(by シェループ

次の主力ゲーム機は、きっとこれになる。

そんな根拠なき確信から買った1996年当時の次世代機『NINTENDO64』(以下、ロクヨン)は、地獄のようなソフト不足もあって、豪快に出鼻をくじかれた。

しかも、前世代機のスーパーファミコンは現役を退かず、新作発売を続行。ゲームボーイも軽量モデル『ゲームボーイポケット』の発売以降、多くの新作が出た。特に10月には任天堂から、それら向けに計3本の新作が発売される事態に。

心底思った。なんでその勢いをロクヨンに向けないんだ、と。

ただ、そんな新作の中に1本、不思議な作品があった。名前は『マーヴェラス ~もうひとつの宝島~』。スーパーファミコン用のゲームソフトである。

何が不思議だったのかというとこのゲーム、テレビCMが流れなかったのだ。残るゲームボーイの新作2本は宣伝されているのに、このゲームだけ何もない。

特に任天堂のCMだけが流れるゲーム情報番組『スーパーマリオスタジアム』改め、当時の『64マリオスタジアム』では、その様子を克明に捉えることができた。しかも、番組内ではゲームが数週に渡って紹介されているのに、だ。

一体、なぜ?

ただ、ゲームはすごく面白そうだった。
現代が舞台の『ゼルダの伝説』だったからである。

ゼルダの伝説、特に『神々のトライフォース』は、私自身に大きな衝撃を与えた名作中の名作だった。そのゼルダの現代版だ。嫌でも遊びたい気持ちになった。

しかし、冒険の舞台が平原と洞窟しか映し出されないなど、なぜか番組内の紹介は制限されていた。当時買っていたゲーム雑誌でも、やはり同じ場面しか紹介されていない。

他の舞台はないの?戦闘は?
結局、発売を迎えても情報の少なさが尾を引き、そのまま年を越すに至った。

様子が変わったのは年越し間もない頃。
ある日、私に『MOTHER2 ギーグの逆襲』を紹介してくれた当時の友人との雑談の中で、本作の話題が出た。なんと彼は購入し、クリアまで遊んでいたのだ。
すぐさま、私は彼から詳細を聞き出した。舞台は他にあるのか、戦闘はあるのか、と。

答えは「あるよ」だった。

当時、紹介されていたのは序盤も序盤。あの後、色んな島を巡る展開になるという。それらの情報に関心を持った私は後日、彼に本作を遊ばせてもらった。
そして、どうなったか。

買った。

以降、ロクヨンそっちのけでクリアまで遊んだ。
単刀直入に言う。ものすごく面白かった!

特に3人の特徴の異なる主人公を使い分け、仕掛けを潜り抜け、謎を解いていくのが楽しい。謎解きはゼルダよりも入り組んでいて結構頭を使うが、有料式のヒント機能が備わっているので、スムーズに進めていける。

戦闘も「ミットとボール」、「パンチグローブ」などの現代的な武器を用い、そこに3人の使い分けを絡めた独特な作り。手触りはゼルダだけど、本作ならではの工夫も満載の新作に完成されている。

また、ストーリー性が強く、章ごとに冒険の舞台が変わる。

その中には人間を食べる植物の謎に迫る、ホラー映画ばりのエピソードも。正直、こんな展開があるとはつゆ知らず、初プレイ時はトラウマになるほど怖い思いをした。これを伏せた友人に怒りを覚えたりもしたが、今ではいい思い出だ。

それのみならず、伝説の海賊が残した秘宝の謎に迫る、これぞ冒険活劇な本筋も秀逸で、個性的すぎる登場人物たちも相まって楽しい気持ちにさせてくれる。エンディング時の達成感も素晴らしく、心の底から「冒険した!」という気持ちにさせてくれた。ストーリーの縛りの強さからくる自由度の低さはあれど、間違いなく名作だと言えるゲームだ。

だからこそ不思議に感じた。なんで宣伝されなかったんだ、と。

後で知ったが、どうも本作はスーパーファミコンの衛星データ受信サービス「サテラビュー」で宣伝を行っていたらしい。ゲームの初出も、そちらだったという。けど、そのやり方はマズいだろ、と思ってしまった。結果として、そのサービスを受けていた人、熱心にゲーム情報を調べる人以外には知られることもないゲームになってしまったのだから。

2014年、本作はWiiUのバーチャルコンソールで復刻されたのだが、その時にもSNS上では初めて知ったという人が多く見受けられた。無理もない。ごく一部でしか宣伝されず、スーパーファミコンの末期に出た作品だったのだから。復刻は嬉しい報せだったけど、当時を知る身としては、なんて勿体ないことをしたんだろうと、改めて思いもした。

実は、昨今のゼルダシリーズのプロデューサーを務めている人物の監督作品でもある本作。名は違えど、現代版ゼルダの伝説と断言できる素晴らしい作品なので、ファンだけどこれは知らないという方はぜひ、遊んで欲しいと思う。
自信を持っておすすめします。

ちなみに攻略本の制作者インタビューで知ったのだが、本作は元々、スーパーファミコンのCD-ROMアダプタ、後に「プレイステーション」と名付けられた周辺機器用のゲームとして作られていたらしい。

出典:任天堂公式ガイドブック『マーヴェラス ~もうひとつの宝島~』(小学館)109ページ

さらにアニメムービーも1本作られていたという。その制作を請け負った会社の名は……

京都アニメーション。

………
当時の原画、あの場にあったのだろうか。それとも、今も任天堂に保管されているのか。

ずっと気になって仕方がない今日この頃。

++++
©1996 Nintendo
『マーヴェラス~もうひとつの宝島』Wii U 公式ページ

 

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