レポ&モデレーター by 葛西祝

 

様々なジャンルのゲストを呼び、テーマに沿ったトークセッションを行うイベント「trialog」。7月26日に行われたtrialog vol.6では「独学」をテーマに、ハリウッドで活躍するコンセプトアーティスト・田島光二氏をゲストにトークセッションが行われた。BadCats Weeklyでは編集長のとら猫と、ジャンル複合ライティング業者の葛西祝が現場を取材した。

今回はレポートを挟みつつ、とら猫、葛西に加え、人気ゲーム実況者のLayerQさんをお呼びし、それぞれにとっての独学について振り返ってみた。翻訳、実況、そしてジャンル複合ライティングにとっての独学とはなにか?

「独学」ってどう捉えているの?

葛西祝:ジャンル複合ライティング業者の葛西です!今回のtrialogでテーマになった独学、本当に人によって違うと思うんですけどどうですかね?みんなバラバラの職種ですし。

とら猫:ええと、翻訳者のとら猫です。ゲーム翻訳者と思われていますが、ゲーム以外にもメディア素材全般の翻訳もやっています。あとは契約書も。今年はゲームが半分くらいの割合ですね。

LayerQ:普段はインディーゲームを中心にYouTubeでストリーミングをしているLayerQです(チャンネルはこちらから!)。現在は、日本向けにゲームのパブリッシングサポートを行う「架け橋ゲームズ」というチームのマーケティング・マネージャーなど、フリーランスとして働いています。

葛西祝:みなさんベースとなるスキルを持ちながら、すごく多彩に活動されてますよね。そのなかでどう独学ってされてます?

とら猫:うーん、独学をしてきたっていう認識はあまりないですね。翻訳をやっている方は、だいたい翻訳学校へ入るって形が多いんですけど。あ、でも駆け出しの頃は、うまい方の翻訳小説などを書き写したりはしていました。

LayerQ:ぼくは高校生ぐらいの頃に友達からの勧めでPeercast(※)という存在を知って、そこでゲームをして楽しそうに話している姿が面白いなと感じました。
(※ライブストリーミング配信ソフトウェア。2000年代後半ごろにはゲーム実況をネットで配信するのに主流だった。)

で、試しに友達だけに見えるように配信してみたのが始まりですね。今みたいにYouTubeやTwitchのリンクを送るっていう感じじゃなくて、なんか直接ぼくのPCのIPアドレスにアクセスさせて映す、みたいな方法だった気がします(笑)。

とら猫:最初からそうやってできたんだ、前提レベルが高いですね(笑)!

LayerQ:でも、よくよく振り返って考えてみると、友達と一緒にゲームするときに1人用のゲームで遊ぶときは、1人でやってるときに取らないリアクションとかオーバーにしてましたね。「うわー、やられた!」とかそういう類のものですが。

葛西祝:おお、もう今に繋がる活動めちゃめちゃされてますよね。

とら猫:暗にもうオーディエンスを意識してたんでしょうか?

LayerQ:何にせよ、思春期・年齢も関係してると思うんですが、そういうその当時はめちゃくちゃ限られた人たちしかアクセスしてないカルチャーがカッコいい!って思ってて、憧れみたいなものから始まってると思いますね(笑)。中学生の頃くらいから、人を楽しませるってことが好きになってたのでそういうのも関係してるかもしれないです!

とら猫:なるほどー、趣味的に仲間内で実況みたいなことをやって遊んでいて、それから今に至る感じですか?

LayerQ:そうですね。そこから某匿名掲示板で、本当に知らない人に向けて配信をする経験を少しした後に、「自分のやったことが何も残らないのが少し寂しいな」と思うようになってからYouTubeで動画を残すことをはじめました。

とら猫:葛西さんはどうやってライターの道へ?

