(by こばやしななこ

映画『COLD WAR あの歌、2つの心』はヴィクトルという男とズーラという女の激しい恋を描いたラブストーリーだ。鑑賞後、自分の周りの人がこの映画を観たら何を思うのかが非常に気になっている。女友達はきっと私の感想に同調してくれるだろうが、男性はどうだろう?

素晴らしい音楽とモノクロのとてつもなく美しい映像、恋をしている男女の顔、どれを取っても心打たれる素敵な映画だった。これ以上に私が言うことは蛇足にしかならないと分かりつつ、一女性として映画を観た感想をここに記しておく。

主人公のヴィクトルは物腰柔らかなナイスガイ。そしてピアニストだ。音楽を愛する芸術家。極め付けに前髪をハラリとさせている。前髪ハラリ系芸術家なんて絶対厄介な男に決まっているよな、と序盤から決めつけてかかる私。

しかし、ヴィクトルに前髪をハラリとさせながら見つめられたら女はたまらない。ヴィクトルは危うげな色気と少女の面影を合わせ持つズーラに初対面から心惹かれる。そしてヴィクトルに目を付けられたズーラは瞬く間に恋に落ち、二人の仲は急速に燃え上がっていく。

ズーラは罪を犯して執行猶予中の“問題児”でかなり奔放な女性だ。恋にも臆することなく突き進み、ヴィクトルに「あなたと地の果てまでいきたい」と迫る。常軌を逸しているように見えて、私からすると彼女はとても共感しやすいキャラクターだった。私も含め一見平凡に見える女が相手を本気で好きになってしまい、ズーラと同じように欲望のままめちゃくちゃな行動をとるのを何度も見てきた。

恋をするとみんな愚かになる。むしろ、私たちは本当はみんな安定とか誠実とかどうでもよくて、頭がおかしくなるくらい人を好きになって愚かになりたいんじゃないのだろうか。それこそ生きてる醍醐味な気がする。

でも私はズーラみたいにヴィクトルにゾッコンってわけじゃないから、ヴィクトルの「それはどうなの?」と思う部分が気になってしまう。ストーリーの展開をネタバレしない程度のことだけ指摘したい。(本当はめちゃくちゃいっぱいある)

告発します。ヴィクトルさん、あなたズーラをぶちましたよね?ズーラがめちゃくちゃなのはわかるけど、あんただってめちゃくちゃなんだから手をあげるのはナシだろ!!

あと聞き捨てならないあのセリフ。ヴィクトルはズーラに「君に耐えられる普通の男を探せ」と言った。一緒になるために色々あって今ここに至るんでしょ!?今、言う!?本気で言ってるのか口だけなのか。どういうつもりで言ってるんでしょうかヴィクトルさん。

恨み辛みを言いつつ、ズーラがヴィクトルに強烈に惹かれる気持ちは私も痛いほどわかる。ムカつくけどヴィクトルは魅力的だ。なにせ前髪ハラリ系芸術家だもの。

二人が出会ってからの15年間が88分という短い映画に収まっているので、二人の辿った運命はかなり省略的に描かれている。そのせいで描かれている場面に至った細かな経緯はわからないし、その場面が見たかったなーと思うところもバッサリない。が、決して本作は難解な映画ではない。ズーラはヴィクトルに、ヴィクトルにはズーラに惚れているということははっきりしているので時間や場所がビュンビュンと飛んでも、それほど問題はないのだ。

ただ私にとって男心だけが難解だった。ヴィクトルに「は?ズーラのこと愛してるんじゃないの!?女心わかれバカー!」と思うこと多々あり。私がまだ子供なのだろうか。ある方がこの映画について「ヴィクトルが女に振り回される話」と仰っていたのを聞いて、全く逆の印象だったことに驚いた。男女で印象が違うのか私の認識が間違っているのか、興味深いところである。

鑑賞後、「めちゃくちゃな男女の話だったけど、男がめちゃくちゃだとムカつく」と彼氏に感想を伝えたらジェンダー差別だと指摘された。私はヴィクトルに「年長者の男性」としての振る舞いを求めているし、ラブストーリーの男役には「奔放な女性と恋に落ち、自分より相手を助けるために死んでいく男」みたいな理想(タイタニックのジャックとか)を求めているのだろう。全てを超越した恋愛物語を観て、自分が抱いているジェンダーバイアスにハッとさせられたのであった。

(c)OPUS FILM Sp. z o.o.
映画『COLD WAR あの歌、2つの心』公式サイト

 

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