【連載/だからゲームはやめられない】第15回: 不動のマリオ・ザ・ベスト『ドンキーコング』(ゲームボーイ版)

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(by シェループ

私のゲーム人生は、ファミリーコンピュータの『スーパーマリオブラザーズ』から始まった。
以来、マリオはゲームという娯楽を教えてくれた先生との認識だ。歳を重ねた今も、そのことに変わりはない。

そんなマリオの中で最高の一本はと聞かれれば、私は『ドンキーコング』を挙げる。1994年6月14日、ゲームボーイ用ソフトとして発売された作品だ。

ゲームボーイは母方の叔父から、三本のソフトと共に譲り受ける形で手に入れた。だが、私好みのゲームがなかったため、そのようなものを買ってもらおうとした。それに対して親は、目に悪影響があるからダメと、新作購入を禁ずる規則を設けてしまった。以降、貰った三本の中で『ゴルフ』というゲームにハマりはするも、心の底から欲しいと思ったものは尽く見送るハメになった。

しかし1994年夏、規則は解除された。当時、気になるゲームボーイの新作を遊ばせてもらっていた友人と頻繁に遊ぶ私を見て、諦めが付いたのか、理由は今なお定かではないが……許しを得たのだ。それから間もなく、私は今まで一本もなかったマリオのゲームを集めることにまい進。二本のゲームボーイ用マリオ作品を購入した。

さらに三本目として当時、出てからそれほど月日の経ってない『ドンキーコング』を買った。『ドンキーコング』は昔、旅行で訪れた旅館に置かれていた『ファミコンボックス』で初めて遊んだのだが、難しくて最初の1面すらクリアできなかった。そんな『ドンキーコング』のゲームボーイ版が出たということで、あの時のリベンジも兼ね、購入を決めた。

だが、本作は昔遊んだ『ドンキーコング』とは違った。
最初のステージ0はあの頃のままだが、ステージ1からは閉ざされた扉を開くための「カギ」を持ち運ぶ、パズルアクションゲームになるからである。しかも、十字キーの下とAボタンを同時に押すと、マリオが逆立ち。その状態でAボタンを押すと、通常よりも高いジャンプを決めるのだ。他にも前進している時に十字キーを逆方向に押し、Aボタンを押すとマリオが後方に宙返り。鉄棒のような所に掴まり、十字キー上を押しっぱなしにすると大車輪を始め、Aボタンを押せばその勢いに乗って大ジャンプ。他に樽、カギの上に乗ってBボタンを押せばそれを持ち上げ、再度Bボタンを押せば投げてくれる。このアクションを駆使して、ドンキーコング本人と戦う場面もある。

あまりの違いに、戸惑ったのは言うまでもない。
だが、面白い!特にボタンを押す度、マリオが色んな動きを見せてくれるのが楽しい。
しかも、各種アクションを使いこなせば、コースを一瞬でクリアできる。最初のステージ0-1など、普通に転がってくる樽をジャンプでよけ、段を順番に乗り継いでいった場合なら十秒程度かかるのに対し、逆立ちジャンプでショートカットしながら進めば、たった7~8秒でクリアできてしまうのである。おまけにクリアタイムは、四つのコースを終える度に合計値として換算され、それに応じてマリオの残り人数が増える。値が高ければ高いほど、多くの人数を増やせて、ゲームオーバーの危険を緩和できるようになるのだ。

そんな素早いクリアへの意欲を刺激するボーナス要素、多彩で楽しいアクションに私は心を撃ち抜かれ、以降、先んじて買った他のマリオ作品二本そっちのけで、本作に没頭した。アクションだけでなく、内容も盛り沢山。コースは旧『ドンキーコング』の4つから25倍の100個!「都市」に「飛行機」など、今までのマリオにない現代的な舞台が数多く登場する。さらに中盤からはドンキーコングの息子「ドンキーコングJr.」が参戦。同キャラクターが主演を務めた作品とは異なる立場でマリオと戦うという、往年のファンなら胸が熱くなってしまうような展開も用意されている。

さらに各コースのクリア時間は「レコード」に保存されるので、エンディングを迎えた後も、さらなる新記録を求めて遊べる。100という物量の多さとは裏腹に、コースもコンパクトにまとまっていて、それでいて仕掛けも盛り沢山とやり応え抜群。

気が付けば、半年近くもゲームボーイを占領する程度にハマった。そして、今まで遊んだマリオのゲームに物足りなさを感じるようになった。逆立ちをしない、バック宙返りしない、大胆なショートカットもできない。なんでこのマリオはここまでできるのに、こっちのマリオはできないんだ。機動力なさすぎ、もっと動けよ、身体張れよと不平不満の嵐だった。その不満は後年、NINTENDO64で発売された『スーパーマリオ64』にて、概ね解消されるのだが……それはまた別の話。

それぐらい、マリオが動かせることが楽しいゲームだった。当時まで発売されたマリオのアクション総決算とも言える作りが特に良く、いくらでも遊べる底の深さがあった。私の中では歳を重ねた今もなお、本作は史上最高のマリオとして君臨し、輝き続けている。

時々思う。もし、1994年の夏に規則が解除されてなかったら、そのきっかけを作ったゲームボーイの新作を遊ばせてくれる友人に出会っていなかったら、何が最高のマリオとなっていたのか、と。
やはり『スーパーマリオブラザーズ』だろうか。
それとも『スーパーマリオワールド』か。

求めた『ドンキーコング』とは違ったが、何十年にも渡って好きだと言えるマリオに出会えたこと。今はただ、あの時の境遇ときっかけを作った友人に感謝したいなと思う。
本作と同じ日に発売されたスーパーファミコン用周辺機器『スーパーゲームボーイ』も。

これがなければ、規則解除に否定的だった父親による再発動もあり得た。
本機を歓迎してくれた(しかも、買ってくれた)のには、心底ホッとした…。
改めて任天堂の皆さま、素敵な周辺機器をありがとうございました。

(C) Nintendo Co., Ltd.

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この記事を書いた人

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。もぐらゲームスなどゲーム系メディアへ寄稿中。

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