葛西祝:とら猫さん……待ってくださいよ……ライターではなく、“ジャンル複合ライティング”です。リングス時代の前田日明(※)がプロレスラーと呼ばれるのを嫌がり、総合格闘家と言ってくれと語っていた気持ちがわかりましたよ。
(※プロレスラー。プロレスを格闘技にする方向の団体UWFを経て、90年代にリングスを設立。当時は総合格闘技という新しい呼称でイベントを行っていたが、会場を借りるときに説明が困難だったことを語っている。)

とら猫:あ、ごめんなさい。その肩書には相当な思いが詰まってそうですね。

葛西祝:昔から格闘技、ビデオゲームに加え、アニメーションなど異なるジャンルのブログを並行してやってたんです。ある時期から、レビューや感想を書くだけではなく、インタビューやレポートの方向性に舵を切り始めたんですね。ブログでもインディーのゲームクリエイターにインタビューしたり、イベントのレポートをしたり。

とら猫:それは自分がそういうことをやりたくなったってことでしょうか?それとも自分の独自性、売りを出すためにインタビューとかやりだした?

葛西祝:そうですね。当時の本業も精神的にキツくなってきて、自分がやってて好きな方向にキャリアを移したほうがずっと楽だなと思って、専門メディアに応募したり、いろんなメディアの編集部の方と挨拶して、お仕事を頂いたりするようになり、今に至ってるんです。

とら猫:やっていて面白いことをやるようになった、と。

葛西祝:同時にフリーランスになるということで、じゃあ他の書き手と差別化したほうがいいぞ、ということをちょっと勉強しまして、じゃあまず自分の特色はなんだって振り返ったとき、複数ジャンルにまたがって書けることや、ジャンル間の境界を一時的に取り払う方向に意味があるんじゃないか、と思って、この名義でやってるんです。そう、ライティング業の総合格闘技化ですよ。

とら猫:差別化って大事ですよね、特にフリーでやっていく場合。私も色んなジャンルを翻訳しているのは、後付けで気づいたことではありますが、差別化になってると思います。「器用貧乏で食ってきた」と思ってます。

LayerQ:そうですね。ぼくがインディーゲームをメインで取り扱っていこうと思った大きな理由の一つでもあります。

現代の独学について

「世の中って、ひとが絶えず成長していける環境だった。」trialogの司会を務める若林恵氏はそう言う。「会社にいるだけでも先輩のいうことで成長していける契機があった。ある時期までそういう機能があった。」

だが、いつからかそんな機能が捨て去られていくことを指摘する。「即戦力を必要とし、営業成績など目先の仕事に向き合わざるを得なくなった。そのとき、あてにしてた人が助けてくれないことが広がっている。」

若林氏はそんな現状を踏まえたうえで、今回のテーマの“独学”を挙げる。「若い世代では、そういうとき外に求めに行ったりして独学していく。自分の実力ってどんなんだろう?ということを、自分で設定し続けなければならないみたいな。そこで、どういうふうに生きていくかのヒントになればいいなと。」

葛西祝:若林さんは会社組織をベースに独学とはなにか?と話してると思うんですよね。でも僕らってフリーランスじゃないですか。会社員(被雇用者)にとって、組織内でキャリアパスを考えるための独学と、自由業のぼくらにとっての独学の概念ってすごく違うと思うんですよ。

とら猫:最初にも言ったけど、あんまり独学してきたって認識はないですね。独学があまりに生活と仕事に密着してしまっているのかもしれません。

LayerQ:「独学してる」という意識は薄いような気がします。どちらかというと、単純に誰も教えてくれる人が居ないから一人でやってる、とか、自分を他者と差別化する武器として学んでる、とかそういう感覚ですね。

とら猫:学んでかないと生き残れないっていうのは、もう本能レベルで感じていますし、基本独りですしね。独りでやりながら、学んでいく、という意味では独学なんでしょうが、若林さんのいう独学とは違いますね。

葛西祝:会社員と違って、ぼくらはまず仕事と日常生活がシームレスになっていることがあると思うんですよ。オンとオフの境目があまりない。普段の生活で興味を持つことが、そのまま仕事やスキルアップに直結しているというか。

とら猫:自分からあえて外へ行って学ぼう!っていうことは、あんまりないような気がします。常に仕事をしながら学んでいて、足りない部分を補うって感じではあるかな。独学がもうデフォルトになってる感じでしょうかね。

