(by 須藤裕美

平日の昼間、まさかの貸し切り状態で本作品を観ることになった私は、壮大で迫力のあるスクリーンを前に、ひとり滂沱。誰もいなかったので、遠慮なく泣いてきた。

『ライオン・キング』と最初に出会ったのは子供の頃、ディズニーの長編アニメーションだった。そのとき買ったビデオは、いまも実家の棚に並んでいる。アニメ独特の表情の豊かさ、わかりやすく感情移入もしやすいストーリー、リズミカルでテンポのいい演出にすっかり引き込まれ、何度も飽きることなく観たことを覚えている。

それから高校生のとき、劇団四季のミュージカルだ。休憩を挟んだ二部構成で行われ、アニメの世界観をリアルに表していたと思う。ミュージカル独特の音楽、歌、台詞、ダンスの融合に魅了され、ずいぶん前なので記憶は薄れているが、感動は忘れていない。

ここまでは『ライオン・キング』好きであればすべて網羅しているはずだが、もうひとつ、忘れてはいけないのがスクウェア・エニックスより発売された『キングダム・ハーツII』だ。このゲームの中でキャラクターたちをプレイして、ややマップが狭く限定的ながらもプライド・ランドを自由に動き回ることができる。シンバとともに敵と戦えるところが最高に面白い。シンバやナラと話せるゲームはほかに知らない。

ここまでどっぷり『ライオン・キング』にはまってきた私にも、この超実写版の映画はセンセーショナルだった。どれが一番かと聞かれれば、間違いなく超実写版だろうと答えるはずだ。ストーリーはもちろん、歌詞、演出など、とうに知り尽くしているのに、初めて涙が出るほど心を打たれた。

どうして泣けたのか考えてみると、アニメやミュージカル、ゲームのようなコミカルさがないことが一因していると思われる。決してコミカルでないわけではないのだが(それどころか、ちょいちょい笑える要素が含まれており、特に執事のアカハシコサイチョウであるザズーの兄の話のくだりは超実写ならではと言えるだろう。気になる方はぜひ劇場に足を運んでほしい)、超実写版ゆえ、いい意味でリアルなのである。観ながら、愛犬の黒柴を思い出していたほどだ。生身の動物を撫でたくなるかわいさが含まれていた。

誰もいない映画館のスクリーンで視聴したからか、超実写版ゆえか、映像は実際のサバンナと見紛うばかりの美しさだった。シンバたちキャラクターはもちろん、その他の動物や虫にいたるまで生き生きとしており、プライド・ランドがまるで実在するように錯覚させられる。

マイナス要素として超実写版であることから、表情が乏しいという事前情報を見かけたことがあるが、私自身はまったく気にならなかった。キャラクターが話すさいは、人間がそうするように口を動かすのだが、むしろそのほうが違和感を抱いたぐらいだ。実在するような彼らが飛んだり跳ねたりするだけで、充分過ぎるほどに感情が出ていたと思う。

そんなこんなでひとり映画を堪能した私は、大きな満足と清々しさを胸に映画館をあとにした。しかしひとつ残念だったことがある。最後に映画館に並ぶグッズを見て回ったのだが、『ライオン・キング』のそれはアニメのキャラばかりであったのだ。超実写版はパンフレットぐらいで、思わずがっかりしてしまった。リアルなライオンの需要はないのか、子供をターゲットにしているからかわからないが、そこさえ完璧であればよかったと思った。

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映画『ライオン・キング』公式サイト

 

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