【旅行エッセイ】蛙田アメコの土佐日記(前編)~そうだ、高知に行こう~

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(by 蛙田アメコ

(1) 門出
高知旅行に行ってきた。
旧国名で高知は土佐である。文章書きが土佐に行ったので、自動的にこの手記のタイトルは土佐日記となる。そして、土佐日記の一番初めは、「門出」というサブタイトルになる。これらは、我が国の文学がはじまった当初から決まっていることなので仕方がない。なお、第2回にして最終回のサブタイトルは当然のごとく「帰京」となることは言うまでもないので先に言っておきます。

さて。
男もすなる一人旅というふものを女もしてみむとて、すなり。

◇そうだ、高知へ行こう◇
新卒から勤続8年、こつこつと働き続けてきた私は今年ついにダウンをして1か月間の休職をいただいた。最初の数週間は「家から出ないって最高」「なんでこんなことになってしまったんだろう」「働かなきゃ……」「また今日も一日が終わってしまった」という気持ちの堂々巡りをしていたわけなのだが、20日と少し休んだ頃に私はふと思い立った。

「そうだ、高知に行こう」

……と。高知、という場所を選んだ理由は、例えば「大学生になって生まれて初めて遠出した思い出の場所だった」とか「坂本龍馬の佩刀の特別展示をやっている」とか「昨年から人斬り以蔵こと岡田以蔵にドハマりしている」とか、いろいろあったと思うけれど、とにかく遠くに行きたかった。南国の椰子の木のたくさん並んだ街並みを歩きたかった。旅というのは古来から行われてきたデトックスなのである。

なお、高知にはマジで「南国」と書いてなんこく市があり、駅前に椰子の木がめっちゃ生えているので何の誇張もない表現である。

◇一人旅に必要な、たったひとつのこと◇
さて、「行きたいけれど、めんどくさい」というのは元気のない人間に一般的な心理だ。高知旅行に行きたいという気持ちはモリモリマッチョなのだが、一体どうすればいいのかわからない。数年ぶりの一人旅に、私は完全にダウナーになっていた。出発の1週間前、私は思った。

「これ、このままでは結局旅行行かずに終わるぞ!!」

と思い立った自分を奮い立たせるために、あることをした。そう、行きの飛行機だけ予約したのである。LCCの格安旅券(成田発)。カード払い。なお、キャンセル不能である。出発日、10月29日。これで尻に火をつけた。

お楽しみ慰安旅行ですら、尻に火がつかないと手配できない自分のままならなさに苦笑しつつ、成田までのリムジンバスや宿泊先のビジネスホテルを手配した。この段階で、飛行機の出発日がよくわからなくなり、全然見当違いな日のリムジンバスを予約してしまったり、キャンセルしたり、やっぱりまた予約間違えたり……を3回ほど繰り返した。

YES、ポンコツ!!!

そう、一人旅に必要なたったひとつのこと。それは事務能力。現地に行くまでの移動手段と宿泊先をしっかりと事前準備し、スケジューリングをする力。一人旅を必要としているめちゃくちゃ疲れ果ててしまった休職中の私には、ほぼ残っていない力だった。ぶっちゃけ、「一人旅コーディネイト代理業」とかあればすげえ儲かると思うよ。

◇真っ白なページを開くような旅立ち
かくして、爽やかでワクワクする旅立ちの朝。
3日分のワンピースとパンツと現金、それから何冊かの本だけをキャリーケースに入れて家を飛び出した。行き先も、目的も決まっていない門出である。3泊4日という真っ白なノートを開いて、さあ何を描こうか。……といっても、「気ままな一人旅♪」という温度感ではなく、「モウナニモカンガエラレナイ……」という状態だったけれど。

結論から言えば、この真っ白いノートを埋めるような旅というのが本当に楽しかった。

旅先で考えていたことは、とてもシンプル。明日はどこに行こうか、今日は何をしようか。

ほんとうに、ただそれだけを考えて、3泊4日の旅を満喫することができたのだ。

そこには、私が東京でどんな人だったかという過去のウジウジも、これからどうやって生きていこうという未来の不安もない。ただ、今そこにいる、たったひとりの観光客である自分だけがいた。コンテキストなど棄却して、パラテキストなど破壊して、ただそこに「在る」ということの、なんと心地の良いことか!

そして、高知の気候の良さと観光のしやすさたるや!
食べ物は美味いし、レジャースポットは豊富だし、景色は爽やか風光明媚、そうしてなにより酒がうまい! どれくらい最高かというと、私が家族あてに旅行の写真を送りつけ続けた結果、一ヶ月後には妹が高知にいたほどだ。

次回、高知で巡ったレジャースポットなどをご紹介させていただきます。

後編へ続く…

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この記事を書いた人

蛙田アメコのアバター 蛙田アメコ ライトノベル作家

小説書きです。蛙が好き。落語も好き。食べることや映画も好き。最新ラノベ『突然パパになった最強ドラゴンの子育て日記〜かわいい娘、ほのぼのと人間界最強に育つ~』3巻まで発売中。既刊作のコミカライズ海外版も多数あり。アプリ『千銃士:Rhodoknight』メインシナリオ担当。個人リンク:  小説家になろう/Twitter/pixivFANBOX