葛西祝:ただ自宅や仕事場にこもり過ぎちゃうから、なるべくイベントや勉強会などに顔を出したりはしてますね。

LayerQ:ぼくはフリーライターとしてお仕事をさせていただいてた時期もあって、イベントや海外の情報から得た知見を自分の力でまとめあげていました。それがお金になる感じだったので、やっぱり自分の得たものがそのまま成果物になる、っていう感覚ですよね。

そういうイベントや勉強会で人と知り合ったときに、自分の「独学」を話せるようになっておかないといけないな、ってのもありますよね。

とら猫:若林さんの意見を読むと、「自分の実力ってどんなふうなんだろう?」ということを自分で設定し続けなければならない、だから会社勤めの若者は独学するんだ、みたいな感じですが、フリーはすでにその「実力」は自覚しているケースが多いので、受け止め方が違ってくるのかしら。

LayerQ:自分の時給単価≒フリーランスとしての実力っていうわかりやすさもあると思いますしね。

葛西祝:ゲストのコンセプトアーティストの田島さんも、スタジオに雇用されている形ですけど基本的に日常と仕事の境界がなく、独学がデフォルトになってる方だと思います。

とら猫:そうでしたね、フリーの感覚に近いなあと私も話を聞いていて思いました。

まず仕事ってどうさばいているものなの?

若林氏は「次から次へとくる仕事をどうさばいているんですか?」と問いかける。田島さんは「アーティストは時間を考えなくてもいいんです。マネージャーがやってくれるので。あんまり詰め込み過ぎないようにしています」と、カナダでの仕事を説明する。

若林氏にしつこくお金の話を聞かれるも、田島氏は「答えたら契約解除されてしまいます(笑)」としながら、「時給は高いですね」と返答していた。しかし「残業は許されておらず、やろうとしても上司に止められるんです」と、カナダでの就業に関して語っていた。 

水口さんが「シナリオやストーリーボードなど、田島さんはどこまで関わっているんですか?」と問いかけたところ、「最後までやることが多いですね。撮影が終わったあとは、設計図を描いたり、作業は多いです。」と田島さんは説明。「コンセプトアーテイストは多いので、共同して作業したり、アイディアを出し合ったりします。」と仕事についてまとめていた。

葛西祝:実際、皆さんって自分の仕事をどうマネジメントして、納めていますか?すごく難しい案件の場合、必要以上に時間がかかっちゃうことがあって、今月の目標を越えられないってフラストレーションが溜まることがあって。

とら猫:マネジメントって一番経験がモノを言う部分でもあると思うんです、時間の使い方って駆け出しの頃はぜんぜん下手でしたし。

LayerQ:架け橋ゲームズに関していうと、各メンバーに毎週タスクが送られてきてそれを必ず期限までに行う、っていう感じですね。

ゲーム実況に関していうと、これは単に自分との戦いというか…取り扱えるゲームは山ほどあるので、それを自分の時間やメンタルの様子でどこまでやれるのか、って感じです。どこかの企業に依頼されて作るものではないので。

とら猫:ゲーム実況の仕事は納期がないわけで、無理やりこう、自分を追い込んだりするわけですか?

LayerQ:仕事のマネジメントに関してだと、架け橋ゲームズみたいに企業からの仕事案件を最優先で、可能な限り早めに終わらせて、あとは自分のYouTubeチャンネルを盛り上げていくことを考える時間に回すという感じです。余った時間はほとんどYouTubeでの活動へ、という風にしてます。

葛西祝:やっぱり単純作業ではないから、案件によって難易度が可変するじゃないですか。田島さんはスタジオからマネージャーがついて、作業を上手くやっていることが語られてますけども、フリーの場合は本当に優先順位決めが大変で。

LayerQ:一人でマネージャーもしなきゃいけませんもんね。そして、やりたいことは山ほどあるという……(笑)その中で今の自分のスキルでは達成できないこともあって、スキルを磨くための時間も欲しくて…でも仕事が…みたいにカツカツなメンタルになっていきがちですよね。

とら猫:LayerQさんのYouTubeチャンネルのほうはもう「納期」とかいう概念がないんですかね?

