以前のエッセイで、とあるコンビニで働く老婆について書いた。さゆりちゃんだ。
あれからさらに数か月がたち、さゆりちゃんはどうなったのだろうか。

結論から言うと、さゆりちゃんは今も同じコンビニで働いている。

見た目もだいぶ変わった。お仕着せの極みのようだったコンビニウェアもだいぶ体になじみ、数か月におよぶ実地での経験から生じる自信が、さゆりちゃんを全体としてより大きく、しゅっと見せていた。

なんというか、以前はぼやけていた全身のシルエットがこう、確かな筆致で描かれた線のように引き締まって映った。小突いたらその場に崩れ落ちてしまいそうな弱々しさが、すっかり消えていた。

「お客さんみんなに手伝ってもらっちゃってね…」と寂しげにつぶやいていたさゆりちゃんは、そこにはもういない。どぎつい紅がこってり塗られた口を「へ」の字に引き結び、その瞳からは職務に対する使命感すら漂わせている。

約半年の期間を経て、さゆりちゃんは立派なコンビニスタッフへと成長していた。

もちろん、そうはいってもそこは齢七十(推定)を過ぎたる老婆だ。年齢から来る身体能力の衰えは、そうした経験だけで補えるものではなく、あくまでも“以前より”てきぱきしているというレベルであって、他の若いスタッフと比べたら群を抜いてスローモーであることに変わりはない。

それでもだ。
「やるべきことが分かっている」という確信は、人をこれほどまでに頼もしく見せるものなのか。

今のさゆりちゃんはレジを打つその指の動きも、人差し指一本しか使わないシングルフィンガースタイルではあるが、およそ打ち間違えるという気配がない。ゆっくりではあるが、堅実だ。どの品物を手にしても、うん、うん、と何か自分に言い聞かせながら着実にバーコードを探し当て、読み取っていく。

それにこないだなどは、他のスタッフとの連携プレーまで見せていた。

その店にはレジが二か所あるのだが、この時は若手のスタッフが担当する左のレジと、店長とおぼしきメガネ氏が陣取る右のレジとの間にさゆりちゃんが立ち、ホットスナックコーナーをひとり必死で守っていた。さゆりちゃんは小柄で腰が曲がっているので、ぱっと見、ホットスナックの什器に全身がすっぽり隠れてしまう。それでも左右のレジから次々と舞い込むチキンやら肉まんやらの注文をひとつずつ着実にさばき、什器の陰から手だけ伸ばしてレジ打ち係に渡していた。時にはレンジでチンされた弁当も。

私はこの独特なリズムで続けられる連携プレーにちょっと見入ってしまって、自分の品物を購入したあとも店内に居残って、さゆりちゃんの働きぶりを見物していた。

そして気づいた。

前よりもいいパーマかけてるわ。

(イラスト by Yumi Imamura

 

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