【映画レビュー】『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』はフランスから届いた胸アツの逆輸入品だ

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(by シェループ

「まいりました……!」

以上、全編観終えて間もなく出た一言。
なんてこった。
ほんまもんのシティーハンターだった。
それも、フランス流ブラックジョークなるスパイスを足した快作だ。

海外で実写版が作られているらしい、との話は小耳に挟む程度に聞いていた。けど、全貌を知ったのは『新宿プライベート・アイズ』上映間近の2月上旬のこと。本国フランスでのヒットを報じるニュースだった。

正直、詳細を知る直前は不安が大きかった。
そもそも、海外制作だ。
某伝説の失敗作を存じ上げてるので、心中穏やかじゃなかった。

ところがイメージビジュアルを見て一転した。
構図が見事にシティーハンター!
健在の100tハンマー!
ミニクーパーもバッチリ赤!
そして、海坊主(ファルコン)の驚異的な再現度!

シンプルに思った。これはヤバい。
日本で上映されるなら、絶対観たい。

それから半年以上の月日が流れ、『シティーハンターTHE MOVIE 史上最香のミッション』の邦題で日本上陸。なんと吹き替え版だけ(仏語+字幕版は無し!)の思いきりすぎの形で上映された。

それもあって雰囲気は完璧にアニメ版!しかも、主要登場人物たちの再現度の高さ、原作準拠の名称も相まって、フランス人俳優が演じているのに雰囲気は日本でシティーハンターという、(いい意味で)深刻な不具合が生じた有様になっている。
なんだこれは!俺は何を観ている!?

そして原作、アニメ双方の持ち味も狂気のレベルで再現!
依頼主とのやり取りではアニメ版の同じシーンで使われてる曲を流す、唖然となるシーンではカラス(本物)を飛ばすなど、「マジかよ!?」と言いたくなるほど忠実にやっている。リョウが大暴れするシーンで流れる音楽も、アニメ版でお馴染みの『FOOT STEPS』だ!どういう訳か、視点と演出が某ゲーム風で迫力満点!

独自の試みでフランス流のブラックジョーク、下ネタ、エロネタが大量に盛り込まれているが、いずれも各場面を印象深くするスパイスとして機能している。中でも”もっこり”が(事実上の)解禁を果たしているのは、謎の感慨深さが。

ストーリーもいつものシティーハンター……だが、パンチョとスキッピーという脇役二人に焦点を当てた展開が都度挟まれたり、終盤に意外な展開がある、ギャグ成分が強めなど、少し捻りを効かせている。設定もカオリの兄・ヒデユキを殺害した組織が漫画版準拠で、知る人には感無量なものに。海坊主も本作では敵対関係。しかも、これが重要な位置付けとなっている。詳しくは本編でだが、これには思わず「そうきたか!」となった。

また、日本語吹き替え版のキャストにはアニメ版の面々を起用。リョウとカオリは神谷明、伊倉一恵両氏から変更されているのだが、前者を演じるのが山寺宏一なのはあまりにも熱い。氏はプライベート・アイズでも御国真司役で出演したが、その前のアニメ版では、リョウに成敗されるチンピラを始めとする名無しの”やられ役”だった。そんな氏が名有りの役を経て、ついには主役のリョウに抜擢されてしまったのだ。それを思うと、この起用は熱い。熱すぎる。

作中でも神谷氏への敬意を払いつつ、自身の持ち味も含めた見事なリョウになっている。中でも”もっこり”時の砕けっぷりは圧巻。
カオリも『ルパン三世』の二代目・峰不二子役、個人的には(あえて作品名は伏せるが)”ぷちこ”の印象が強い沢城みゆきが演じているが、こちらは伊倉氏と聴き間違えるほど違和感がなくて凄い。オリジナルの二人も別役で出演しているが、いずれも出番は僅かながら、強烈な印象を残す。特に神谷氏はあまりにも”ズルい”。

上映時間も93分と短めながら、序盤からフルスロットルで駆け抜けるので退屈する暇がない。そして、その先に待つのは『Get Wild』だ!なんと本作でも”あの演出”で決めてくれる。さらにその直前にリョウのカオリへの思いが知れる一幕、漫画版を知る人に嬉しい小ネタも挟まれるので、思わず胸が熱くなること必至。

今、少しでも「大丈夫?」と思ったことが恨めしい。
紛れもなく、シティーハンターだった。
漫画原作の実写作品としても合格点以上の完成度で、原作を徹底的に尊重・再現し、制作者に強い愛があればよいものが仕上がる純然たる事実を思い知らされる快作だ。

ブラックジョークの内、動物絡みのものが大変過激で、人によっては強烈な不快感を抱きかねない描写があるのが唯一、残念な部分だが、全体の出来は抜群にいい。
ファンなら、ぜひご覧いただきたい。これは正真正銘のシティーハンターだ。
フランス製だけど、いつも通り!凄いぞ、これ!

それにしても、スキッピーの息子よ。
その”レースゲーム”(※)を遊んでるだなんて、いい趣味してるな!

※なんと日本でも販売中。詳細は伏せるが、PS4のゲーム。

++++
(c)AXEL FILMS PRODUCTION – BAF PROD – M6 FILMS
映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』公式サイト

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この記事を書いた人

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。もぐらゲームスなどゲーム系メディアへ寄稿中。

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