LayerQ:「納期」というか、「毎日アップしないと有名になれないぞ!」みたいな強迫観念で動いてるときもあります(笑)やっぱり面白いインディーゲームをみんなに知ってもらうために的な使命感じみた感情もありますね。それに今は有り難いことに多くの人が見てくれてるので、その方たちに楽しんでもらうためというのも大きな理由ですね。

とら猫:チャンネルを始めたばかりの頃は、やっぱりあまり視聴者がつかない時期とかあったと思うんです。そういった時は、どうやってメンタルを盛り上げていったんでしょう?

LayerQ:そこはあんまり感じないですね、見てくれてる人の多さに関わらず、今は「これやるために生きてる」くらいに思ってるので。もちろん、見てくれてる人が多くなっていくことでテンション上がって頑張ろう!って気持ちにはめちゃくちゃなりますけどね!

始めたばかりの頃は「これで食べていくぞー」とか思ってなかったので今よりずっと気楽にやってましたね(笑)。あんまり伸びなくても、自分がいいと思って作ってるものだからそこは自分で信じてあげてたい、的な…かっこよく言うとそんな気持ちで続けてるような気がします。

葛西祝:ブログをいまでもやってるのはそういうとこあります。誰も読まなくても、まずオレが読むんだよ、みたいな。ベースにあるのは好きでやっていることですね。

LayerQ:そうですね!自分のやったことは認めて信じていけないとフリーランスでやっていくのはかなりしんどいんじゃないかな?と思います。少なくとも自分はしんどいです(笑)。

とら猫:私もBadCats Weeklyでは自分が読みたいから書いてるって感じです。自分のことが好きじゃないときついかもですね、基本褒められることのほうがだんぜん少ないですし。自分で書いて、ジブンおもしれえ!みたいに思いながらやってかないと(笑)。

翻訳者はみんな褒められるの大好きですよ(笑)。100個がすばらしくても、一個のミスをあげつらわれる仕事なので。

葛西祝:ジャンル複合ライティング業者も褒められるの最高ですよ!でもレスポンスがないとき辛いんですよね。一時期、自分だけにしか見えない橋本環奈に褒めてもらうことで乗り切っていたヤバいときありましたよ。大丈夫だかんな複合できてるかんなみたいに幻聴を聞いて心を保っていました。複合できてるかんなの意味が全然わかんないんですけど。

LayerQ:(ドン引きしながら)メンタル面のコントロールもかなり重要ですよね。

とら猫:重要ですよ、特に我々みたいに名前を出してやっている者たちはメンタルコントロール大切だと思います。

葛西祝:この話ほんと大事だかんな!

とら猫:幻覚ぬけてない!

依頼された仕事に対して、アイディアはどう出している?

映画の仕事では、シナリオであらすじしかない段階からアイディアを出していくそうだ。アイディアを出す作業は1年続くこともあり、田島氏は「ほんとうに大変で、カラカラになります。シナリオが進んでいくたびに、キャラクターのコンセプトもか変わっていきますね」と語った。

社内チャットで、みんなで話し合ったりしながら映画が作られていくという。田島氏は「カナダのバンクーバーで仕事していて、みんなの違ったアイディアを語るのが楽しいんです」と話す。監督が気に入ったアートがあれば、それが映画に組み合わされていくそうだ。

葛西祝:引き受けた案件によって、どんなふうに良くしていくかのアイディアを出さなければならないのは、ライティングにも翻訳にもあると思うんです。そのあたりは皆さんどうですか?

