰りつくころにちょうどあと30分ほど(一番いいところだ)を残してバスを降車しなければならない。前半部分だけ3回も視聴することになった映画だ。結局、中学3年の夏休みに竹刀と防具を担いだままでレンタルビデオ屋に飛び込んで『グーニーズ』のDVDをレンタルした。
じりじりと焼き付ける太陽。
肩に食い込む剣道具の重さ。
青いレンタルビデオバッグ。
かぽかぽとかかとが鳴るローファ、夏の匂い、夕方の風。
風呂上がりに冷房のきいた部屋で最後まで観た『グーニーズ』の冒険に、わくわくと胸を躍らせながら布団に入って読みかけだった文庫本を開いた夜、蝉の声。そういったものが『グーニーズ』にはよく似合う。冒険といえば夏、海賊といえば夏。
『グーニーズ』が地上波で放映されるときにも、やはり夏休みであることが圧倒的に多い気がする。
オトナになった今も、やっぱり夏が近づく頃になると「ああ、『グーニーズ』が見たいなぁ!」
――さて。
こうして記事を作成するにあたって、Amazonプライムビデオで『グーニーズ』を借りて視聴した。そして、わたしは気づいてしまったのだ。
「グーニーズのキャラ……みんな長袖着てる……!! っていうか、発明家中国系少年データ君に至ってはロングコート……これ……コレ……冬の話じゃんっ!!!!」
……。
映画というのは、かくも「個人の体験」に強く紐づいているのかと愕然とした。
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(C)1985 Warner Bros.
映画『グーニーズ』allcinemaページ