【連載/だからゲームはやめられない】第14回: 本当にファミコンRPGファン要チェックの良作だった『ソウルゲッター ~放課後冒険RPG~』

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(by シェループ

いきなりだが、このパッケージを見て、どう思っただろうか。

「怪しい。」

そんな一言が浮かんだかもしれない。
私も初めてこのパッケージを目にした時、胡散臭いと思った。

何故なら、世間にはこのような自画自賛な売り文句を載せた、様々な意味で語り継がれている伝説的な作品があるからだ。ましてや、本作は漫画風に誇張している。怪しくないと思うにも無理があるという話だ。

だが、この『ソウルゲッター 放課後冒険RPG』は売り文句通りの立派な作品。良作だと、自信を持って断言できる一本である。

私が本作を買ったのは、発売から13年もの月日が経った頃。毎年夏によく実施している”旧作漁り”と呼称した、昔のゲームの買い漁りをしていた時だった。

購入した理由は非常に雑。当時、「ソウル」と名の付くゲームが多数出ていたので、その流れに古いゲームで便乗してみよう、という流れからだった。

一時期は地元にある某著名店でも買えた、90年代から2000年代頃のゲームボーイ(&ゲームボーイカラー)の中古タイトル。しかし、買った当時は店舗の閉店、改装による在庫の一斉撤去などが起因して買いにくくなり、ましてや都内へも行くに行けない状況にあったため、通販サイトを経由して手に入れた。

本作のことは、発売当時に購読していたゲーム雑誌の紹介で存じていた。しかし、分かっていたのはロールプレイングゲームというジャンルと、一枚絵が表示される演出があることぐらい。システム周りはからきしだった。

「ファミコン(※ファミリーコンピュータ)RPG」と謳っていることから、当時、流行っていた育成・収集系ではなく、王道系の作品だろうか、というのがプレイ前の予想だった。蓋を開けてみると、まさにその通りな作り。ストーリーに沿ってイベント、敵との戦闘をこなしながら進める、ジャンルの基本に忠実な内容だった。

だが、驚くべき特徴があった。「パーティ制度」がないことである。一応、ストーリー上では主人公の旅に二名のキャラクターが同行する設定になっている。しかし、彼らは探索や戦闘に一切参加しない。最初から最後まで、全てを主人公ただ一人でこなしていくのだ。なので装備の変更、体力の回復と言ったステータス管理も主人公だけを意識すればよい。

「パーティ制度」が当たり前のように定着していた時代に、こんなRPGを作るだなんてと、私は大きな驚きを覚えた。しかも、その作りが紛れもなく「ファミコンRPG」なのである。

パーティ制度のないRPGで有名所と言えば、初代『ドラゴンクエスト』だ。同作はまさに「ファミコンRPG」の象徴的存在で、当時特有の技術的な制約を逆手に取った、一人で最初から最後まで旅する、シンプルで分かりやすい作りが光る内容だった。

しかし、容量的な余裕ができた続編からはパーティ制度が採用。以降は無くてはならないシステムとして定着し、一人旅は初代特有のものになった。

そんな一度切りに終わったRPGを独自に突き詰めてみたかのように本作は作られていて、「確かにこれはファミコンRPGだ!売り文句通りに作られている!」と、私は大きな感銘を受けた。それをゲームボーイという携帯ゲーム機で実現させたのも当時の風潮、ゲームの方向性などから理に適っていて、決して生半可な気持ちで作られたものでないことも感じさせられた。

「ファミコンRPG」だからと言って、古臭さを強く出した作りにしていないのも素晴らしい。マップはBボタン押しっぱなしでダッシュ移動できる上、メッセージ速度の設定を始めとするオプションも完備している。

さらに戦闘では敵の体力が常に可視化されて表示、次の目的地となる街には矢印を付ける、Aボタンを押せばいつでも次にやるべきことを確認できるなど、時代を先取りするかのような工夫も凝らされている。

戦闘システムも王道のコマンド選択型だが、「テンション」なる数値が100以上に達した際、Aボタンを三回押すと「ぼうそうアタック」なる必殺技を繰り出せるユニークな要素が光る。RPGを遊んでいる時にありがちの、ボタンの連打が技の発動に繋がるので、強敵との戦いに向けて数値を温存するとなれば、迂闊な連打が戦略の崩壊に繋がる、なんてことも。

他にもタイトルにある「ソウル」をペンダントにセットし、魔法を作り出すシステムも当時のトレンドだった、育成・収集系RPG特有の集める楽しさがある。サブタイトルの「放課後」の設定を活かしたストーリーもほのぼのとした懐かしい内容にまとめられているほか、音楽も「ファミコンRPG」っぽく音源周りに工夫を施した楽曲の数々が光る。

難易度は低め、ボリュームもエンディングまで10時間ちょっと、演出は淡々としているなど、地味さも拭えないが、「ファミコンRPG」の売り文句に一切の偽りはなく、それ以上のものを目指そうとした制作者の志の高さが随所で溢れ出た作品に完成されている。

現行機に復刻されていないため、中古市場でしかお目にかかれない作品だが、昔ながらで気軽に遊べるRPGをお求めなら、遊んでみて欲しい一本だ。初代『ドラゴンクエスト』の一人旅が好きだったという方もぜひ。

それにしても、このゲームの説明書の最後のページで紹介されている同じメーカーから発売されたシューティングゲーム、いい加減、値を下げてもらえないものだろうか。

※2019年1月現在、中古で4万円弱の値が付けられています。

(c) マイクロキャビン
ゲーム『ソウルゲッター』amazonページ

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この記事を書いた人

新旧のゲームを遊びまくる人。ひよっこライター。もぐらゲームスなどゲーム系メディアへ寄稿中。

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