とら猫:一般の翻訳ではあまりアイデアをクライアントへ出す、って状況が生まれにくい気がするんですが、いつもお世話になっている架け橋ゲームズさんのお仕事ですと、デベロッパさんとの距離がとても近いので、 アイディアを出しやすいですね。

LayerQ:架け橋ゲームズの仕事だと、一番クリエイティブな仕事がストアテキスト(※)で必要なゲームのキャッチコピーを作ることなので、それはゲームをプレイしながら考えてますね。
(※ PS StoreやNintendo eShopといった、ゲームのダウンロード販売画面で、各ソフトの内容を紹介するテキストのこと。)

そのゲームの世界観のキーワードやユニークなゲームシステムを単語で書き出しておいて、あとは自分の中にある言葉で繋げていくっていう感覚です。自分の中にある言葉の量も大切だと思うので、他分野の芸術・文化に触れるように心がけています。

とら猫:逆にいうと、クライアントへ アイディアを出してまで仕事をしているのは、私が携わっているものでは架け橋ゲームズさん案件か、他にはコーラス・ワールドワイドさん案件くらいです。あとはハチノヨンさんとか。そもそもそういうことができる環境が得にくいので。たいていはエージェントから仕事が来て、デベロッパとは直接やりとりできないので、 アイディアを出しても一方通行に終わるんですね。

葛西祝:自分はレビューや企画記事を出したり、依頼された案件をどう料理するのかってことでは、どれくらいクライアント側のラインとでたらめできるラインを合わせるのを考えるんですよ。

なるべく記事は通りいっぺんの方向のみにせず、別の角度や価値から観れるようにしていきたい、というのはあって。特にビデオゲームって多くのジャンルと複合していることが多く、単純な難易度の攻防だけに価値が置かれていませんし。

とら猫:ライティングですと、媒体のスタンスとかテイスト、トーンとかに合わせたりするのもこう、腕のうちみたいなところがあるんですか?

葛西祝:やはり編集方針や文体が大きく変わるため、赤入れ(編集部による修正)も全然違ってきますね。個人でブログやっているのと比較すると、やっぱりメディアに出すということは編集部と共作している実感のほうが大きいです。

LayerQ:ぼくは媒体のテイストやスタンスなどは事前に編集部の方々に聞いておいて、それに合わせる努力はしてましたね。成果物を編集部の方に上げて、修正された点には理由を尋ねて、その後は同じ理由で編集されないようにしてました。

とら猫:編集の意向は大きいですよね。ゲームの翻訳では、特にインディー系ではあまりないですが、メディアの翻訳ですと編集者さんが最後にいることも多くて、色々いじられたりしますね。

葛西祝:なので、編集やメディアのトーンとどう共作していくか?まで含めてアイディア出しだと思っています。

仕事がふいになっちゃったり、企画などが通らなかったときの身の持ちよう

だが、アーティストのアイディアが選ばれなかった場合はどうするだろうか?「それが最終的に気に入られなくても、みんな余裕はあるので、別のアイディアに繋げられるんです。」田島氏は、焦る必要はないことも強調していた。

葛西祝:高いスキルをもつ田島氏でも、やっぱり必死で出した案が通らないみたいなことあるわけですよね。メディアとの仕事でも、ときに仕事がふいになったり、企画が通らないことがあるわけですよ。その時の心の持ちようはどうしたものかなと。

とら猫:険悪にならないための防衛策という面もあると思います。でもあるていど諦めるしかないですよね、みんなそれぞれ感性もちがうわけですし。最終権限者の感性を信じるしかない、みたいな。結果的に、もっとすごいものができることもありますし。

葛西祝:自分の仕事が通らないと凄くストレスはあるんですけど、まあ共作だから……ということがあるから難しいとこありますね。個人でありながら、組織でやるのとは別の形で共同しているということですし。

LayerQ:少なくとも自分はいいと思って提案してるものだと思うので、少し手を加えて別の方向から物にできないかな、とは考えます。それか、もう自分の持っているブログ、Twitterなどのメディアで発信してしまうとかですかね。

どちらにしても、人に提案する形にまで持っていった アイディアはまた別の形で役に立つだろう、と思います。チャンスがあれば別の人に提案するとか、どうしてこれがお金に変えられなかったのかなって反省する機会になるとか。

とら猫:LayerQさんの考え方いいですね。別の場所で発散するというのは健全な気がします。困ったら田舎へ帰る、みたいな。

葛西祝:自分のベースメントを持っておく意味って、想像よりもずっと大きいんですよね。

LayerQ:あとフリーランスの人は特に必要だなって思うことがあるんですが、自分を褒めてあげることですね。ストリーマーなんて上を見ると凄まじい人数を惹き付けてる人がたくさんいますから。

そこはあまり見ないようにして、今目の前で見てくれてる10人の方々に対して感謝して、「この瞬間に自分のゲームプレイを10人も見てくれてるなんてすごい!!」とかちゃんと自分自身で褒めるようにしてます。

とら猫:あ、すっごいわかります!みんなで褒め合いましょう!

多様な背景をもつ人たちとかかわる影響

また、様々なアイディアを語り合う仲間も、多様なキャリアを持つことも明らかにされる。「キャリアはけっこうバラバラなんです。広告業界からバーテンダーまで、バックグラウンドが違うからいろいろなアイディアが集まるんです。」そうした中で、田島氏は自分のアートの立場や役割をこう語る。「自分は気持ち悪い担当。自分も好きだし得意分野ですね。」

葛西祝:メディアやチームとの共作する部分がある以上、ここで差別化やポジションが有効に働くこともありますよね。確実に仕事が通るラインというか。田島さんは多様な背景のメンバーと集まって、アイディアを高めているみたいですね。

とら猫:自分は色んな業界の人と会うのは好きですね、いっとき集中してそういうことやっていました、意識的に。今はもう人と会うのに疲れてしまって、あんまりやらないですけど(笑)。

LayerQ:他の方たちとの交流は素直にテンション上がりますね!他の人の情熱に触れると、自分もやりたいことやるべきことやっていかなきゃな、って触発されやすいです(笑)。

とら猫:ゲーム実況者間で交流とかあるんですか?

LayerQ:あるにはあるんでしょうけど、ぼくはほぼ全く無いですね。ゲームイベントでたまたま顔合わせた!みたいなのはありますが。横のつながりが強い実況者さんもたくさんいらっしゃいますよ。

とら猫:へえ~、でもゲーム実況ですと自分から何かを生み出してかないといけないんで、横のつながりがあっても、互いに仕事を融通し合う、的なことはあんまりないんですかね。

LayerQ:各々で持っている影響力を合わせて、より大きな影響力を作っていく、っていう感じもありますし、一人じゃ楽しめないゲームを一緒に楽しめるチームがあるってのは強いと思いますね。

葛西祝:ジャンル複合ライティングと名乗っておるゆえ、ほんとに特定の業界に絞られず、多くの人と会ってますよ。ビデオゲームだけじゃなく、現代アート、アニメーション、そしてVRエンジニアから、格闘技ファンの皆さんなどなど……

それぞれのジャンルの人々に関わることで、それぞれのジャンルに対して固定観念を作らないというのも大きいです。「このジャンルはこうだろう、この人はこうだろう」みたいな観念ですね。それを無くしていくと言いますか。また、ビデオゲームみたいなジャンルでは、他ジャンルと関わった経験が還元しやすいんですよ。

とら猫:自分は「翻訳だけ」ってあんまり考えてなくて、稼ぎ方のひとつと捉えているんで。実際他分野の人と会うことで、意外なところから仕事が来たりするんですよね。英語があるところには仕事があるわけで、そうやってシンプルに考えると、翻訳って仕事はまだまだ全然ポテンシャルあると思うんです。

オフの日の使い方~いつでも仕事に関係することをするか?それとも忘れるようにするか?

若林氏は、田島氏にオフの日はどのように過ごすのかも伺った。「オフの日は仕事の持ち込みしない。水彩画をかいたりします。」と、休みでも絵を描き続けているという。そこでは仕事で描く絵とは違い、「きれいな水彩画を描いています。」と語った。「宮崎駿さんが水彩画セットをもっていて、これで映画ができると語っていて(笑)。」と、はじめたきっかけを話していた。

「ぼくは引きこもるのは好きですね。家にいるのは悪い気しないじゃないですか。」田島氏はオフはインドアで過ごしているそうだ。彼の性格もあるようだが、バンクーバーは雨が多いため、外出しにくいのも関係している。

では家ではどうしているのか?と聞かれると、「同僚から昔の映画は面白いぞ、と言われるんですが、映画はあまり見ないんです。……映画を見るのはすごく力を使いますね。」と、意外にも田島氏は自分の仕事に関わるものながら、それほど観ないことを語っていた。「やっぱり絵を描くほうが楽しいですね。」

田島氏は「空いた時間に昔書いた絵をリメイクしたりするんです。」そうやって昔、描けなかった部分を描けるようになったのか、確認し直したりもするという。

葛西祝:田島氏はオフでは仕事とは違う方面の絵を描いている、と語っていて、やっぱり普段から絵を鍛え続けているのがわかる話をしています。冒頭の繰り返しになっちゃいますけど、皆さん実際に仕事のオン・オフってありますか?

とら猫:意識しないと難しいですね、「今日は一日休むぞー」とかあらかじめ決めないと、油断すると仕事してしまう。旅行とか行っても、今はスマホでも仕事ができてしまうので、完全にオフになるってことはレアですね。

ただ限界になるともう頭が英語を拒否しちゃうので、そうなったら温泉へ行きます。やっぱりたまにオフを取らないともたないですからね……

LayerQ:ほとんどないかなと思います。架け橋ゲームズなど会社に依頼された仕事の境目はありますが、結局余った時間ほぼインディーゲームに費やしてて、ゲームやってるときも動画撮ってるか配信してるか、って感じになってるので。

葛西祝:自分も境界線があまりないですね。自分の興味がそのまま仕事に直結してしまっています。会社員や学生の勤務と休日を交互にするライフスタイルのように、野球みたいなオンオフの攻守交代がない。サッカーのように攻守がシームレスになっているように、オン・オフが切り替わっている感覚なんです。

LayerQ:仕事のマネジメントもそうですけど、休暇のマネジメントもフリーランスの課題の一つですよね(笑)。

とら猫:そうですよね!うまく休めるようにならないと!なので、メールでの連絡も良し悪しですよね。ホントどんな山奥でもメールは届くので、なかなか逃げられない。かといってスマホの電源もなかなか切れない(笑)。

3か月働いて1か月オフ、みたいなサイクルの暮らしがしたいですね。翻訳仲間の福市恵子さん(人気インディーRPG『Undertale』などを翻訳)は、平日に仕事して、土日きちっと休むって言ってました。

葛西祝:そのサイクルは憧れありますね……オフの日って、田島さんは仕事と違う絵を描いたりと、違うアプローチを試してみていることがうかがえるんですよ。オフの日こそ違うアプローチをして、自らのスキルに還元したりはありますか?

LayerQ:さっきも言ったみたいに他分野の芸術や文化に触れて、楽しみつつ新しい知見を得ようとすることはありますね!

とら猫:私は今はそうですね、オフの時は自分のサイト用のエッセイとか書いてるので、ひょっとしたらそれがスキルへの還元につながってんのかしら、と思ったりはします。成果は不明です、今のところ。自分のサイト用に翻訳もやっていますが、そのときは普段の仕事とはちがうアプローチで翻訳したりします。

葛西祝:やっぱりオフに近い状態では、自分のブログでメディアで出来ない文体で書いたりとか、ひっそりイラストレーションを描きためたりとか別の可能性を探ってる、というのはあります。オフの日でもほとんどナチュラルに独学になってるな、みたいな感覚ってありませんか?

とら猫:どうなんですかね、上でも言ったような感じで、独学がデフォルトになっている気がするので、あらためて学んでいるって感じることはあんまりないかな……

LayerQ:そうですね、割と何見ても「これって何かに活かせるかな」って考える癖みたいなのはありますね…気楽にゲームするぞ、って思っても結局「ここはこれがいい、あれはもっとこうしたほうがいい」、「キャッチコピーつけるなら何だろなー」とか考えちゃいますしね(笑)。

とら猫:そういうのはありますね、調味料のラベルとかも気になって読んだりします(笑)。映画館で映画を観ている時も、いいなと思った翻訳とかは最後まで必死になって覚えてますね(笑)。途中でスマホ出せないので。

それにしても15歳くらいの時ってどうしていたものだったか

trialog.vol6は最後に16歳のトラックメーカー・SASUKEさんのライブで幕を閉じる。慣れた手つきで観客を盛り上げながら、彼なりの独学をさらっと話してみせる。「まったく音楽の勉強をしていないんですけど」と前置きをし、チルなトラックを歌った。

葛西祝:SASUKEさんを観て思い出すのって、早い段階で自分が好きで、そして出来ることを人に妨げられずにできているな、みたいなことです。

15歳くらいって、実はかなり社会的圧力がかかる時期。自分の志向以上に家族や学校、友人込みで通りいっぺんの価値で動く感じあって、好きなものと、できることを確定させることって難しくて。苦しい時期だった記憶があります。

とら猫:16歳であれだけしっかりしているのってすごいですよ。きっと例外だと思います(笑)。自分は麻雀ばっかりやってましたね。ゲーセンもよく行ってたな。本もよく読んでました。あの頃の蓄積が今の仕事に活きてると思うと、感慨深いものがありますね。

LayerQ:16歳の頃もゲームしてましたね!学生生活はなんか大きなことを考えてたっていうことはなくて、ただ友達や先生といろいろ楽しく話すようにしてました。なんか現代社会論調みたいになっちゃいますけど、今は昔よりも若い頃から自分のいろんな可能性を目にしやすい環境があるのかなとも思います。TwitterやInstagram、YouTubeやTikTokなどで。

とら猫:やっぱり物心ついた時からiPad使えたりするのは、自分の頃とはスタート地点がだいぶ違うんだろうなって気はします。

葛西祝:ネットやSNSによって、早い段階で自分のベースメントを作れて、自分の地域社会みたいな狭いところ以外の場所に出ていきやすいのはあるかもしれないですね。危なくもあるんですけど。

一方でこれくらいの時期に、自分が好きで、ここが大事なんですけど自分ができることのバランスがあってることってわかってきてたかなあ…と思うこともあります。

とら猫:こうして振り返ってみると、結局今の仕事のベースになっていること(麻雀除く)を当時無意識のうちにやっているので、やっぱ延長線上にあるのかなとは思いますね。

LayerQ:自分がやれないことはちゃんと諦めるっていうことも大切かなと思います。ライター一本で生きていくことや、メジャーゲームもインディーゲームも自分が好きなゲームはすべて動画にする!!とか、そういう自分のキャパシティを大きく越えたものはちゃんと切り捨てて、ちゃんと自分ができることから集中するようにしてますね。

葛西祝:かなり長い間、社会的なものと自分の指向を一体どうすればいいのかわからず、精神状態が悪い時期が続いたので、いまなんとか指向を通せるようになったことで、少なくとも昔より楽になっているんです。

ほんとうに若いうちに、漠然とした社会的な価値に潰されずに自分のベースメントを作り上げていることが重要だな、なんて感慨深くSASUKEさんのLIVEを観てましたよ。

自由業にとっての独学

葛西祝:というわけでまとめです。自分にとっての独学って、自分の好きなことと出来ることをすりあわせたなかで、自然に出来るものと思います。これはもう、自由業者でも雇用される人も変わらないと思いますね。

LayerQ:ぼくにとって独学は、自分がやりたいと思ったことを形にしていく手段のひとつですね!なんか普通の意味合いになっちゃいましたけど(笑)

とら猫:自分にとっての独学は…うーん、なんでしょう。あとで笑うための調味料でしょうか。含蓄あるっぽいことを言ってみました。

LayerQ:誰に見られてなくてもSNSやブログ、今だったらnoteなどで自分の発信したいことを発信できるオウンドメディアみたいなものは持っていたほうがいいですね。そこで自分の経歴のポートフォリオなども作ってれば、サッと自分のこと紹介しやすくなりますし(笑)。では葛西さん、まとめよろしくお願いします!

葛西祝:えっちょっと待ってください……そうやって自分のベースメントを作ること、ベースメントを持っていることが、真に身になる独学なのではと。やったまとまった!!!れいれいれいわ令和乾杯!!!

 

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